大河ドラマ「おんな城主 直虎」 第31回 虎松の首 感想

カテゴリ:おんな城主 直虎
日時:2017/08/06 20:47

井伊谷と直虎を守るため、自らの手を血に染めて修羅の道を邁進する政次。このドラマ、政次の処刑後はどうやって見どころを作り出すつもりなのか、心配になります。

百姓どもの座り込み騒ぎが流血沙汰になる寸前というタイミングで、井伊直虎を引き連れて場を制する小野政次。この機に乗じて、徳政令受け入れを直虎に要求します。政次が裏切り者役を演じて今川から井伊谷を預かるつもりと信じた直虎は、徳政令を受け入れます。

関口にまんまと事後処理を任された政次は、直虎らに立ち退き要求。無慈悲な扱いにも見えますが、ここで退去しておけば後に今川が井伊家の処断を考えても安全を図れるということ。

隠し里に逃れた直虎は、一同に井伊復活プランを開陳。ついでに政次が今川に面従腹背していたことを明かします。実はそう思ってたとか言い出す連中も居れば、全部ひっくるめて直虎がだまされている可能性を指摘する直之もいたり。

そして久々の今川パート。ノベライズには、武田に調略された椎名康胤(元は上杉の国人)を攻撃するため、上杉が動けなくなって今川がピンチ、という背後情勢が語られています。つまり、北から武田を圧迫するはずの上杉が自国問題に煩わされているため、武田は後背を気にせず南下して今川を攻められるようになったというわけです。

 今川氏真がイラついていたのはこのような事情があるわけですが、ドラマではカット。ストーリーには直接関係ないし、真田丸のコーエーメソッドでも使わないと説明が難しいところです。しかし、井伊谷の受難もこうした大局の一側面でもあり、こうした流れが戦国史の面白いところ。このドラマの薄っぺらさの一端は、大局観の排除にあるような気がします。  で、イラっとしている氏真は、政次の起用を進言する関口に井伊断絶を命じます。円滑な事後処理を考慮して諫止するする関口ですが、イラっとしている氏真には届きません。なぜここまでイラっとしているのか、ドラマを見ただけではもちろん分かりません。

一方、もはや予知能力者級の先読み能力をゲットした直虎は、虎松を三河の寺に落とすことに。なんやかんやの末、奥山六左衛門らと出発。

関口から、井伊谷城代は虎松の首と引き替えと伝えられる政次。愕然とするも、すぐに笑顔を作って「お安いご用にございます」と答える政次の心中やいかに。さて、この条件をどうやってクリアするのやら……。ちなみに、このシーンはノベライズにはありません。

直虎は尼コスプレで龍潭寺に潜入。そこへまたもタイミング良く虎松捜索隊が乗り込んできて、虎松の代わりに捕らえられます。

そしてまた、ノベライズにはないシーンが挿入されます。血塗られた短刀を手にした政次。その前には、虎松と同年代の子が横たわっている……。虎松の身代わりに、どこかの子の首を差し出すつもりですか。さすがの政次も、無血では収められなかったか。

周りにいる小野の家臣にやらせず、自ら手を下して「地獄には俺が行く」というところに、政次なりの覚悟や苦しみが表れている悲痛なシーンです。

そして、直虎に虎松の首実検をさせることに。そして首桶のふたオープン。政次のキラーパスをネゴなしで生かせるのか、直虎。と心配していましたが、「虎松君は疱瘡(天然痘)を患っておいででしたので、うんぬん」というセリフで解決。井伊家の者にとっては分かりやすい嘘で、身代わりの首だということは明白。次は直虎さんの演技力が試されます。

首を抱き、経を上げる直虎。演技というより、虎松の代わりに殺された子への本心からの行動だったのでしょう。疱瘡を患った首を抱く直虎を目の当たりにした関口は信じるしかありません。

そして政次は井伊谷城代に。無表情で酒をあおる政次が、ただただ痛ましい。

これで史実というか従来の定説である政次による井伊谷乗っ取りが描かれたわけですが、直虎と政次は無言の連携が成立しており、政次の真意は直虎にも伝わっています。この後、徳川に捕らえられた政次が処刑されるには、直虎が政次を助命できない理由が必要になります。さて、これをどう料理してくるのか……。

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