大河ドラマ「おんな城主 直虎」 第11回 さらば愛しき人よ 感想

カテゴリ:おんな城主 直虎
日時:2017/03/19 22:37

ノベライズは叙述トリックが冴えていてなかなか面白かった第11回。ドラマでこれを再現するのは不可能と、はなから諦めてほっしゃんを突っ込んできました。ふと、『名探偵の掟』(東野圭吾)を思い出します。

ではドラマスタート。前回ラスト、馬で乗り込んできたのは元康家臣の石川数正。後に徳川を出奔して秀吉に寝返った話はあまりにも有名。『真田丸』でもこの下りが描かれていました。

そして、鵜殿長照の2人の子どもと瀬名や竹千代(信康)の人質交換(史実)により、次郎法師の右往左往とは関係なく瀬名は助かります。瀬名と信康が死ぬのは、有名な築山殿事件です。

この華麗な人質交換作戦に感銘を受けた井伊直親は、松平元康に興味を抱きます。

一方、久々に次郎法師抜きの今川パート。桶狭間以降は空気状態の今川をちゃんと描くめったにない機会。こういうシーンも入れてくれないと困ります。

今川氏真は、崩壊中の今川の現状にすっかりやさぐれてグランドマザーに泣き言。何もできなかった無能という、従来イメージそのままの、何のひねりも芸もない氏真君です。せっかくの機会なのですから、もう少し違う氏真像を見せてほしかったところです。 女大名とうたわれた寿桂尼様は、やはり従来イメージそのままの有能っぷりで、氏真を叱咤してやるべきことを示唆します。

寿桂尼「事というのは起こさせねばよいのです。起こる前に握りつぶすのです」

このときの寿桂尼様の心情は、ドラマでは不明瞭ですがノベライズにはこうあります。「元康にしてやられた……。しかし元凶はあの、井伊の娘法師のように思えてならない」と。

そしてノベライズによると数日後。山伏が次郎法師を訪ねてきて元康からのお礼のプレゼントと、直親宛てのお礼メールを渡されます。

元康から鷹狩りにご招待された直親は、政次に報告。「松平は今このあたり(ノベライズでは長篠)まで来ておる」として、松平に接触する必要性を説く直親。こうして、直親と政次が今川からの離反を確認します。

ここで、ノベライズは元康からのプレゼントだという「簡素な本堂には不似合いな仏具」に南渓が驚くシーンがあります。駿府の元康の館は質実剛健で、立派な仏具に違和感を覚え「……ちと立派すぎるような気もするがのう」とつぶやきます。

そのころ、直親は元康の招きで鷹狩りに参上。さて、ノベライズのトリックをどう映像化するのか……。ノベライズはというと、直親が元康と名乗る男と会い、元康の真摯な言葉に、「信頼に足る人物という印象を受けた」とあるだけ。手の傷(ノベライズではやけどの痕)の描写はあるものの、元康ではないとは分かりません。文字だからこそできる叙述トリックです。そのため、寿桂尼様の罠であったことが明かされたとき、結構驚きました。

が、ドラマでは……声違うし。ほっしゃんだし。元康じゃないし。

例の井戸で直親と政次が語っていると、次郎法師も参戦。久々に、子どものころのようなシーンです。とおもっていたら子役たちによるシーンがカットイン。これが3人がそろって楽しく語り合う最後のシーンかと思うと、何やらいい場面のような気がしてきます。

そして、さわやかな笑顔で駿府に行くという政次。この人も、こんな笑顔ができるのはこの場面が最後でしょう。井伊谷が平穏だった最後の一コマ、といったところでしょう。

そんなとき、寺に松下常慶がやってきます。この人の同族で今川家臣の松下長則(あるいは之綱)は、織田信長に仕える以前に秀吉が使えた人物として有名です。

この常慶が「松平元康様よりお礼の品をお持ちしました」と語ったことで事態が一変します。ノベライズを読んだときは、この場面で戦慄したものですが、ドラマではまぁ、あの元康ニセモノだったしってことで別に驚きはありません。

駿府に行った政次は、寿桂尼様とご対面。直親署名入りメールを突きつけられて、元康との内通について問いただされます。これはつらい。

政次「しかし、殿の筆とは少し違いますような……」

ととぼけるところはさすがです。

そこにほっしゃん登場。ノベライズの「いやに貫禄のある男」「精悍な顔つき」という記述とはかなり異なりますが。これで全てを悟った政次、ピンチ!

さらにつめよる寿桂尼様。

寿桂尼「答えられよ」
寿桂尼「答えを選ばれよ

一方、今川に試されたことを悟った直親たちは、元康に合力を頼むことにし、次郎法師らが岡崎に向かいます。が、元康にあっさり拒否られます。さらに、次郎法師が助命に奔走した瀬名らは、岡崎城に入ることが許されず、寺(惣持寺)に幽閉中。瀬名の待遇はこの後も改善することなく、殺されることになります。

この、既にイラナイ子状態の瀬名を人質にしたいと言い出す次郎法師。そこでいったんは同意しつつ、次郎法師らが門外に出たところで閉め出します。まあ、瀬名には瀬名の都合というものがあります。

そうこうしているうちに、今川の兵が井伊谷に接近中との報告。迎え撃とうぜ!と盛り上がる一同に、直親が出した答えは、「ぜひさように願います! もしも虎松がかような目に追い込まれたときには……」。自分の失態の責任は自分一人で負うということです。

直親が屋敷に戻ると、しのと虎松がお出迎え。かなり病んでいたしのもすっかり成長しました。直親との今生の別れを知りながら、気丈に振る舞います。

次に次郎法師と最後の会話シーン。絶対に果たされないと知りつつ、約束を交わす2人。


直親が生きて戻ってこられないことを前提とした別れのシーンは、なかなか切なく仕上がっておりました。

2017年 大河ドラマ「おんな城主 直虎」キャスト(配役)
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