大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」 第10回 わかれ
カテゴリ:江~姫たちの戦国~
日時:2011/03/21 00:07
今回良かった点は、毎回トンチキな言動を繰り広げた戦国最強クラスのさげまん市が画面から消えてくれたことです。まぁ、「母は(ナレーターとなって)見守っておる」とは言ってましたが、ストーリーに絡まなければどうでもいいです。「保奈美無双」をやらかしそうな悪寒はありますが……。
あらためて市を振り返ってみると、この人は本当に縁起が悪い。嫁いだ浅井・柴田の2家を滅亡させています。市の責任ではないのでしょうが、今回の大河ドラマに限って言えば、市にもかなり責任がありそうです。この人、とにかく自身の役目を果たしていない! 戦国モノを女性視点で描くと、とかく「女は犠牲者」的な話になりがちです。「好きでもない男に嫁がされる」なんてのがその典型ですね。が、「好きでもない女を娶らされる」男の身にもなっていただきたい。「姫=美女」が成立するのはドラマだけ(「風林火山」の両津姫とか、例外アリ)。アレ(自粛)な女性を送り込まれて閉口した殿様も多かったはず。ま、男は側室が持てますから、女性とイコールだとは申しませんが。
そもそも、政略結婚で他家に嫁ぐ女性は両家の架け橋となる外交官。「女性にしか務まらない」重要な役目です。選択の自由がなく、役目を押しつけられるのは不満でしょうが、当時の男もまたそれぞれの役目を強制されていました。
大名といえど、器量が足りなければ家臣に離反されたり隠居させられたり殺されたり。有力家臣に専横されちゃったり。より強い大名の盾となって働かされたり、子どものときは人質になったり。家臣は家臣でさまざまなストレスを抱えていたはず。男女同権だったとは思いませんが、男も女性も、それなりに与えられた役目・役割に縛られて生きていたのではないでしょうか。現代ですら、どれだけの人が自由に生きられますかね?
第1回で、市は織田家のためにと言って浅井に嫁ぎました。当時の女性に与えられ、期待された役割を果たそうという気構えが見えて感心しました。とはいえ長政の離反を防げませんでした。市の責任とはいいませんが、彼女の外交官としての任務は失敗です。彼女の役目は、長政を織田方につなぎ止めておくことだったのですから。
浅井滅亡後は、「肩身が狭い」とほざきつつ、農民が一生着られない着物を着ておいしいものを食べ、香を楽しむなど、贅沢三昧。そんなに織田が憎いなら、織田の庇護を離れて自分で生きればいいものを、実に見苦しい。
娘たちの酷い振る舞いの数々を見る限り、躾も満足にできなかったようです。母親としても失格。
勝家を勝たせるために「武士の心で嫁ぐ」(笑)とほざいて嫁いだ後も、娘たちと一緒になって勝家の足を引っ張り続ける始末。とんでもない疫病神です。
このドラマの市は、高慢・自己中かつ完全に無能な女性でした。この人、現代視点でも役立たずでイヤな女でしょうね。こんな不快な女、どんなに美人でも近づきたくないな。
で、今回のストーリーから。賤ヶ岳は対陣膠着状態からスタート。
「天地人」の信長に代わり、戦国評論家状態の家康。伊賀者を大活用しているのか、すごい情報力です。柴田方(佐久間盛政)が大岩山を落としたことまでつかんでいます。
秀吉が信孝の挙兵に対応するため美濃に動いたのが4月17日。羽柴本隊の木ノ本離脱に呼応して佐久間盛政らが大岩山を落としたのが4月19日。家康が知っていたのはこの時点の戦況です。大垣城にいた秀吉が木ノ本に戻ったのが4月20日なので、家康の情報収集能力はほぼリアルタイム。佐久間盛政あたりがTwitterでもやってたのか?「大岩山なう」
特に前田利家の離反もなく、七本槍の活躍もなく、秀吉の美濃返しだけで賤ヶ岳の戦いは決着。賤ヶ岳の戦いに関しては「利家とまつ」の方がそれなりにちゃんとした描写でしたねぇ。秀吉に見方するよう利家に諭す勝家、前田家臣団による利家強制連行撤退など、トンデモ描写も多々ありましたが。
北ノ庄城に戻った勝家はしょんぼりモード。もらったお守りをリターンしようとします。それを押し戻す市。「これはいくさに勝つようにとお渡ししたもの」って、割れたはんこはどう見ても呪いアイテムです。本当にありがとうございました。そのはんこは取り出して、グレート義太夫袋だけ受け取る勝家。呪いアイテムを手放すことに成功しましたが、もう手遅れです。
このブロークン天下布武を見ていると、「義経」の屏風や「風林火山」の摩利支天ペンダントを思い出します。勝家から市に戻されたブロークン天下布武、次の犠牲者は誰に……。
死を決意した市は、不可解な理屈をこねて自己正当化を続けます。
