大河ドラマ「真田丸」 第8回 調略 感想

カテゴリ:真田丸
日時:2016/02/28 22:53

織田が去ったことで空白地帯となった旧武田領。上野は北条が押さえ、北信濃は上杉が取った状態が前回ラスト。そして今回は、北条が碓氷峠を越えて上野から中信濃に入ったところからスタート。真田にとっては非常にイヤな状態です。

北条氏直が小諸城、上杉景勝が海津城。真田領つまり真田の郷と戸石(砥石)城は、両勢力に完全に挟まれた形になります。北条と上杉が戦う限り、真田領は常に両勢力から脅かされることになるわけです。こういう危機感を背景に、真田昌幸はどう立ち回るのか? というのが今回のお話。

北条が碓氷峠を越えたという知らせにビビる徳川家康に癒やされながら、場面は北条氏政へ。氏政、また汁をかけた! と笑いそうになったのですが、「食べる分だけ汁をかける。少しずつ少しずつ。わしの食べ方じゃ」というセリフに感心させられました。有名な暗愚エピを逆手に取って氏政の自覚的な哲学に転化しましたか。本作の氏政を象徴するセリフです。 この情勢下で、昌幸が駒として利用しようともくろむのが、春日信達。まずは真田信尹が離間策を仕掛けます。もう一押しを真田信繁がトライ。氏直は武田信玄の孫、景勝は信達を利用しているだけと、見事に理屈を並べるも失敗。

信尹「少々理屈が立ちすぎたな。人は理屈で固められるとむしろ心を閉ざす」

信尹叔父上、かっこいい。

が、とにかく調略は不調。昌幸は見切り発車で氏直が入った小諸城に乗り込みます。これには、上杉について北条と戦うと思っていた真田信幸もびっくり。お兄ちゃんのライフがまた削られてしまいました。

こうして、小諸城で氏直と初対面。ようやくキャラ立ちしてきた氏直は、権高で器の小さい人物と判明。1562年生まれだから数え21歳(満19~20歳)。大将として上野を制し信濃の国衆も従いつつある中で、俺TUEEEE的全能感に浸っている若造としてはこんなものかもしれません。

案の定、昌幸の遅参に激怒する氏直。昌幸が春日の調略を持ち出すと、喜ぶどころか「そのような土産は要らぬわ!」とさらに怒る有様。というナイスなタイミングで登場する卓ちゃん氏政。昌幸を歓待し、春日の調略に大喜び。この上機嫌っぷりは絶対裏があるぞ、と思わせてくれる絶妙なうさんくささを醸し出すところが素晴らしい。

絶対、退出したら手の平を返すぞと思ったらやっぱり、真田なんか大して知らぬと言い出します。氏政、期待を裏切らない男です。天狗になりがちな氏直の牽制に真田を利用するなど、単なる暗愚として描くつもりはないということですね。小田原征伐が楽しみになってきたのですが、昌幸と信繁は小田原城ではなく『のぼうの城』を攻めていたのでした。信繁、主人公補正を発揮して甲斐姫と会っちゃったりしないだろうな……。

昌幸が北条についたことは、速攻で景勝に知られます。まぁ、真田領は景勝のいる海津城の目と鼻の先ですからねぇ……。で、当然ながら海津城にいる信尹と信繁は立つ瀬がありません。が、「兄には愛想が尽き申した」と言ってその場を繕う信尹。が、直江兼続は全然信用してないぞオーラで信繁を圧迫します。某失敗作の兼続より、こっちの兼続の方が性格悪そうで、はるかに兼続っぽいなぁ。

とにかくその場はごまかしたものの、猶予はありません。というわけで春日の調略再開。武田が滅び、織田も消え、途方に暮れていたところを上杉に拾われる。武田遺臣の苦悩を体現したような春日さん。父の城だった海津城を与えると言われ、ついに調略されます。

調略成功を目の演技だけで表現する信尹さん、すごい。氏政との交渉時も、セリフ少なめで表情だけでいろいろなことを語らせてたな。この人も数奇な運命をたどりながら最終回まで(信繁が首になるまで)出番があるはずなので、このような演技を見る機会はまだまだあるはずです。

