大河ドラマ「軍師官兵衛」 第37回 城井谷の悲劇 感想
カテゴリ:軍師官兵衛
日時:2014/09/14 22:10
今回は、黒田家の黒歴史として名高い城井鎮房の謀殺事件。官兵衛&黒田家の行為を正当化するのか、しないのか、以前から大注目のエピであります。結局、秀吉の圧力&長政の暴走という、予想通りの陳腐な展開。いい点もありましたが。
今回の主役である長政君は、誰が見ても罠な城井谷に突撃して視聴者を苦笑いさせます。まぁ、長政じゃ仕方がない。で、隘路に伏兵という、教科書の1ページ目に載りそうな基本中の基本的な戦術に引っ掛かります。当然の事態なのに、ビックリしている長政が実にほほえましい。
この戦いで、大野小弁(「しょうべん」じゃなくて「こべん」)が長政を庇って討ち死にするわけですが、全く印象に残らないおざなりな演出。ノベライズでは、長政を探す鎮房に、長政が打って出て斬り死にしようとして又兵衛に止められる一幕があるのですが、ドラマではカット。そのまま生還場面へ。
九郎右衛門「バカ若がお戻りです」 平伏するバカもとい若。月代のしわがズラ感丸出しで気になります。ドラマスタッフは気にならないのかな。で、人生経験も実戦経験も足りない長政に、城井谷攻略プランを丸投げする官兵衛。
そして隆景、恵瓊の前で策を披露させられる長政。このメンツで口頭試問とは。ちょっと同情します。が、長政が語ったのは実際に官兵衛がやった付城で兵站を分断するプラン。史実なんですから、正解、採用されるのは当たり前です。
付城で城井谷を封じ込めつつ周囲の国人衆を制圧、宇都宮を孤立状態にして、ここで出てきたのが安国寺AK。和睦交渉といいつつ、事実上は黒田に下れという降伏勧告。ただし本領安堵保証。それとも伊予に行く? と、AKスマイルでマイルドに脅しを掛ける暗黒寺。この人はちゃんと交渉をやっているように見えるのに、どうして官兵衛が軍使に立つとチンピラが恫喝しているだけになってしまうのか。
天正15年12月、秀吉の命令通り年内に和議成立でめでたしめでたし。
AKは大坂のゴールデンティールームで顛末をご報告。官兵衛の不手際に不満をもらす秀吉に、「そもそも本領安堵を反故にしたせいだよね」とナイスフォローの旧官兵衛。そして宇都宮を家臣にしたというAKの報告に対する秀吉の反応が、ノベライズとドラマでは異なります。
秀吉「わしの命に逆らった男を、官兵衛は召し抱えたというのか!」
というセリフは同じですが、ノベライズは「秀吉は激しい剣幕でいきりたった」と分かりやすく怒りを表現。ドラマでは「愉快じゃ」と大笑しながら実は怒っているという、ちょっと深い演出。「笑いながら怒る男」って秀吉の十八番ですしね。
天正16年春、中津城へお引っ越し。降伏時13歳。年が明けたから14歳の鶴が皿を割り、福が激しく叱責。すると、宇宙人たちがタメ口でフォロー。変な場面です。
鶴は人質とはいえ家老&大平城代の「姫」。福は城主の正室光付きとはいえ、ただの侍女。身分が全然違います。福ごときが偉そうな口をきけるわけがありません。ケチが家風の黒田家ゆえ、居城の引っ越しともなれば人質の姫も駆り出すかもしれませんが、さすがに家老の姫を侍女扱いするわけがない。時代劇なんですから、「身分の別」はしっかりやっていただきたい。
まぁ、城主の嫡男の妻の侍女ごときが、帝の補弼者たる関白殿下に「いつまで待たせるのか」とクレームを入れるなどという、トンデモドラマですから仕方がないか。ノベライズには、このクソ侍女のセリフはないんですけどね。現場の無能どもが勝手に入れたのかな。
