大河ドラマ「軍師官兵衛」 第8回 秀吉という男 感想

カテゴリ:軍師官兵衛
日時:2014/02/23 22:19

今回はまさに、「秀吉という男」。『軍師官兵衛』ではなく『秀吉』でした。特にこれといってキャラ立ちしていない、無味無臭の官兵衛では、竹中秀吉の前でかすんでしまうというもの。官兵衛は完全に脇役になってしまいました。今後、秀吉が死ぬまで(つまり物語のほとんど)がこんな調子になるのではないかと心配です。

内容はというと、天正3年(1575年)7月、信長に会う直前からスタート。織田家諸将の冷ややかな視線など、それなりに緊張感のある演出で、ここは悪くありません。

官兵衛がおもてを上げると、徐々に見えてくる信長。やはり、信長はここで初登場にした方が良かったと思いました。これまでの信長パートは脚本も演出も稚拙で全く面白くなく、時間の無駄でした。黒田には御師という便利な諜報機関があったのだから、信長や中央政局については御師を通した話にとどめ、まだ見ぬ信長に官兵衛がワクテカするだけで十分でした。 その分、これ以前は三木、別所、宇喜多、赤松などなどを絡めた播磨情勢を描写してほしかったところ。青山・土器山の戦いも、ドラマでは単に母里小兵衛、武兵衛が討ち死にしただけの戦いに矮小化されちゃいましたが、本当は足利義昭赤松政秀浦上宗景宇喜多直家別所安治らがからみ、信長も介入するという大事件だったわけで、ドラマにしたら普通に面白かったはず。秀吉が半兵衛の屋敷で薪割りとか、どうでもいいシーンで時間を浪費したことが悔やまれます。

『毛利元就』が面白かったのは、三傑なんか一切出ず、西国情勢をきっちりやっていたからなんですがねぇ。

で、官兵衛のプレゼン開始。途中、寡兵をからかわれると、桶狭間の戦いを引き合いに出して

官兵衛「兵はいたずらに多きを益ありとせず。戦の勝敗は兵の多寡にあらず」

と説きますが、ここはちと違和感。信長ほど兵力で圧倒する正攻法にこだわった男はいないわけで。長篠の戦いだって、鉄砲の三段撃ち(あったとかなかったとか諸説ありますが)自体はどうでもよくて、武田に対して倍近い兵力を動員したことが勝因でした。

桶狭間なんて、信長の唯一の例外のような事例を出しても、信長は心を動かされなかったのではないだろうか……。

ともあれ官兵衛のプレゼンが気に入った信長さん、史実通りあの有名な圧切長谷部を官兵衛にプレゼント。「圧切」のいわれは、後に秀吉が解説するので割愛。ちなみに、「圧切」というのは斬る対象から離れた場所から刀を振り下ろすのではなく、対象に刃を押し当てた状態でギュッっと押し付けてギリギリと切ること。こんなやり方で木製の膳棚ごとぶった切っちゃうわけですから、すごい切れ味です。

そこに、瀬田の唐橋の普請奉行を急がせていたという秀吉が遅参。ここでいう普請奉行は瀬田城主の山岡景隆かな。秀吉が「3カ月で完成させる」と言っていたので、山岡景隆の仕事で間違いないでしょう。この唐橋は本能寺の変のとき、山岡景隆が焼き落としたため明智光秀の安土城入城が若干遅れることになります。

ま、このシーンは『秀吉』の決めゼリフ「心配ご無用!」を言わせるためだったとしか思えないわけですが。が、一応秀吉なりの深慮遠謀があったりするわけです。

信長との会見を終え、善助らの下に戻る官兵衛。プレゼン成功にわく家臣達。フツーに現代ビジネスマン物のドラマみたいなシーンでした。

姫路では、松寿丸と又兵衛が剣のお稽古。又兵衛が手加減したことを見とがめる光。さらに言いたいことがあるなら言えという光に答えて曰く。

又兵衛「弱い者相手では稽古になりませぬ」

まぁ、そうだよね……。後の光の「敵をあなどってはなりません」はいいのだけれど、松寿丸と又兵衛の年齢差は8。成人後はともかく、天正3年時点ではこの差はでかい。

松寿丸数え8歳(満6、7歳)vs. 又兵衛数え16歳(満14、15歳)

です。中学3年生と小学1年生(か、幼稚園児)。又兵衛がどんなに弱くても、手加減しなかったら松寿丸は撲殺されます。この組み合わせで稽古させるのが間違いなので、悪いのは光です。又兵衛かわいそう。これじゃ出奔しますがな。

場面は長浜へ。側室南殿の門前で佐吉登場。石田三成が秀吉に仕官した時期については2種類あり、このドラマでは天正2年説を採ったことになります。天正5年説だと、この時点では三成は仕えていないことになります。

秀吉の側室パーティーについては、彼の浮気性とおねとの関係の描写のためなので、まぁどうでもいいです。秀吉について掘り下げられても、こっちは見飽きてるんで。

そして今度は長浜城であらためてパーティー。ノベライズには、太兵衛と小一郎の飲み比べがあった(特に槍などの景品はなし)のですが、カット。で、唐突に元信長さんの蜂須賀小六と太兵衛の相撲バトルに。

太兵衛の武勇を気に入った秀吉、家来にほしい→高禄オファー→辞退→主従の絆アピールという眠いテンプレを展開します。このくだりも見飽きた。

意地悪なツッコミとしては、九郎右衛門が「たとえ、百万石積まれようとも、われらの忠義はびくともいたしまんせぬ」に「君は誘われてないから」というところでしょうか。いや、善助や太兵衛の代弁をしただけなのは分かってますが。

パーティーもおひらきとなり、秀吉と官兵衛がさし飲み。

針売りをしていた秀吉を信長が拾った? そこは松下長則 or 之綱なのでは……。

ここで恒例の毛利スリーアローズコーナー。BGMその他、演出が悪の組織のアジト状態。『毛利元就』のときの明るさはどこにいってしまったんだ……。やはり小早川隆景の配役のせいか?

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