大河ドラマ「平清盛」 第21回 保元の乱 感想
カテゴリ:平清盛
日時:2012/05/27 22:17
ついに保元の乱です。いささか戦の描写が雑というか、義朝や家貞が場面にひょっこり出てくるため各陣営の布陣が不明瞭になったり中途半端なお涙ちょうだいがあったりと、残念な点はありましたがおおむね楽しめました。
物語は、保元元年(1156年)7月10日、高松殿に平氏、源氏が集結した場面から。「死ぬ覚悟なので今すぐ昇殿を許せ」と主張する義朝に対して信西が昇殿を許します。ドラマではこの場面はここで終わり。
ちなみにノベライズでは、義朝たちが去った後、清盛が「迷いを断ち切るため俺を殴れ」と家貞に命じます。が、家貞は「老体ゆえ力を蓄えておきたい」と、代わりに忠清を呼び、ビビる清盛。
清盛「おい待て、忠清に殴られたら死んでしまう――」
が、言い終わらないうちに忠清に殴り飛ばされる清盛、という場面があります。まぁ、この局面でちょい笑いシーンはいらないかな。カットして正解ですね。 そして、両陣営の軍議シーン。ここは、頼長と信西が孫子の同じ個所を引用しながら全く異なる解釈を行い、軍議を決っする過程を対比させています。両者のキャラが立っており、なかなか面白いところ。
崇徳・頼長方はオフレッサー為朝が、後白河・信西方は義朝がともに夜討ちを献策。
(崇徳方)頼長「その儀、まかりならん。夜討ちなど、鎮西の田舎にて十騎二十騎の暴れ者が行う狼藉。これは帝と上皇様の争いぞ」
(後白河方)忠通「なんともおぞましい」
似たもの同士です。
ここで頼長と信西はともに孫子を引用。
孫子「夜呼ぶものは恐るるなり」
頼長の解釈は、「夜に兵が呼び合うは臆病の証し。されど孫子にならうまでもなく、夜討ちは卑怯なり。夜討ちなんぞと下劣な策を用いれば上皇様は世を治める器にあらずと示すも同然!」
信西の解釈は、「夜通しこうしてピイピイと論じ続けるは臆病者のすること」
孫子「利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止まる」
頼長の解釈は、「我らは今、兵の数で劣っておる。それで攻めるは利に合わぬ」
信西の解釈は、「ぼんやりと待つことを孫子はよしとはせなんだでしょう。ならば動くがよし! 今すぐ!」
頼長さん、残念……。
というか、ここで孫子を引用するなら、「兵は拙速を尊び、巧遅を憎む」じゃないかなぁ。
こうして、崇徳・頼長方は夜明けまで待機、後白河・信西方は夜討ちに決まります。ここで、奇妙な場面が展開することになります。
信西は夜討ちを献策した義朝を賞賛し、「都育ちの武士ではこうはいくまい」と清盛を当てこすりつつ、義朝に恩賞を約束。さらに、不服そうな清盛に「安芸守もはよう行け」と冷ややかに命じます。そして師光登場。問題は彼のセリフです。ドラマでは、
師光「殿もお人が悪い。あれでは少しばかり下野守が気の毒にござります」
義朝をage、清盛をsageておきながら、下野守(義朝)が気の毒?