家老&城代たる自分の娘が侍女のようにこき使われ、光の侍女ごときに叱責されるという屈辱を受けているとは夢にも思わない鎮房は、何だか今の境遇にすっかり納得し、城井谷で過ごせる幸せを満喫中。
鎮房「黒田のおかげかもしれぬ」
官兵衛に会った人が、ことごとく感謝してしまうという妙な病に鎮房も感染してしまいました。感染といえば……鎮房も官兵衛に唾をかけられてました。そうか、あの時……。謀殺された鎮房が、「官兵衛に会えて良かった」と言いながら死ぬんじゃないかと心配です。
ハッピーになっちゃった鎮房をやぱり許せない秀吉は、官兵衛に宇都宮を討てとメールを送信。いまだにミスキャスト感がぬぐえない善助が説得に赴くも、全然聞き入れられません。
そうこうしているうちに、肥後一揆討伐の援軍として下向してきた清正、正則から事情を聞かされる長政。こうして長政暴走のお膳立て完了。
鎮房を呼び出す長政。鎮房を招き入れた一室に侍るのは、吉田又介と太兵衛の弟、野村太郎兵衛。
ここからのシーンは、演技、演出ともに緊張感があって非常に素晴らしかった。やればできるじゃないか。
酒肴が用意される中、目や顔の動きだけで警戒感を高めていく様子を表現する村田雄浩、うまいなぁ。さらに、しゃくをする手が震えているのを見て、さらに警戒する鎮房。特に名前は出ませんでしたが、「しゃくをして酒をあふれさせる」役は吉田又介。ここで野村太郎兵衛が斬り掛けるはずなのですが、ドラマではまだ。酒を鎮房に飲ませます。
「毒など入っておらん」という長政の顔が既に怖い。そして、震えながらも飲み干す鎮房。松坂桃李もがんばったじゃないですか。
そこから屏風をどかして太刀を取り出し……のくだりはテンポが悪くて残念でしたが、それを除けば鎮房殺害まで良シーン。一線を越えちゃった長政の表情も良かったのですが、やはり村田雄浩の芸達者ぶりが際立っていました。
2014年 大河ドラマ「軍師官兵衛」キャスト(配役)
もご利用ください。
今回の主役である長政君は、誰が見ても罠な城井谷に突撃して視聴者を苦笑いさせます。まぁ、長政じゃ仕方がない。で、隘路に伏兵という、教科書の1ページ目に載りそうな基本中の基本的な戦術に引っ掛かります。当然の事態なのに、ビックリしている長政が実にほほえましい。
この戦いで、大野小弁(「しょうべん」じゃなくて「こべん」)が長政を庇って討ち死にするわけですが、全く印象に残らないおざなりな演出。ノベライズでは、長政を探す鎮房に、長政が打って出て斬り死にしようとして又兵衛に止められる一幕があるのですが、ドラマではカット。そのまま生還場面へ。
九郎右衛門「バカ若がお戻りです」 平伏するバカもとい若。月代のしわがズラ感丸出しで気になります。ドラマスタッフは気にならないのかな。で、人生経験も実戦経験も足りない長政に、城井谷攻略プランを丸投げする官兵衛。
そして隆景、恵瓊の前で策を披露させられる長政。このメンツで口頭試問とは。ちょっと同情します。が、長政が語ったのは実際に官兵衛がやった付城で兵站を分断するプラン。史実なんですから、正解、採用されるのは当たり前です。
付城で城井谷を封じ込めつつ周囲の国人衆を制圧、宇都宮を孤立状態にして、ここで出てきたのが安国寺AK。和睦交渉といいつつ、事実上は黒田に下れという降伏勧告。ただし本領安堵保証。それとも伊予に行く? と、AKスマイルでマイルドに脅しを掛ける暗黒寺。この人はちゃんと交渉をやっているように見えるのに、どうして官兵衛が軍使に立つとチンピラが恫喝しているだけになってしまうのか。
天正15年12月、秀吉の命令通り年内に和議成立でめでたしめでたし。
