大河ドラマ「軍師官兵衛」 最終回 乱世ここに終わる 感想

カテゴリ:軍師官兵衛
日時:2014/12/21 23:27

時は(16)世紀末、力こそが正義の時代が来た! 天下泰平などという世迷い言をすっかり忘れ、視聴者も置いてきぼりにして拳王&モヒカンのごとく九州でヒャッハーをエンジョイする如水さん。

一方、(20)世紀末に撮影された関ヶ原の戦いもついに開戦。十数年後に撮影された家康三成長政のシーンもスタジオ感がかなり緩和されて(実はロケ?)、あまり違和感がありませんでした。『功名が辻』のときは、一豊のシーンがスタジオ感に満ちあふれたチープな映像で、『葵』の美麗&大迫力の映像と落差がありすぎて実に残念でした。

で、史実通り動かない秀秋にイラつく家康と長政。そこで、「大筒」をブチ込むパルム家康。お、大筒っすか? ノベライズは「鉄砲」になってますが。実は、当時の銃では秀秋に聞こえなかったんじゃね?という説もあるので、これを考慮したのかもしれません。うっかり秀秋をミンチにしかける勢いでしたが。

こうして動き出した秀秋勢。前回まで意味ありげにわき出ていたマスク武者、大谷吉継は討ち死にする場も与えられず消滅。何がしたくて吉継を出してたんだろ(って疑問も何度目になることやら)。唯一の救いは、島左近が出たと思ったら死ぬという、このドラマ恒例の羞恥プレイの餌食にならなかったことでしょうか。 こうして、良かったのは『葵』使い回し映像部分だけで、本作オリジナル部分はなくてもよかったんじゃね?的なはしょり方で三成逃亡、終了。

関ヶ原の使い回し部分が良く出来ているのはいいとして、九州戦も思ったよりエキストラ集めていて見栄えだけはありました。CGで人数水増ししてたかもしれませんが。

そこに大坂からメールが着信。如水の野望終了のお知らせです。誤算続きの如水さん、最後の最後まで誤算続きでした。本来は、「アノ如水が、最後の最後は計算を誤ったか! しかも長政の活躍のせいとは皮肉だ」となるべきだったのでは。

捕らわれた三成、行長、恵瓊は大坂城の一画でさらし者に。そこに現れた長政。ああ、あのエピやるんですね。というわけで何のひねりもなく、長政が陣羽織を三成に羽織らせます。長政がなぜ水に流そうと思ったのか、彼の心情は全く伝わってこず、「俺もよく分かんねーけど、史実だから陣羽織着せに来たわ」って感じでした。

次は九州戦の後始末。ノベライズはまともなのですが、ドラマはエピの順番を入れ替えたため違和感が生じています。ノベライズは、長政の論功行賞→筑前52万石に→「如水殿が九州でずいぶんと骨折ってくれたようじゃが、もう十分じゃとお伝えくださらぬか」→如水、7カ国を占領したが撤退、という流れ。

ドラマは、如水、7カ国を占領したが撤退、長政の論功行賞→「もう十分」という順番。なぜ不自然な順番にしたんでしょうか。相変わらず、このドラマの編集は理解不能です。

また、ドラマでは如水の恩賞をめぐるエピがカットされていました。ノベライズには、長政がいる前で家康とその家臣が論功行賞を協議。

忠勝「九州にても、お味方いたした者に報いませぬと」
家康「清正には、行長の旧領を加増しよう」
直政「もうおひと方いらっしゃるのでは?」
家康「はて? ほかに九州にわが味方がおったかのう」

と、徳川家臣たちが如水の働きを示唆するものの、家康は一切認めないというシーンがあったのでした。

恩賞に興味がない如水ですが、家康が長政の手を取ったという話には反応。ああ、あの俗説やるんですね、やっぱり。

如水「お前の手を取ったと言うたが、それはどちらの手じゃ?」
長政「右手にございますが」
如水「そのとき、お前の左手は何をしておったのじゃ?」

その続きを如水に言わせず、特に怒りも悔しがりもしなかったところが新解釈というところですかね。左手で家康を刺し殺したとしても、長政はその場でなますにされて、文字通り匹夫の勇。あまり如水らしくないエピで、だからこそ俗説なわけですが。

