大河ドラマ「平清盛」 第1回 ふたりの父

カテゴリ:平清盛
日時:2012/01/08 23:54

ついに「平清盛」が始まりました。第1回としてはまずまず期待通りの出来だったと思います。白河院と璋子の濡れ場など、最近の大河ドラマにしては踏み込んだ描写もあるなど、NHK的には頑張ったかな? といったところでしょう。役者がそろっているところもいいですね。

朝日新聞のラテ欄では「追われる舞子母子をかくまう忠盛のニューマニズムが現代的」などと紹介されていましたが、この文を書いた星野学って人は素人ですかね。大河では「子どもに同情してかくまう主人公」とか、当たり前のことなんですが。ま、確かにこういう展開は薄っぺらくなるのですが。

ただ、今回の大河では第1回で青かった忠盛とそれをフォローしたりたしなめる正盛の関係が、そのまま清盛と忠盛の関係にスライドします。第1回では関白 藤原忠実に反発していた忠盛の態度が、次回以降で変わっているところが見所になるでしょう。 記念すべき最初の場面は、清盛死後の1185年源義朝の菩提を弔う寺の立柱儀式に、壇ノ浦勝利の知らせをもたらす北条政子。眉なし、男のようなセリフ回しに立ち振る舞いなど、この政子にはいささか違和感を覚えます。この時点ではまだ将軍御台ではないにしても、正室として女性らしく振る舞っていてもいいのでは。というか政子は頼朝の側に侍っていて、知らせは普通の武士がもたらせばいいのでは。

そして本編。1118年、清盛誕生の年です。平正盛、忠盛は朧月を追討。このわずかなシーンのために隆大介を使うNHKがイカす。

その帰路に、関白 忠実の牛車と出会い、道を空ける平家一門。

忠実に「血まみれの姿で都を歩くでない」と言われ、思わず反論してしまう青い忠盛。まだ数えで24歳(満22、3歳)ですからね。それを取りなすようにさらりとわびを入れてフォローする正盛。ここで悔しさをかみ殺すように顔をヒクつかせる中井貴一はやはりウマい。

その後、賀茂川の河原で舞子と出会い、心を通わせる忠盛。が、小日向文世らしい小物臭がプンプン漂う源為義に見つかり、舞子母子は白河院の前に引き出されてしまいます。白河院の伊東四朗、忠盛の中井貴一、舞子の吹石一恵、藤原長実の国広富之、全員の緊張感がすばらしい。おや、この場面には源頼朝義経が(笑)。

ここでは、名優に囲まれた吹石一恵がなかなか健闘。足を引っ張ることもなく、見事に散りました。公式ガイドでは「そばにいた武士の太刀を奪い」となっていますが、やはりこれはムリがあると思ったのか、舞子が短刀を忍ばせていたことに変更されていました。武士から太刀を奪うのもナニですが、短刀を持ったまま院の前に引き出されるというのも苦しいところですが。

この後の、平太を抱いてススキの中にたたずむ忠盛のシーンはよかった。心にしみる美しいシーンです。こういうセンスはあるのに、他の場面ではムダにコーンスターチを多用しすぎて残念なことになっています。

院の庭でも河原でも町中でもコーンスターチが舞いまくりです。これではコーンスターチで何を表現したいのかさっぱり分かりません。霧(早朝とか)? 川から立ち上る湯気(厳冬期の寒さの表現)? 埃(乾燥した空気感)? とにかく多くのシーンでコーンスターチを使っているので、季節感も温度も湿度もさっぱり分かりません。本来はそういったものを伝えるために使うのでは?

その7年後、1125年。平太を連れて海に出る忠盛。舟の上で立つことができない平太に、忠盛は「心と体の軸を作れ」と諭します。これが今後の「話の軸」の1つになります。特に心の軸は、自身の出自を知って軸を失った清盛が、平家の棟梁として軸を再構築することが序盤の話の軸になりますからね。

ただ、船上で海賊相手に無双状態の忠盛はどうだろう。ちと強すぎというか海賊弱すぎ。

父を誇りに思い、慕うことが心の軸だった平太は、次にこの軸が破壊されます。木から落ちた平次に取り乱し、「平次に何をしたのじゃ!」と平太を平手打ちにする宗子(後の池禅尼)。この宗子の形相に驚き、市中に出た平太は、朧月の子である兎丸と出会います。後に深く関わり合うオリキャラとの少年時代での絡みは大河の風物詩ですな。

ノベライズや公式ガイドを読んでも「ちと苦しいな」と感じたのが、この浮浪者の盗人小僧にすぎない兎丸に平太の出自を語らせるところ。兎丸本人に、平太のことをリサーチしてるからと語らせていますが……。

こうして、自身の心のよりどころ、心の軸を失ったところから平太はスタートラインにつきます。ここからまずは平家の人間であるという軸を再構築するわけですが、それまでのダメな子っぷりが楽しい。ここ最近の大河の主人公に見られる「劇中では賞賛されまくりなのに視聴者にはダメな子に見える」直江兼続や江と異なり、普通にダメな子です。義朝その他から否定されまくり。逆に、「本当の清盛はもっと出来る子だったのでは?」と感じるほどです。

一方、王家(天皇家でも朝廷でも可)パートはドロドロです。物語開始(1118年)の時点では、三上鳥羽帝は16歳(満年齢では14、5歳)。いささかしわが目立ちますが、見目麗しい若き帝ってところですね。彼が璋子(藤原公実女)に里帰りを勧めたところ、何と璋子と白河院がデキてしまった、と。史実かどうかは分かりませんが、崇徳帝の出自としてはよくある設定ですね。というわけで、鳥羽帝と璋子の子とされる顕仁親王(崇徳帝)は、実は白河院と璋子の子となります。

7年後、鳥羽帝に対して顕仁親王への譲位を迫る白河院の場面。やって来た顕仁親王に「父に書を見せるがよい」と言う鳥羽帝に対して、書を「白河院」に見せてしまう顕仁親王。何ともおぞましい場面です。これでは鳥羽院が崇徳帝を憎悪するのもムリありません。第1回では単なるビッチにしか見えない璋子ですが、彼女のキャラはそういう次元の問題ではありません。この彼女が佐藤義清との関わりの中で変化していくところも見所ですね。

って、そういえば鳥羽から崇徳への譲位は1123年。1118年の7年後では計算が合わないような。

第1回を見た限りでは、ノベライズや公式ガイドの展開にかなり近いようです。見苦しいコーンスターチ多用といった欠点はありますが、それ以外については演出も期待できそうですし、今後も楽しめそうです。

大河ドラマ「平清盛」キャスト(配役)
大河ドラマ「平清盛」 主要人物年齢年表
も第1回に合わせて更新しました。よろしければご利用ください。