大河ドラマ「平清盛」 第20回 前夜の決断
カテゴリ:平清盛
日時:2012/05/20 22:55
今回は鳥羽院が崩御した保元元年(1156年)7月2日から、保元の乱が始まる7月10日まで、各陣営の動きをうまくまとめていました。乱に向けて変化あるいは明確化していく人間関係が、なかなか緊張感を持って描かれていたと思います。
もっとも、池禅尼が重仁親王の乳母だった関係で平氏は崇徳上皇とも関係が深く、使いようによっては平氏がどちらにつくべきか苦悩する要素にできたはずですが、これについては完全スルー。逆に、忠正はそもそも忠盛―清盛の本家とは疎遠であり摂関家の家人として活動していたので、彼の去就についてはドラマが生まれないはずでした。
異論もあるでしょうが、史実ベースでドラマを展開するより、清盛と後白河、清盛と頼盛・忠正の関係性を使った今回の話の方がドラマとしては面白くて正解だったと思います。
保元元年7月2日、鳥羽院崩御。忘れたころに出てくる西行。
今宵こそ 思い知らるれ 浅からぬ 君に契りの ある身なりけり
西行が実際に詠んだ鳥羽院の挽歌(山家集)ですね。これを詠むだけのために出てきたような西行。もう少し彼の使い道はないのかなぁ。 政からハブられた者同士、悪左府頼長は崇徳院とタッグを組むことに。ノベライズでは、
崇徳院:「悪左府と名高きそなたと同じにされとうはない」
なんて言われちゃってますが。
後白河帝と崇徳上皇は諸国から武士を集め、武力衝突は必至の情勢。どちらの味方をするべきか、恒例の平氏ミーティング開催。
清盛:「平氏は、いずれにもつかぬ。(中略)こうして待たせることにより、戦の後の恩賞をつり上げるのだ」
反論する頼盛、無言の忠正。家貞に問われて曰く、
忠正:「兄上が生きておれば、あやつと同じことをしたのではないかと思うてな」
清盛のことを認め始めたたのにねぇ……。
ちなみに、今後も舌禍を起こし続ける時忠の茶化しセリフですが、字幕では「悪童おなりになった」となっていました。「あくどう」は「あくどく」という意味なので、「悪童」ではなく「あくどう」が正解ですね。
7月8日。旗幟不鮮明な清盛に苛立つ両陣営。
信頼:「面白うないのう」
こいつのキメセリフか。
一方の源氏は、早くも(というか史実通り)分裂。鳥羽院御所に参上する義朝と、頼長の下に参集した為義さん。オープニングでクレジットされていた頼賢、頼仲、為宗、為成、為仲(保元の乱で死んじゃう息子たち)は、ここで為義さんと一緒に鳥羽田中殿で頼長に跪いていました。
これに対し、一門の結束を決意する清盛。
清盛:「平氏は常に一蓮托。生必ず皆で同じ道を参る」
その清盛は、信西に誘われて高松殿の後白河帝の下へ。当然のごとく控える成親と信頼ですが、後白河帝の人払いの合図。
信頼:「面白うないのう」
コイツはとことんこのセリフを極めていただきたい。
後白河帝:「忠盛の志などかなわぬぞ。どれだけ恩賞をつり上げ、どちらについたところで行きつく先は同じじゃ。朝廷の番犬としてこき使われたまま、志半ばで死んでゆくのだ。忠盛と同じようにな」
後白河帝:「分かったらつまらぬ策などめぐらしておらず、賽でも振ってさっさと決めよ」
7月9日。オフレッサー為朝登場。私は彼を「モビルスーツ」とか「ガンダム」とは意地でも呼ばない予定です。そんな気がする。
そこへウザキャラ鬼若登場。単に茶化して退場。何しに出てきたんだ。うざい、うざ過ぎる。出てくんなクソ坊主。
あらためて平家ミーティング。
清盛:「われら平氏は帝方につく」
後白河帝の真意の解釈については不自然とは思わなかったのですが、
清盛:「俺は、確かな手応えを得たい。武士の世はもうそこまで来ていると。そのために戦う」
ごめん、あんまり意味分からない。
最後に一同が頭を下げる場面で、また頼盛だけ頭を下げるのが後れており、不満が表現されていました。家盛の死からここまで、頼盛の態度は微妙あるいは礼が遅いなどの間接的な表現にとどまっていましたが、いよいよ直接的な意思表明が始まります。
頼盛:「清盛の兄上は棟梁といえども平氏の血の流れぬお方。この一大事に平氏の命運を預けるわけには参らぬ。我ら一党は道を分かち、上皇様にお味方する」
ここで、『愚管抄』の通り清盛についていくよう諭す池禅尼。押さえるべき所は押さえてます。が、頼盛の説得はここでは不成功。