家康と如水のツーショットは、いつも通り、大した内容もなく、口先だけの約束で何となくいい感じに分かり合って終了です。演出しだいでもっと緊張感のあるシーンにもなっただろうに、何だろう、この中だるみ感。

慶長7年(1602年)11月、待望の長政ジュニア誕生でみんなニコニコ。けど、この子はバカ殿で黒田騒動を引き起こして黒田家をピンチに陥れた忠之なんですが……。

その後、ノベライズには隠居所で近所の子どもたちと遊び、菓子を振る舞い、「子どもたちと遊んだり、茶の湯に興じたり、これでも忙しいのじゃ」と、政を手伝ってほしいという長政の要請を断るエピがあるのですがカット。

慶長9年(1604年)正月。長政、善助に遺言する如水。初めて褒められて長政感激! おそらくドラマスタッフが期待したほどは感動シーンにならず。

3月20日、如水死亡。おそらくドラマスタッフが期待したほどは感動シーンにならず。

元和元年(1615年)、大坂夏の陣。5月6日、又兵衛討ち死。まあ、それはいいのですが、

長政「それがしがいたらぬばかりに、又兵衛を死なせてしまいました」

というセリフにはさすがに失笑が漏れてしまいました。いやいやいや、あの長政がこんなこと言うわけないでしょ。ドラマでは長政と「仲違いして出奔した」だけにされてましたが、問題はその後。出奔した又兵衛に多くの大名からお声がかかるものの、長政が奉公構(出奔した家臣を他家が召し抱えないようにすること)にしたためにみな召し抱えることを断念し、又兵衛は浪人せざるを得ない境遇に追い込まれ、だからこそ大坂城に入城したわけで。

「それがしがいたらぬ」などと内省するくらいなら、奉公構処置になんかしないでしょ。絶対、又兵衛が悪いと思い続けていたはずです。

5月8日、突然出てきた大野治長。もうどうでもいいや。

淀「浅はかじゃった……」

戦国トップクラスの浅はかな女、淀がおのれの浅はかさをやっと自覚しました。浅はかで愚かで無能なこの女のために多くの家臣と浪人と秀頼が道連れとなって死亡し、大坂の陣終了。2016年もまたこのバカ女が滅ぶ様を見せられるのか……やれやれ。

そしてラストシーン。光の前にふと現れる如水の幻。テンプレ大河にふさわしい、ザ・テンプレと言えるありがちなシーンで締めくくりました。『毛利元就』のような大失敗ではない代わりに、明日には忘れてしまいそうな無味無臭なラストシーンでございました。

というわけで、今年も何とか感想を完走しました。あ、ダジャレになってしまいました。本当に申し訳ありません。

黒田官兵衛という実に魅力的な素材を使い、普通に作れば面白くなるはずだった本作ですが、とにかく脚本と演出のセンスが悪すぎました。大間の本マグロを加工しまくってツナフレークにしちゃった感じです。素材をそのまま活かして刺身にすればよいものを、濃い味付けでパッサパサに煮込むくらいなら、本マグロじゃなくていいじゃないか、と。

キャラ造形も展開もテンプレ通りとしか言いようがないほど独創性がなく、史実にはないオリジナル部分もどこかでみたような展開ばかり。官兵衛が活躍した史実は適当にはしょるかカットし、ひたすら「さすがは官兵衛」と連呼させるだけという、実に頭を使っていない脚本。イケてると勘違いしているのか、多用されたセンスのない止め絵(&モノクロ化)演出。

怒りを覚えるほどヒドイところは特になかった(普通にヒドイところはたくさんあったが)ものの、褒めるべきところも特になし。城井谷の謀殺シーンはよかったような気がするものの、もう忘れかけてる始末。とにかく無味無臭、印象に残らないドラマでした。数年後には「2014年の大河って何だったっけ?」「そろそろ大河で黒田官兵衛を主役に!」とか言っちゃいそうな気がします。って、ドラマのせいじゃなくて痴呆が始まっただけかもしれませんが。

ノベライズを読んだ限りでは、『花燃ゆ』第1クールはそう悪くない感じです。ぜひ名作を作っていただきたいものです。

1年間、駄文におつきあいいただき、ありがとうございました。今のところ、来年も駄文を垂れ流す予定です。では、良いお年を。

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