大河ドラマ「平清盛」 第23回 叔父を斬る 感想
カテゴリ:平清盛
日時:2012/06/10 22:16
今回は、処刑シーンで「斬れ」「斬れない」をウダウダやる間延びした回になるのではと思っていたのですが、予想以上の良作でした。
また、後述するように今回はノベライズとドラマで信西の描き方がかなり変わっています。これまでノベライズにある場面やセリフがドラマではカットされていることがほとんどでしたが、今回は信西のキャラ付けのレベルから変更されている印象を受けました。ノベライズが計算高い憎まれ役に徹している一方、ドラマは私情を押し殺して苛烈な道を歩むつらさを垣間見せる人間味が加味されています。
冒頭は、前回ラストの続きから。信西から忠正とその子どもたちの死罪を言い渡され、ガビーンな清盛。清盛の驚きも無理はないのですが、劇中の描写ではやや分かりにくい。この背景には、律令による死刑は「薬子の変」以来、約346年間行われていなかったという事情があります。これが、清盛の「そもそお死罪などという法はないはず!」というセリフにつながります。清盛というより当時の人々は、死罪など想像もしていなかったでしょう。 そこで帝の近臣である成親に、忠正の助命嘆願の取次を頼むわけですが、成親は詫びるばかり。
成親「私とてさんざんにお止めしたのです! されど! 事あらば平氏の方々のお力になるようにと、亡き父から託されましたものを。わが身の不甲斐なさ、なにとぞお許しくださりませ」
と泣き伏す成親ですが、清盛が去ると全く泣いていない。今から鹿ヶ谷フラグがバシバシ立ちまくりです。
義朝も為義さんの助命を嘆願しますが、全く取り合ってもらえず。消沈したまま帰宅し、由良に八つ当たり。まぁ、この件については、由良ちゃん余計なことしちゃったのは事実ですしねぇ。
忠正も為義も刑を受容し、平氏も源氏も執行に向けて覚悟が固まっていきます。ここでも由良ちゃんが魅せてくれます。
由良「殿が大殿をお斬りになることとなった。そなた(鬼武者)もその目で見てくるがよい」
鬼武者、時に10歳。こういう覚悟を持った女性って、最近出てきませんでしたね。
忠正の斬首は六波羅近くの河原、為義は船岡山で行われました。
清盛も義朝も、斬れません。正直なところ、逡巡し嘆き悲しむ処刑者には何も感じませんでした。お前ら、ウダウダしてんな、と。
斬られる側が魅せてくれました。忠正のセリフも、以前から一貫していて好ましい。厳しい言葉ながら、清盛に対する思いやりがあって泣けます。
忠正「わしはこれより十万億土に旅立ち、兄上に会う。そのとき言うてほしいか! やはり清盛は棟梁の器でなかったと! 兄上はまちごうておったと! あんな赤子を引き取ったゆえ一門は滅んだと!」
ついにハリセン叔父さんを斬った清盛。自失しかける清盛に、忠正の子たちの声。
長盛「われらもはよう斬ってくださりませ。父上のお姿が見えるうちに、後を追いとうござります」
泣ける。
一方、源氏サイドは小日向さんの表情がたまりません。
為義「わしの最後の頼みじゃ。お前の手で黄泉路に旅立たせてくれ」
泣き崩れる義朝。
為義「泣かずともよい。もうよい。もうよい」
「もうよい。もうよい」はたまらなかったなぁ。
義朝の代わりに斬る正清。
こちらも、子どもたちが泣かせます。
頼賢「最後の頼みすら聞けぬ者が、われらの父を父上と呼ぶでない。正清、はようわれらを斬れ! さぞかしご無念の父上を、お一人で黄泉路を歩かせとうない」
前回に続き、今回もまた平氏と源氏が対比構造。ほぼ同じ経過をたどってきましたが、ここに来て、「斬った清盛」と「切れない為義」という差が生じました。まぁ叔父と実の父では違いが生じてもおかしくはないのですが。
こうして信西の意図通り、清盛に忠正を斬らせることで義朝による為義斬首を強制し、それによって摂関家の武力を削ぐという結果に。これを賞賛する師光。
師光「殿の苛烈ぶり、亡き悪左府様の比ではござりませぬ。師光はどこまでもついて参りまする」
ノベライズではこのシーンはここで終わりです。が、ドラマでは師光の賞賛を聞きつつ信西は涙を流し、その心中を覗かせています。
後白河帝は内裏の仁寿殿で戦勝パーティーの開催を決定。清盛が招かれた旨を知らせに成親が来訪します。
戦勝パーティーでは、まず忠通が見せ場を作ります。
忠通「かつてそなたの父忠盛が武士で初めて殿上人となった折。私はそれを許せず、宴の場にてさんざんにからかい、恥をかかせた。されどこたび武士が世に対して見せた働き。認めざるを得ぬ。これより先もなにかと朝廷を助けるがよい」