7月10日。
重盛、基盛に話しかける時子。
時子:「卑怯未練な真似はせず、存分に戦ってまいれ。されど、ゆめゆめ命を粗末にするでない」
をを! 武家の妻として、何てまともなセリフ! これは当たり前のセリフにすぎないのですが、「戦はいや」「戦を避けることはできないのですか」などの腐ったセリフを聞かされ続けたせいか、妙に感動してしまいました。
由良ちゃんも負けてません。出陣直前の義朝に友切を渡し、
由良:「今こそ、お志を遂げる時。存分に、お働きくださりませ」
な、何てまともなセリフ! そう、武家の妻はこれです。今年の大河は登場する女性が常識を弁えていてくれてうれしい限りです。いろいろと欠点もある『平清盛』ですが、今回の時子&由良ちゃんのセリフだけで『江』には圧勝です。
為義さんの陣営では、鎌田親子が泣かせ要員。義朝を思いつつ、義朝の下に行くに行けない正清の心中を察した為義さんが、父子だけにして立ち去ります(カッコいい!)。同じく正清の心中を察していた通清は、義朝をdisり始めます。
通清:「若君(義朝)は愚かな道を進んだものじゃな。そもそも若君には浅慮なところがおありになる。(中略)ご自分では強うなったと思い込んでおいでなのだろうが、なんのなんの。(さらにdisる)」
たまらず義朝を庇う正清に、ほほえむ通清。
通清:「厄介な殿を見捨てられぬのはわし譲りじゃのう」
こうして正清が義朝の下に行くよう仕向ける通清(&為義さん)。泣ける。私的に今回のベストエピソードです。
ノベライズでは、義朝と正清の再会シーンを物陰から鬼若が覗き見し、「いろいろあったのじゃな……」と涙を拭う場面が書かれています。ドラマではカットされてましたが。よかった。鬼若、お前イラナイ。
平氏も出陣。頼盛はやはり上皇につこうとしますが、それを察した忠正がこれを制止。代わりに忠正が上皇方につき、頼盛は清盛と同じく帝方へ。こうして史実通りの配置に。オープニングでクレジットされていた平忠綱、正綱、通正は忠正の息子たち。忠正もろとも、保元の乱後に処刑されます。
忠正の言伝を清盛に伝える頼盛。
忠正:「清盛、わしとお前の間には、絆など、はなっからないわ!」
忠正も泣かせますなぁ。
・大河ドラマ「平清盛」キャスト(配役)
・大河ドラマ「平清盛」 主要人物年齢年表
も第20回に合わせて更新しました。よろしければご利用ください。
もっとも、池禅尼が重仁親王の乳母だった関係で平氏は崇徳上皇とも関係が深く、使いようによっては平氏がどちらにつくべきか苦悩する要素にできたはずですが、これについては完全スルー。逆に、忠正はそもそも忠盛―清盛の本家とは疎遠であり摂関家の家人として活動していたので、彼の去就についてはドラマが生まれないはずでした。
異論もあるでしょうが、史実ベースでドラマを展開するより、清盛と後白河、清盛と頼盛・忠正の関係性を使った今回の話の方がドラマとしては面白くて正解だったと思います。
保元元年7月2日、鳥羽院崩御。忘れたころに出てくる西行。
今宵こそ 思い知らるれ 浅からぬ 君に契りの ある身なりけり
西行が実際に詠んだ鳥羽院の挽歌(山家集)ですね。これを詠むだけのために出てきたような西行。もう少し彼の使い道はないのかなぁ。 政からハブられた者同士、悪左府頼長は崇徳院とタッグを組むことに。ノベライズでは、
崇徳院:「悪左府と名高きそなたと同じにされとうはない」
なんて言われちゃってますが。
後白河帝と崇徳上皇は諸国から武士を集め、武力衝突は必至の情勢。どちらの味方をするべきか、恒例の平氏ミーティング開催。
清盛:「平氏は、いずれにもつかぬ。(中略)こうして待たせることにより、戦の後の恩賞をつり上げるのだ」
反論する頼盛、無言の忠正。家貞に問われて曰く、
忠正:「兄上が生きておれば、あやつと同じことをしたのではないかと思うてな」
清盛のことを認め始めたたのにねぇ……。
ちなみに、今後も舌禍を起こし続ける時忠の茶化しセリフですが、字幕では「悪童おなりになった」となっていました。「あくどう」は「あくどく」という意味なので、「悪童」ではなく「あくどう」が正解ですね。
7月8日。旗幟不鮮明な清盛に苛立つ両陣営。
信頼:「面白うないのう」
こいつのキメセリフか。