ただ、信尹には何やら屈託がある様子。信繁に「わしのようにはなるな」と意味深なことを言います。

ヒスっ子氏直は川中島まで侵攻。千曲川に布陣します。すると、どう見ても佐助な漁師が上杉の別働隊を見たという虚報を氏直に伝えます。コーエー的に表現するなら「流言」コマンド実行ですな。

たたみかけるように発見される、磔にされた春日。春日の内応という前提条件が崩れ、上杉の兵力も不明という状態に動揺する氏直さん。俺TUEEEE感がなくなり、ヒス再開です。昌幸が積極策を進言するほど、消極策に流れる氏直。やっぱ上杉じゃなくて徳川をボコろうぜってノリで甲斐への転進を軽々と決断しちゃいます。北条氏直、分かりやすい男よ。

昌幸にいやみったらしく殿を命じて去る氏直。氏直に続きながら昌幸に言葉を掛ける室賀ですが、昌幸の「失態」を罵ったり揶揄するでもなく、「生きていたらまた会おう」という彼の口調には悪意が感じられませんでした。こういう、「分かりやすい敵役・かませ犬」的な人物でないところが実にいい。この人が死ぬと寂しくなるなぁ。というか、この人を「分かりやすい敵役」にしておかないと、真田視点ではかなりダークな展開に……。ダメ大河『軍師官兵衛』唯一の優良エピ、城井鎮房謀殺の再来となる名場面になるかもしれませんね。

場面は再び癒やし系家康。信濃に行ったはずの北条が甲斐に転進してきたのですから驚愕するのもムリはありません。こうして家康は、甲斐の若神子城に入った氏直と対陣するハメに陥ります。これはこれ、またも昌幸やばば様萌えな木曽義昌が動いたり、織田信雄信孝が介入したりとややこしいことになり、結果として北条と徳川が和睦・姻戚関係になったことが後につながるのだから面白い。

さて、信尹はなぜ「わしのようにはなるな」と言ったのかが明かされます。海津城を安堵するという氏直直筆の起請文を春日に渡す信尹。そして油断した春日をあっさりと刺殺。偽装を施した上で景勝にご報告。春日信達が北条に内通し、景勝に誅殺されたのは史実なので、これにうまく信尹たちを絡ませたエピになりました。

信繁が春日の冥福を祈っていると、景勝が登場。景勝の人柄と、景勝が春日を正しく評価していたことを知ることになります。今後、信繁は人質として景勝に仕えてかわいがられることになるので、今回は景勝への忠誠心を醸成する下地作り、といったところでしょうか。

一連の謀略によって、昌幸は何がしたかったのか。最後に種明かしです。北条が甲斐に向かい、上杉が越後に戻り、北条が来たために徳川も動けなくなった。こうして信濃が大勢力にとっての空白地帯になった、と。これによって、

昌幸「われら信濃の国衆が治める。われらだけの国を作るのだ」

という、国人領主の連合構想を開陳します。

この信濃の動きを注視していた家康は、真田の策ではないかと疑います。さすがにこれは、「さすがわ官兵衛」的な持ち上げ方でちょっと気持ちが悪い。最近の駄作大河のおかげで、反射的に嫌悪感を覚えるクセがついてしまったのです。いやですね。

本多正信「もしそうなら、真田安房守、己の兵を一兵も使わずに、信濃から上杉も北条も追い出したことになりますな」

昌幸さん、ナルサス化してきました。

あらためて昌幸の恐ろしさを認識した家康。普通ならここはシリアスな場面になるはずなのに、癒やし系でまとめられて癒やされてしまいました。

2016年 大河ドラマ「真田丸」キャスト(配役)
もご利用ください。

今週の戦国史:頑張れ武田家


ゲームは大詰め、を過ぎて消化試合に突入。長門と伊予から九州に攻め入った武田家は、破竹の勢いで九州を制圧中。小勢力を一城一城挽きつぶしていくだけです。ドラマ中の信長の野望マップだけでも十分分かりますが、こいういうゲームをやっていると位置関係がより明確になります。