信西「はて何のことやら?」
平氏への恩賞の方が厚く、義朝が不満を持つことへの伏線? 深いぜ。
と思ったのですが、何とノベライズでは師光のセリフが違うのです。
師光「殿もお人が悪い。あれでは少しばかり安芸守(つまり清盛)が気の毒にござります」
この場合、何の引っ掛かりもありません。信西が義朝をage、清盛をsageたことを普通に評しているだけです。さて、気の毒なのは下野守なのか、安芸守なのか。ドラマとノベライズでこの2文字が異なるのはなぜか。不思議不思議。
出陣直前の義朝一党。ここへ、正清が長田忠致を連れてきます。が、今回の長田忠致の出番はここで終わり。取って付けたような中途半端なエピソード……のように見えますが、実は長田忠致は重要人物。平治の乱で破れた義朝が尾張の長田の館に落ち延びた際、義朝と正清を騙して殺したのが、この忠致なのです。というわけで、この場面は
「義朝を殺した長田キター!」
だったのです。
7月11日、寅の刻(午前4時ごろ)、夜討ちの軍勢が動き出し、ついに保元の乱が始まります。
頼長「おのれ信西、なんと卑劣な」
頼長さん……。
白河北殿の北門では、清盛 vs 忠正。ノベライズでは、両者の戦いの前に兎ちゃんが出しゃばる場面があるのですが、ドラマではカット。兎イラナイのでOKです。
清盛と忠正は一対一で矢戦、そして斬り合い。しかも明け方まで、語り合いながら。ガンダムかよ。
賀茂の河原では、頼賢らに苦戦中の義朝。そこへ援軍として鵺退治で有名な頼政が登場。「義経」では丹波哲郎が超カッコいい挙兵シーン(知盛に太刀を掲げ、炎の中に消える)を見せてくれました。さて、宇梶頼政はどうでしょう。
体制を立て直した義朝、正清を南門に向かわせます。南門で為朝と対峙した正清ですが、為朝に矢を射られ危機一髪。そんな彼を、身を挺して救ったのがパパ鎌田。う~ん、前回は実によかったのですが、今回は陳腐すぎかな。敵味方に分かれたからには、情に苦しみながら本気で殺し合った方が泣けたかな。
そういえば、伊藤忠直のときは矢が貫通したのに、パパ鎌田は貫通しませんでした。為朝の矢の威力は割とご都合主義。
火攻めなどにより崇徳・頼長方は敗色濃厚となり、頼長さんは鸚鵡を抱えて狼狽中。
崇徳院「そなたを信じた朕が愚かであった」
為義さんにも崇徳院にも見限られた頼長さん。そこで鸚鵡トーク。
鸚鵡「ヨリナガサマノサイハ ココンワカンニ ヒルイナキモノ」(頼長様の才は古今和漢に比類なきもの)
頼長さんは鸚鵡の籠を叩きつけて逃げていきます。戦場に取り残された鸚鵡さんがどうなったのか心配です。
清盛も白河北殿に突入。忠正を必死に探します。って、お前戦略目標を見失ってないか? 白河北殿攻撃の目的は、
清盛「上皇様と左大臣様を捕らえること」
って自分で忠正に語ってたでしょ。
家貞「(忠正を)見つけてどうなさります」
家貞の言う通り。
今回は、後に二条天皇となる守仁親王も登場。今回の戦に対する疑問を呈してみたりして、実の父である後白河と対立する伏線が張られていました。
・大河ドラマ「平清盛」キャスト(配役)
・大河ドラマ「平清盛」 主要人物年齢年表
も第21回に合わせて更新しました。よろしければご利用ください。
物語は、保元元年(1156年)7月10日、高松殿に平氏、源氏が集結した場面から。「死ぬ覚悟なので今すぐ昇殿を許せ」と主張する義朝に対して信西が昇殿を許します。ドラマではこの場面はここで終わり。
ちなみにノベライズでは、義朝たちが去った後、清盛が「迷いを断ち切るため俺を殴れ」と家貞に命じます。が、家貞は「老体ゆえ力を蓄えておきたい」と、代わりに忠清を呼び、ビビる清盛。
清盛「おい待て、忠清に殴られたら死んでしまう――」
が、言い終わらないうちに忠清に殴り飛ばされる清盛、という場面があります。まぁ、この局面でちょい笑いシーンはいらないかな。カットして正解ですね。 そして、両陣営の軍議シーン。ここは、頼長と信西が孫子の同じ個所を引用しながら全く異なる解釈を行い、軍議を決っする過程を対比させています。両者のキャラが立っており、なかなか面白いところ。
崇徳・頼長方はオフレッサー為朝が、後白河・信西方は義朝がともに夜討ちを献策。
(崇徳方)頼長「その儀、まかりならん。夜討ちなど、鎮西の田舎にて十騎二十騎の暴れ者が行う狼藉。これは帝と上皇様の争いぞ」
(後白河方)忠通「なんともおぞましい」
似たもの同士です。
ここで頼長と信西はともに孫子を引用。
孫子「夜呼ぶものは恐るるなり」
頼長の解釈は、「夜に兵が呼び合うは臆病の証し。されど孫子にならうまでもなく、夜討ちは卑怯なり。夜討ちなんぞと下劣な策を用いれば上皇様は世を治める器にあらずと示すも同然!」
信西の解釈は、「夜通しこうしてピイピイと論じ続けるは臆病者のすること」
孫子「利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止まる」
頼長の解釈は、「我らは今、兵の数で劣っておる。それで攻めるは利に合わぬ」
信西の解釈は、「ぼんやりと待つことを孫子はよしとはせなんだでしょう。ならば動くがよし! 今すぐ!」
頼長さん、残念……。
というか、ここで孫子を引用するなら、「兵は拙速を尊び、巧遅を憎む」じゃないかなぁ。
こうして、崇徳・頼長方は夜明けまで待機、後白河・信西方は夜討ちに決まります。ここで、奇妙な場面が展開することになります。
信西は夜討ちを献策した義朝を賞賛し、「都育ちの武士ではこうはいくまい」と清盛を当てこすりつつ、義朝に恩賞を約束。さらに、不服そうな清盛に「安芸守もはよう行け」と冷ややかに命じます。そして師光登場。問題は彼のセリフです。ドラマでは、
師光「殿もお人が悪い。あれでは少しばかり下野守が気の毒にござります」
義朝をage、清盛をsageておきながら、下野守(義朝)が気の毒?