一方の源氏は、早くも(というか史実通り)分裂。鳥羽院御所に参上する義朝と、頼長の下に参集した為義さん。オープニングでクレジットされていた頼賢、頼仲、為宗、為成、為仲(保元の乱で死んじゃう息子たち)は、ここで為義さんと一緒に鳥羽田中殿で頼長に跪いていました。
これに対し、一門の結束を決意する清盛。
清盛:「平氏は常に一蓮托。生必ず皆で同じ道を参る」
その清盛は、信西に誘われて高松殿の後白河帝の下へ。当然のごとく控える成親と信頼ですが、後白河帝の人払いの合図。
信頼:「面白うないのう」
コイツはとことんこのセリフを極めていただきたい。
後白河帝:「忠盛の志などかなわぬぞ。どれだけ恩賞をつり上げ、どちらについたところで行きつく先は同じじゃ。朝廷の番犬としてこき使われたまま、志半ばで死んでゆくのだ。忠盛と同じようにな」
後白河帝:「分かったらつまらぬ策などめぐらしておらず、賽でも振ってさっさと決めよ」
7月9日。オフレッサー為朝登場。私は彼を「モビルスーツ」とか「ガンダム」とは意地でも呼ばない予定です。そんな気がする。
そこへウザキャラ鬼若登場。単に茶化して退場。何しに出てきたんだ。うざい、うざ過ぎる。出てくんなクソ坊主。
あらためて平家ミーティング。
清盛:「われら平氏は帝方につく」
後白河帝の真意の解釈については不自然とは思わなかったのですが、
清盛:「俺は、確かな手応えを得たい。武士の世はもうそこまで来ていると。そのために戦う」
ごめん、あんまり意味分からない。
最後に一同が頭を下げる場面で、また頼盛だけ頭を下げるのが後れており、不満が表現されていました。家盛の死からここまで、頼盛の態度は微妙あるいは礼が遅いなどの間接的な表現にとどまっていましたが、いよいよ直接的な意思表明が始まります。
頼盛:「清盛の兄上は棟梁といえども平氏の血の流れぬお方。この一大事に平氏の命運を預けるわけには参らぬ。我ら一党は道を分かち、上皇様にお味方する」
ここで、『愚管抄』の通り清盛についていくよう諭す池禅尼。押さえるべき所は押さえてます。が、頼盛の説得はここでは不成功。
7月10日。
重盛、基盛に話しかける時子。
時子:「卑怯未練な真似はせず、存分に戦ってまいれ。されど、ゆめゆめ命を粗末にするでない」
をを! 武家の妻として、何てまともなセリフ! これは当たり前のセリフにすぎないのですが、「戦はいや」「戦を避けることはできないのですか」などの腐ったセリフを聞かされ続けたせいか、妙に感動してしまいました。
由良ちゃんも負けてません。出陣直前の義朝に友切を渡し、
由良:「今こそ、お志を遂げる時。存分に、お働きくださりませ」
な、何てまともなセリフ! そう、武家の妻はこれです。今年の大河は登場する女性が常識を弁えていてくれてうれしい限りです。いろいろと欠点もある『平清盛』ですが、今回の時子&由良ちゃんのセリフだけで『江』には圧勝です。
為義さんの陣営では、鎌田親子が泣かせ要員。義朝を思いつつ、義朝の下に行くに行けない正清の心中を察した為義さんが、父子だけにして立ち去ります(カッコいい!)。同じく正清の心中を察していた通清は、義朝をdisり始めます。
通清:「若君(義朝)は愚かな道を進んだものじゃな。そもそも若君には浅慮なところがおありになる。(中略)ご自分では強うなったと思い込んでおいでなのだろうが、なんのなんの。(さらにdisる)」
たまらず義朝を庇う正清に、ほほえむ通清。
通清:「厄介な殿を見捨てられぬのはわし譲りじゃのう」
こうして正清が義朝の下に行くよう仕向ける通清(&為義さん)。泣ける。私的に今回のベストエピソードです。
ノベライズでは、義朝と正清の再会シーンを物陰から鬼若が覗き見し、「いろいろあったのじゃな……」と涙を拭う場面が書かれています。ドラマではカットされてましたが。よかった。鬼若、お前イラナイ。
平氏も出陣。頼盛はやはり上皇につこうとしますが、それを察した忠正がこれを制止。代わりに忠正が上皇方につき、頼盛は清盛と同じく帝方へ。こうして史実通りの配置に。オープニングでクレジットされていた平忠綱、正綱、通正は忠正の息子たち。忠正もろとも、保元の乱後に処刑されます。
忠正の言伝を清盛に伝える頼盛。
忠正:「清盛、わしとお前の間には、絆など、はなっからないわ!」
忠正も泣かせますなぁ。
・大河ドラマ「平清盛」キャスト(配役)
・大河ドラマ「平清盛」 主要人物年齢年表
も第20回に合わせて更新しました。よろしければご利用ください。