と語り、自ら酒を清盛にすすめる忠通さん。かっこいい場面ができてよかったね、忠通。
後白河はというと、どう考えても清盛の心情を分かった上でなぶるような言動。
$( ゚∀゚)$ アハハノヽノヽノヽノ\/\
泣きながら平伏する清盛を見下ろして笑う後白河。ドSだ。
パーティーも終わり、orzな清盛にまたもや意味不明なことを言い出す信西。
信西「そなたは新たな荷を背負うた。叔父を斬ったという重き荷を」
ここまでは分かる。
信西「そなたにはそれだけの力があるということじゃ!」
ごめん、分からねぇ。
信西「宝となれ。すべての重き荷を背負うて、この国の宝となるのじゃ」
ごめん、分からねぇ。
そして共闘を提案する信西。
ここで、大筋では一致しているものの、ニュアンスが大幅に異なるノベライズとドラマの描写。ノベライズは、「太刀を手にしたこともない者が、気楽なことを言うな」という清盛に、信西は「さよう、私には武力がない」とあっさり認めつつ、清盛を制御下に置こうとします。
対してドラマは、清盛にボコられたり、「見えない太刀を振るっている」と、苦しむ心情を吐露する信西。師光とのシーンとともに、ドラマでは信西をいわゆる「いい人」側に寄せた脚本、演出になっていることが分かります。
時子と滋子のシーンは、去年の大河ドラマ(去年は大河なんかなかったような気もしてきましたが)を思い起こすことに。
滋子に「どなたかにお仕えせよ」と命じる時子に反論する滋子。
滋子「私は一門が世にきらめくために使われるはまっぴら」
去年は浅井ウザイ三姉妹がこんなセリフをはき続けた1年でしたね。というか、去年のクソドラマを揶揄してないか? このセリフ。続く時子のセリフがたまりません。
時子「姉の言うことが聞けぬか。ひとりで生きておると思うでないぞ」
これ、去年のクソ姉妹に視聴者が言い続けてたことではないですか。何の役にも立たないくせに満ち足りた衣食住を保証され、さらに文句と恨みをはき続ける姉妹。時子に叱っていただきたかった。
源氏サイドでは、鬼武者元服イベント発生。
鬼武者「はようおとなになり、強い武者となって、父上をお支えしとうござります」
頼朝、元服。
・大河ドラマ「平清盛」キャスト(配役)
・大河ドラマ「平清盛」 主要人物年齢年表
も第23回に合わせて更新しました。よろしければご利用ください。
また、後述するように今回はノベライズとドラマで信西の描き方がかなり変わっています。これまでノベライズにある場面やセリフがドラマではカットされていることがほとんどでしたが、今回は信西のキャラ付けのレベルから変更されている印象を受けました。ノベライズが計算高い憎まれ役に徹している一方、ドラマは私情を押し殺して苛烈な道を歩むつらさを垣間見せる人間味が加味されています。
冒頭は、前回ラストの続きから。信西から忠正とその子どもたちの死罪を言い渡され、ガビーンな清盛。清盛の驚きも無理はないのですが、劇中の描写ではやや分かりにくい。この背景には、律令による死刑は「薬子の変」以来、約346年間行われていなかったという事情があります。これが、清盛の「そもそお死罪などという法はないはず!」というセリフにつながります。清盛というより当時の人々は、死罪など想像もしていなかったでしょう。 そこで帝の近臣である成親に、忠正の助命嘆願の取次を頼むわけですが、成親は詫びるばかり。
成親「私とてさんざんにお止めしたのです! されど! 事あらば平氏の方々のお力になるようにと、亡き父から託されましたものを。わが身の不甲斐なさ、なにとぞお許しくださりませ」
と泣き伏す成親ですが、清盛が去ると全く泣いていない。今から鹿ヶ谷フラグがバシバシ立ちまくりです。
義朝も為義さんの助命を嘆願しますが、全く取り合ってもらえず。消沈したまま帰宅し、由良に八つ当たり。まぁ、この件については、由良ちゃん余計なことしちゃったのは事実ですしねぇ。
忠正も為義も刑を受容し、平氏も源氏も執行に向けて覚悟が固まっていきます。ここでも由良ちゃんが魅せてくれます。
由良「殿が大殿をお斬りになることとなった。そなた(鬼武者)もその目で見てくるがよい」
鬼武者、時に10歳。こういう覚悟を持った女性って、最近出てきませんでしたね。
忠正の斬首は六波羅近くの河原、為義は船岡山で行われました。
清盛も義朝も、斬れません。正直なところ、逡巡し嘆き悲しむ処刑者には何も感じませんでした。お前ら、ウダウダしてんな、と。
斬られる側が魅せてくれました。忠正のセリフも、以前から一貫していて好ましい。厳しい言葉ながら、清盛に対する思いやりがあって泣けます。
