大河ドラマ「おんな城主 直虎」 第33回 嫌われ政次の一生 感想

カテゴリ:おんな城主 直虎
日時:2017/08/20 20:44

小野政次というか高橋一生の退場回。本ドラマのクライマックスの1つです。この回を見るために、これまで我慢してきたと言っても過言ではありません。

しかしまあ、「嫌われ政次」とはまたひどいタイトルを付けたものです。松子もとい政次がかわいそうになります。それはともかく、こうして見ると「一生(いっしょう)」は「一生(いっせい)」とのダブルミーニングのような気がしてくるのですが、考えすぎでしょうか。

ではドラマスタート。井伊谷城明け渡し時の、ツッコミどころ満載な抵抗を巡り、非をとがめる近藤と冤罪を主張する井伊直虎が対立。双方とも証拠がない状態ながら、直虎の主張は筋が通っています。が、「井伊の再興」「家康公にお取り次ぎを」を連呼するウザさでかなり減点。酒井忠次的には、「うわぁ……」って感じでしょう。

半刻後、徳川家康らが井伊谷城に到着。小野政次の非をならす近藤、それに同調する菅沼。縁戚故に直虎の釈放を願う鈴木。 三人衆を下がらせた家康は、彼らが謀ったことではないかと疑います。このぼんやり殿、なかなか鋭い。が、武田メールにより自体の切迫を知ります。武田が駿府を落とした今、掛川に逃げた今川氏真を家康が攻めねば、武田が境界線を越えて遠江を制圧するかもしれない。武田の必要以上の勢力拡大は、徳川の取り分が減る一大事です。

牢内の直虎を訪ねる家康。これが2人の初対面です。必死に語りかける直虎に、無言の家康。土下座したまま、ずりずりと後ずさって退場。対今川、対武田戦略から、井伊あるいは小野を切り捨てることにしたつらい心情の表現でしょうが、変な虫みたいな動きで残念な演出です。

ノベライズには、牢から戻った家康が「……また、瀬名を怒らせてしまうの」と石川数正に語るくだりがあるのですが、ドラマではカット。

隠し里に逃げた政次は、しばしなつと穏やかな時間を過ごします。これがなつと政次の最後か。

南渓が龍雲丸に直虎救出を依頼するも、直虎の前に政次が連行されてきます。近藤の寝所を襲い、捕らわれたという。政次の無罪を主張する直虎ですが、「信じておられたとはおめでたい」と、徹底的に悪役を演じる政次。

直虎の依頼で、政次救出に来た龍雲丸ですが、政次は脱獄を拒否。自分が逃げたら、残された者がどうされるか分からぬと言う。

政次「俺の首1つで済ますのが、最も血が流れぬ」

龍雲丸の説得にも動じない政次。

政次「忌み嫌われ、井伊の仇となる。恐らく、私はこのために生まれてきたのだ」

もうね、痛々しくて見ているのがつらい。この役に高橋一生をキャスティングした人、天才過ぎ。そして高橋一生、いい仕事し過ぎ。

政次が残した碁石の意味を考え続ける直虎。そしてついに政次が磔にされることを知らされます。

ドラマでは、南渓の呼びかけに答えて同道する直虎ですが、ノベライズでは呼びかけに微動だにせず、南渓だけが刑場に向かいます。そして、この先の展開はドラマとノベライズで全くことなります。さて、どちらがよかったのでしょうか?

ドラマバージョン

辞世?をしたため、刑場に引き出される政次。直虎と視線で語りあいつつ、淡々と磔の準備が進みます。そして近藤の家来が槍を構え今にも突き立てようとしたとき、直虎が割り込んで自ら政次に槍を突き立てます。

政次の非道を並べたて自ら手を下すことにより、悪人政次の演技を完成させてやります。自ら手を下すという、究極の苦しみを自身に課したことになります。直虎の意図を察し、反逆者を演じきって絶命する政次も切ない。

高橋一生、お疲れ様でした。見事な小野政次でした。ぜひまた大河で主要キャラとして出演してください。

政次が牢内でしたためた辞世は、

白黒をつけむと君をひとり待つ天伝う日ぞ楽しからずや

辞世というか、もう完全に直虎へのラブレターです(泣)。

直虎が寺の囲碁の間に戻ると、政次が優しくほほえんで直虎を迎えます。が、それは幻。政次はもういない……。

ノベライズバージョン

牢から引き出された政次。歩きながら、過去を回想します。鬼ごっこで捕まりそうになって淵にダイブしたおとわ。竜宮小僧捜しにつきあわされて閉口したこと。直虎と敵対したとき、互いを利用しようと約束し、囲碁をした日々。「もうじき、陽の光の下で打てるようになるの」「はい」という会話。

昼の光の中で、碁盤を前に直虎を待つ政次。バタバタとやってくる足音に、笑いながら振り返る政次。(ドラマバージョンラストのシーンか。ノベライズでは直虎視点ではなく政次視点になっている。政次が望んでいた日の光景かと思うと切ない)。

直虎は、例の井戸で経を唱えている。ふいに強い風が吹く。ぽつりと雨粒が落ちてきたその瞬間、直虎の数珠が切れる。そして最後の1行。
予感がした。政次は、もう生きてはいない――と。

2017年 大河ドラマ「おんな城主 直虎」キャスト(配役)
もご利用ください。