大河ドラマ「おんな城主 直虎」 第12回 おんな城主直虎 感想

カテゴリ:おんな城主 直虎
日時:2017/03/28 12:09

第1クールのラストを飾るのはタイトル回収回。見所は、吹越満みたいな高橋一生の演技です。演出はマズいけど役者の演技で強引に名場面にしちゃうという瞬間が、大河ではたまに生まれます。

ではドラマスタート。井伊直親の最後は、彼を案じて水ごりする次郎法師とシンクロして展開。朝比奈の兵に囲まれ、ひとーり(孫一郎)、ふたーり(藤七郎)と討ち取られ、最後に直親がさくっと殺られます。

「戻ってくるのじゃ」という次郎の声がよみがえり、井伊谷に戻ろうとするも力尽きて直親絶命。

井伊谷で水ごりを続ける次郎に手ぬぐいを差し出す直親の幻……。

まぁ、悪くはなかったのですがノベライズの処理の方が好きかな。ノベライズの場合、11回ラストと12回冒頭に直親襲撃シーンがありません。11回ラストは、「わずかな共を連れ、駿府へ向かった」で終わり。そして、12回は水ごりしている次郎に直親が布を差し出し、次郎気絶。次のシーンで直親の従者が戻ってきて直親の死が伝えられる、という流れです。まあ陳腐ではあるのですが、ドラマの演出はそれ以上に工夫が足りないという印象です。

そして、知らせを受けて直親を迎えに行く南渓たち。普段ニッコニコな傑山の咆哮、そして「ここは寒かろう……。井伊に帰ろう」という南渓に泣かされます。このシーンも演出に疑問があるのですが、この2人の演技に救われました。

ここでノベライズに比べてダメダメなのは、遺体の位置関係。ノベライズでは、孫一郎と藤七郎の遺体から、どう戦い、どう死んだのかが南渓たちに「伝わる」ような状態でした。そして、直親の遺体は「ぽつんと離れて」いました。「一人、井伊谷のほうを向いて倒れている」「直親は井伊に帰ろうとしたのうだろう」と描写されています。それはまあ絶命シーンで伝わってきたのですが、南渓たちがやってきた方向と逆に向かって倒れていたのが気になります。直親、そっちは駿府だ。 葬儀が終わり、沈む井伊に今川から虎松殺害命令が届きます。駿府に向かい、切腹を条件に虎松の命乞いをする新野左馬助ですが、今川氏真は新野の首などいらんとつれないお言葉。「わしの欲しい首を取ってこい」って、やっぱり彼の首ですよね。

井伊の人たちに裏切り者扱いの小野政次は、氏真に近侍して一向宗をあおって松平元康を困らせようぜと進言。で、有名な三河一向一揆勃発です。おお、特に意識してませんでしたが、直親が死に、三河一向一揆が始まったのは永禄6年(1563年)でしたか。

三河一向一揆は、一向宗門徒だけでなく、『真田丸』で近藤正臣が演じた本多正信本多正重渡辺守綱酒井忠尚内藤清長などの家臣、桜井松平、大草松平などの同族も元康に背くという、元康にとっては悪夢のような出来事でした。

今川から虎松助命の条件として出されたのは、案の定、元康の首。井伊直平は出陣の前に次郎と飲むという長年の願いを果たします。既に覚悟を決め、明るく朗らかに酒を酌み交わす直平、左馬助、中野直由が切ない。直平はそこそこ見せ場がありましたが、直由は少し物足りなかったかな。筧利夫ならもっといろいろなことができたでしょうに、これで終わりとはもったいない。脚本的に、彼を使いこなせなかったように思います。

直平「実は、わしはずっとそなたが男子であればと思うておった。なれど……女子でよかったぞ。そなたとは逆縁にならずとも済みそうじゃ」

おおじじ様……。

そして、直平、左馬助、直由はあっさりナレ無双で退場。

すると、井伊谷三人衆(近藤康用、菅沼忠久、鈴木重時)を従えて政次が井伊谷へ帰還。祐椿尼に皮肉を言われた後、飲んだくれている次郎の下へ。一人助かった政次に疑念が募る次郎は、「裏切るつもりで裏切ったのか。それとも裏切らざるをえなかったのか!」と詰め寄ります。

次郎が握ったそでを振り払う政次。ヘタを打ったのはあいつだ」

正論ですね。

史実では政次の讒言という以上のことは分からないのですが、ドラマでは単に直親が愚かだっただけ。身元不明の使者を信じ、真偽を確かめる努力を一切することなくニセ康の誘いにホイホイ乗ったのは直親。「オレオレ、次郎法師だよ。困っているので銭を持ってきて」とメールすれば、いくらでもお金を持ってきてくれそうです。このドラマの直親が死んだのは、完全に自業自得というもの。

一方、「答えを選ばなければならなかった」政次の選択肢は、バカの直親と道連れになるか、自分だけでも助かるかの2つしかありません。愚か者の直親と手を取り合ってあの世に行くのは美しいかもしれませんが、それでは井伊、そして次郎法師を守ることができなくなる。このドラマの政次としては、今川に取り入って矛先を井伊から松平に向けるしかなかったことでしょう。

にしても、吹越満に寄せた高橋一生の演技の見事さよ。目つき、顔の動き、発声、どれも吹越満を思わせます。代替わりして中野も新野もショボくなるのですが、高橋一生の演技だけで満足できそうです。サンキュー高橋。

憎まれ役の仮面をかぶった政次に一時は激高した次郎ですが、南渓に諭されて亀となって生きていく決意を固めます。虎松の後見として井伊直虎になる次郎が身にまとうのは、直親との夫婦約束のときに作った打ち掛け。「戻ったら一緒になろう」という約束が、このような形で果たされました。

そして、一同の前に直虎として現れて今回はおしまい。最後、直虎と政次が交わした視線がしばらしかった。

これにて第1クール終了。第2クールもノベライズはそこそこ面白いのですが、さてドラマはどうなりますやら。直虎になってもあいかわらずやらかす「おとわ」ですが、演出がまずいとドラマでは寒いシーンになりそうで心配です。

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