忠正「わしはこれより十万億土に旅立ち、兄上に会う。そのとき言うてほしいか! やはり清盛は棟梁の器でなかったと! 兄上はまちごうておったと! あんな赤子を引き取ったゆえ一門は滅んだと!」
ついにハリセン叔父さんを斬った清盛。自失しかける清盛に、忠正の子たちの声。
長盛「われらもはよう斬ってくださりませ。父上のお姿が見えるうちに、後を追いとうござります」
泣ける。
一方、源氏サイドは小日向さんの表情がたまりません。
為義「わしの最後の頼みじゃ。お前の手で黄泉路に旅立たせてくれ」
泣き崩れる義朝。
為義「泣かずともよい。もうよい。もうよい」
「もうよい。もうよい」はたまらなかったなぁ。
義朝の代わりに斬る正清。
こちらも、子どもたちが泣かせます。
頼賢「最後の頼みすら聞けぬ者が、われらの父を父上と呼ぶでない。正清、はようわれらを斬れ! さぞかしご無念の父上を、お一人で黄泉路を歩かせとうない」
前回に続き、今回もまた平氏と源氏が対比構造。ほぼ同じ経過をたどってきましたが、ここに来て、「斬った清盛」と「切れない為義」という差が生じました。まぁ叔父と実の父では違いが生じてもおかしくはないのですが。
こうして信西の意図通り、清盛に忠正を斬らせることで義朝による為義斬首を強制し、それによって摂関家の武力を削ぐという結果に。これを賞賛する師光。
師光「殿の苛烈ぶり、亡き悪左府様の比ではござりませぬ。師光はどこまでもついて参りまする」
ノベライズではこのシーンはここで終わりです。が、ドラマでは師光の賞賛を聞きつつ信西は涙を流し、その心中を覗かせています。
後白河帝は内裏の仁寿殿で戦勝パーティーの開催を決定。清盛が招かれた旨を知らせに成親が来訪します。
戦勝パーティーでは、まず忠通が見せ場を作ります。
忠通「かつてそなたの父忠盛が武士で初めて殿上人となった折。私はそれを許せず、宴の場にてさんざんにからかい、恥をかかせた。されどこたび武士が世に対して見せた働き。認めざるを得ぬ。これより先もなにかと朝廷を助けるがよい」
と語り、自ら酒を清盛にすすめる忠通さん。かっこいい場面ができてよかったね、忠通。
後白河はというと、どう考えても清盛の心情を分かった上でなぶるような言動。
$( ゚∀゚)$ アハハノヽノヽノヽノ\/\
泣きながら平伏する清盛を見下ろして笑う後白河。ドSだ。
パーティーも終わり、orzな清盛にまたもや意味不明なことを言い出す信西。
信西「そなたは新たな荷を背負うた。叔父を斬ったという重き荷を」
ここまでは分かる。
信西「そなたにはそれだけの力があるということじゃ!」
ごめん、分からねぇ。
信西「宝となれ。すべての重き荷を背負うて、この国の宝となるのじゃ」
ごめん、分からねぇ。
そして共闘を提案する信西。
ここで、大筋では一致しているものの、ニュアンスが大幅に異なるノベライズとドラマの描写。ノベライズは、「太刀を手にしたこともない者が、気楽なことを言うな」という清盛に、信西は「さよう、私には武力がない」とあっさり認めつつ、清盛を制御下に置こうとします。
清盛の気性を見抜いた信西の計算なのだろうという記述からも、目的はともかく信西の心情は伝わってきません。
対してドラマは、清盛にボコられたり、「見えない太刀を振るっている」と、苦しむ心情を吐露する信西。師光とのシーンとともに、ドラマでは信西をいわゆる「いい人」側に寄せた脚本、演出になっていることが分かります。
時子と滋子のシーンは、去年の大河ドラマ(去年は大河なんかなかったような気もしてきましたが)を思い起こすことに。
滋子に「どなたかにお仕えせよ」と命じる時子に反論する滋子。
滋子「私は一門が世にきらめくために使われるはまっぴら」
去年は浅井ウザイ三姉妹がこんなセリフをはき続けた1年でしたね。というか、去年のクソドラマを揶揄してないか? このセリフ。続く時子のセリフがたまりません。
時子「姉の言うことが聞けぬか。ひとりで生きておると思うでないぞ」
これ、去年のクソ姉妹に視聴者が言い続けてたことではないですか。何の役にも立たないくせに満ち足りた衣食住を保証され、さらに文句と恨みをはき続ける姉妹。時子に叱っていただきたかった。
源氏サイドでは、鬼武者元服イベント発生。
鬼武者「はようおとなになり、強い武者となって、父上をお支えしとうござります」
頼朝、元服。
・大河ドラマ「平清盛」キャスト(配役)
・大河ドラマ「平清盛」 主要人物年齢年表
も第23回に合わせて更新しました。よろしければご利用ください。