AKは大坂のゴールデンティールームで顛末をご報告。官兵衛の不手際に不満をもらす秀吉に、「そもそも本領安堵を反故にしたせいだよね」とナイスフォローの旧官兵衛。そして宇都宮を家臣にしたというAKの報告に対する秀吉の反応が、ノベライズとドラマでは異なります。
秀吉「わしの命に逆らった男を、官兵衛は召し抱えたというのか!」
というセリフは同じですが、ノベライズは「秀吉は激しい剣幕でいきりたった」と分かりやすく怒りを表現。ドラマでは「愉快じゃ」と大笑しながら実は怒っているという、ちょっと深い演出。「笑いながら怒る男」って秀吉の十八番ですしね。
天正16年春、中津城へお引っ越し。降伏時13歳。年が明けたから14歳の鶴が皿を割り、福が激しく叱責。すると、宇宙人たちがタメ口でフォロー。変な場面です。
鶴は人質とはいえ家老&大平城代の「姫」。福は城主の正室光付きとはいえ、ただの侍女。身分が全然違います。福ごときが偉そうな口をきけるわけがありません。ケチが家風の黒田家ゆえ、居城の引っ越しともなれば人質の姫も駆り出すかもしれませんが、さすがに家老の姫を侍女扱いするわけがない。時代劇なんですから、「身分の別」はしっかりやっていただきたい。
まぁ、城主の嫡男の妻の侍女ごときが、帝の補弼者たる関白殿下に「いつまで待たせるのか」とクレームを入れるなどという、トンデモドラマですから仕方がないか。ノベライズには、このクソ侍女のセリフはないんですけどね。現場の無能どもが勝手に入れたのかな。
家老&城代たる自分の娘が侍女のようにこき使われ、光の侍女ごときに叱責されるという屈辱を受けているとは夢にも思わない鎮房は、何だか今の境遇にすっかり納得し、城井谷で過ごせる幸せを満喫中。
鎮房「黒田のおかげかもしれぬ」
官兵衛に会った人が、ことごとく感謝してしまうという妙な病に鎮房も感染してしまいました。感染といえば……鎮房も官兵衛に唾をかけられてました。そうか、あの時……。謀殺された鎮房が、「官兵衛に会えて良かった」と言いながら死ぬんじゃないかと心配です。
ハッピーになっちゃった鎮房をやぱり許せない秀吉は、官兵衛に宇都宮を討てとメールを送信。いまだにミスキャスト感がぬぐえない善助が説得に赴くも、全然聞き入れられません。
そうこうしているうちに、肥後一揆討伐の援軍として下向してきた清正、正則から事情を聞かされる長政。こうして長政暴走のお膳立て完了。
鎮房を呼び出す長政。鎮房を招き入れた一室に侍るのは、吉田又介と太兵衛の弟、野村太郎兵衛。
ここからのシーンは、演技、演出ともに緊張感があって非常に素晴らしかった。やればできるじゃないか。
酒肴が用意される中、目や顔の動きだけで警戒感を高めていく様子を表現する村田雄浩、うまいなぁ。さらに、しゃくをする手が震えているのを見て、さらに警戒する鎮房。特に名前は出ませんでしたが、「しゃくをして酒をあふれさせる」役は吉田又介。ここで野村太郎兵衛が斬り掛けるはずなのですが、ドラマではまだ。酒を鎮房に飲ませます。
「毒など入っておらん」という長政の顔が既に怖い。そして、震えながらも飲み干す鎮房。松坂桃李もがんばったじゃないですか。
そこから屏風をどかして太刀を取り出し……のくだりはテンポが悪くて残念でしたが、それを除けば鎮房殺害まで良シーン。一線を越えちゃった長政の表情も良かったのですが、やはり村田雄浩の芸達者ぶりが際立っていました。
2014年 大河ドラマ「軍師官兵衛」キャスト(配役)
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