信西「はて何のことやら?」
平氏への恩賞の方が厚く、義朝が不満を持つことへの伏線? 深いぜ。
と思ったのですが、何とノベライズでは師光のセリフが違うのです。
師光「殿もお人が悪い。あれでは少しばかり安芸守(つまり清盛)が気の毒にござります」
この場合、何の引っ掛かりもありません。信西が義朝をage、清盛をsageたことを普通に評しているだけです。さて、気の毒なのは下野守なのか、安芸守なのか。ドラマとノベライズでこの2文字が異なるのはなぜか。不思議不思議。
出陣直前の義朝一党。ここへ、正清が長田忠致を連れてきます。が、今回の長田忠致の出番はここで終わり。取って付けたような中途半端なエピソード……のように見えますが、実は長田忠致は重要人物。平治の乱で破れた義朝が尾張の長田の館に落ち延びた際、義朝と正清を騙して殺したのが、この忠致なのです。というわけで、この場面は
「義朝を殺した長田キター!」
だったのです。
7月11日、寅の刻(午前4時ごろ)、夜討ちの軍勢が動き出し、ついに保元の乱が始まります。
頼長「おのれ信西、なんと卑劣な」
頼長さん……。
白河北殿の北門では、清盛 vs 忠正。ノベライズでは、両者の戦いの前に兎ちゃんが出しゃばる場面があるのですが、ドラマではカット。兎イラナイのでOKです。
清盛と忠正は一対一で矢戦、そして斬り合い。しかも明け方まで、語り合いながら。ガンダムかよ。
賀茂の河原では、頼賢らに苦戦中の義朝。そこへ援軍として鵺退治で有名な頼政が登場。「義経」では丹波哲郎が超カッコいい挙兵シーン(知盛に太刀を掲げ、炎の中に消える)を見せてくれました。さて、宇梶頼政はどうでしょう。
体制を立て直した義朝、正清を南門に向かわせます。南門で為朝と対峙した正清ですが、為朝に矢を射られ危機一髪。そんな彼を、身を挺して救ったのがパパ鎌田。う~ん、前回は実によかったのですが、今回は陳腐すぎかな。敵味方に分かれたからには、情に苦しみながら本気で殺し合った方が泣けたかな。
そういえば、伊藤忠直のときは矢が貫通したのに、パパ鎌田は貫通しませんでした。為朝の矢の威力は割とご都合主義。
火攻めなどにより崇徳・頼長方は敗色濃厚となり、頼長さんは鸚鵡を抱えて狼狽中。
崇徳院「そなたを信じた朕が愚かであった」
為義さんにも崇徳院にも見限られた頼長さん。そこで鸚鵡トーク。
鸚鵡「ヨリナガサマノサイハ ココンワカンニ ヒルイナキモノ」(頼長様の才は古今和漢に比類なきもの)
頼長さんは鸚鵡の籠を叩きつけて逃げていきます。戦場に取り残された鸚鵡さんがどうなったのか心配です。
清盛も白河北殿に突入。忠正を必死に探します。って、お前戦略目標を見失ってないか? 白河北殿攻撃の目的は、
清盛「上皇様と左大臣様を捕らえること」
って自分で忠正に語ってたでしょ。
家貞「(忠正を)見つけてどうなさります」
家貞の言う通り。
今回は、後に二条天皇となる守仁親王も登場。今回の戦に対する疑問を呈してみたりして、実の父である後白河と対立する伏線が張られていました。
・大河ドラマ「平清盛」キャスト(配役)
・大河ドラマ「平清盛」 主要人物年齢年表
も第21回に合わせて更新しました。よろしければご利用ください。