大河ドラマ「おんな城主 直虎」 第15回 おんな城主対おんな大名 感想

カテゴリ:おんな城主 直虎
日時:2017/04/16 22:23

今年の大河は本当に評価に困ります。「架空の女領主のドタバタ奮闘記」としてはまあまあ面白い。が、「井伊家のドラマ」としては全く面白くありません。井伊直親謀殺などの史実は一応やったものの、なぜかノホホンとした雰囲気がただよっていてイマイチ危機感も戦国感も伝わってきません。

前回も史実を基にしているとはいえ実質的には架空のお話でしたが、今回から完全に史実とは無関係のお話になります。

史実では、今川に要求された徳政令に2年も抵抗したとはいえ結局従ったのに、今回の話は今川の下知に背いた件でのお呼び出し。もう、完全に史実など関係なくなってしまいました。話自体は、リアリティはともかくまあ面白いものの、井伊である必要は全然ありません。顔がガンダムなだけで、ガンダムである必要性が(バンダイ以外には)全くないガンダムみたいな感じです。

ちゃんと史実に即しつつ、国人(国衆)が周りの大名たちに翻弄されつつ生き残っていくハードな話がお望みであれば、『毛利元就』がお勧めです。大内と尼子に挟まれた毛利の悲哀が実によく描かれております。しかも、後半はその境遇から脱して中国の覇者になるというカタルシス付き。今年の直虎はというと、要は「家康の家来になった直政を育てました」というだけのお話ですからねぇ……。

ドラマに話を戻すと、今回から政次の本意が漏れ出てきます。寿桂尼様に井伊直虎呼び出しを銘じられると、明らかに動揺して直虎の出頭を回避しようとします。

そんな政次の本意など知らない直虎は、農政ミーティング中。が、「荒れ地を耕した者のものとし、3年は年貢を取らない」という、墾田永年私財法が頭をよぎる「三年荒野(あれの)」を方久が提案するも、上の空の直虎。 そこへ政次がやってきて、今川の沙汰を伝えます。直虎がそれに応じて駿府に行くというので、政次はしのを利用して直虎解任を画策。やっていることは悪役ですが、ここで政次のつらそうな表情をインサート。

ちなみに、ノベライズには政次が下がった後、直虎、六左衛門、方久の会話シーンが続くのですがドラマではばっさりカットされています。このカット部分で、(見た目は中学生っぽいけど)「井伊家でいちばん武術の腕が立つ」という設定の中野直之を護衛役にするため、六左衛門が直之に頼むことが取り決められます。

で、そんな経緯がないまま、反抗期の中学生みたいな直之が登場。ガーガーとがなり立てて退場。家臣団が役に立たないため、龍潭寺の僧侶が護衛につくありさまです。まあ、小牧・長久手の戦いにも参戦した武闘派の傑山は適任ですが。

で、役立たずの直之は寺子屋のアシスタント。南渓に誘われた際、「のんきな」と言っていましたが、ノベライズは「のんきな。今はそれどころではないではございませぬか!」となっていました。そうだよな。今はそれどころじゃないよな。へそを曲げて護衛を坊主に任せて何もしないお前が言うな、って感じですが。

そして、直虎が駿府に行ったと聞いた村人たちが直虎を守ろうとする様を見て、やっと自分の役立たずっぷりに気付く直之でした。

一方、山寺に泊まった直虎一行。直虎の悲鳴にあからさまに動揺する政次。傑山に羽交い締めにされてしまいましたが、守る気満々な真意があふれ出していてほほえましい。

で、悲鳴の原因はヘビ。ヘビには疎いので映像で使われたヘビの種類は分かりませんが、ノベライズによると直虎に夜這いをかけたスネークはマムシとのこと。マムシはヤバいですね。

そして朝。直虎一行が出立準備をしていると、木が倒れるわ斧が飛んでくるわ、刺客が襲撃してくるわ。グダグダの状況で直虎がダッシュで逃亡。ノベライズは「敵に追われて逃げていく直虎」となっていましたが、ドラマだとビビった直虎がわれ先に逃げ出しただけに見えました。その揚げ句、刺客に囲まれて絶体絶命。

そこへ直之が現れて、1人で大勢の敵をバッサバッサと切り倒します。安っぽい展開がほほえましい。華麗に助けたのはいいものの、直虎を「そなた」呼ばわりはどうなんだろう。「そなた」は、目下の者に対する二人称代名詞。現代語の「おまえ」です。直虎の言動に不満があろうと、直虎はまがりなりにも主家の直系。中野は井伊の分家で一門といえる存在ですが、井伊が主であることは変わりません。

ここで突然、政次に後見を任せると言い出す直虎さん。駿府に向かう政次を見送った直虎は、直之を呼び出して秘密のお願い。

そして、直之の扮装で駿府に現れる直虎。これには寿桂尼様も政次もびっくりです。衣装を交換して周りを欺くのはおとわの得意技ですからねぇ。

そして申し開き開始。今川仮名目録を盾に、徳政令が不可であったと主張するも、今川義元による改定版で「守護使不入とありとて、お下知に背くべけんや」になっていたよとツッコまれて言葉に詰まる直虎。「徳政をやれ」と言われると、それは「後見と認めたってことでOK?」と言い返します。揚げ足をとってあー言えば上祐。

形勢不利と見て、政次がしのメールを寿桂尼様に渡します。直虎が驚いていると、これまたジャストタイミングで井伊から何かが届きます。ノベライズは、「寿桂尼は、またか、という顔だ」とセルフ突っ込みしています。

巻物を広げると、瀬戸・祝田村の村人による後見願いの連判状。

そして、正式に後見が認められて一件落着。というか、40分かけて、現状維持が再確認されただけ、というわけです。この架空の直虎呼び出しをさかなに、前回の六左衛門に続き直之の掌握、実は直虎を守ろうとしていたという政次の本意の露呈こそが本当のテーマだったといえるでしょう。

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