「女のいくさは生きること」(キリッ)と信長に大見得を切りながら、「いくさは終わっていた」と言って死を選んだ自分を肯定(えー?)。この理屈が通るなら、どんな前言もひっくり返せますね。
母親失格なのは以前からなので驚きませんが、育児放棄して娘たちを残していくことはどう正当化するつもりでしょう。この理屈もスゴイ。
「役目は終わった。そなたたちは十分に大きゅう、美しゅう成長した」
ビジュアル上、「十分に大きい」には同意しますが、実際には14歳、13歳、10歳の小娘です。単にそう見えないだけです。時代的には十分大人扱いされる歳ですが、後ろ盾もなく、嫁ぎ先の手当もない状態で放り出していいものか。「娘たちに手を出すな」というメールを三成に託しますが、結局、三姉妹は秀吉の政略にいいように使われます。これも育児放棄した市の責任。
史実の市も三姉妹を残して自害しているので、行動自体は否定しません。が、ドラマ的にもっと納得感のある心情描写やセリフが欲しかったところ。2人の息子を持つ身としてはどうしても、娘を残して死ぬという決断をうまく消化できないのです。私なら「この子たちが大きくなるまで何があっても死ねない」と思ってしまいます。
そして形見分け。すぐに短刀を突きつける武闘派の茶々には長政の短刀。江には、あのブロークン天下布武。主人公補正があるので、江は呪いの影響は受けません。江の手から他者に渡ったときは要注意です。これも、割れているとはいえ信長由来の品と思えば値打ちもんです。
そして初は……市の髪を縛っていた「紐」。えっ、それだけ?
このドラマの初は本当にかわいそうな子です。
北ノ庄城の最後が近づいてきました。宴会シーンのときにちらっと映ったブラックパウダー。城内に油をまいているときにも、黒い粉が詰まった箱がこれ見よがしに映されます。これはもしや……。
ついに火が放たれて、炎上する天守最上部。かなり火が回っているようだけど、まだかな……。そろそろ……?
崩れ落ちる天守。
……あれは火薬じゃなかったのか。何であんなカットを入れたんだろう?
さて、ここまでは「天地人」級のクオリティ(実際、「天地人」と比較するレベルのドラマが作られるとは思いもしなかったけど)で「悲惨」の一言でしたが、言ってみればここまでは序章のようなもの。江にとっては次回からが本当の始まりです。ここから盛り返せるのか、「天地人」級あるいはそれ以下のスーパー失敗作に終わるのか。いろいろな意味で楽しみです。
・大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」キャスト(配役)
・大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」 三姉妹年齢年表
も第10回に合わせて更新しました。よろしければご利用ください。
あらためて市を振り返ってみると、この人は本当に縁起が悪い。嫁いだ浅井・柴田の2家を滅亡させています。市の責任ではないのでしょうが、今回の大河ドラマに限って言えば、市にもかなり責任がありそうです。この人、とにかく自身の役目を果たしていない! 戦国モノを女性視点で描くと、とかく「女は犠牲者」的な話になりがちです。「好きでもない男に嫁がされる」なんてのがその典型ですね。が、「好きでもない女を娶らされる」男の身にもなっていただきたい。「姫=美女」が成立するのはドラマだけ(「風林火山」の両津姫とか、例外アリ)。アレ(自粛)な女性を送り込まれて閉口した殿様も多かったはず。ま、男は側室が持てますから、女性とイコールだとは申しませんが。
そもそも、政略結婚で他家に嫁ぐ女性は両家の架け橋となる外交官。「女性にしか務まらない」重要な役目です。選択の自由がなく、役目を押しつけられるのは不満でしょうが、当時の男もまたそれぞれの役目を強制されていました。
大名といえど、器量が足りなければ家臣に離反されたり隠居させられたり殺されたり。有力家臣に専横されちゃったり。より強い大名の盾となって働かされたり、子どものときは人質になったり。家臣は家臣でさまざまなストレスを抱えていたはず。男女同権だったとは思いませんが、男も女性も、それなりに与えられた役目・役割に縛られて生きていたのではないでしょうか。現代ですら、どれだけの人が自由に生きられますかね?
第1回で、市は織田家のためにと言って浅井に嫁ぎました。当時の女性に与えられ、期待された役割を果たそうという気構えが見えて感心しました。とはいえ長政の離反を防げませんでした。市の責任とはいいませんが、彼女の外交官としての任務は失敗です。彼女の役目は、長政を織田方につなぎ止めておくことだったのですから。
浅井滅亡後は、「肩身が狭い」とほざきつつ、農民が一生着られない着物を着ておいしいものを食べ、香を楽しむなど、贅沢三昧。そんなに織田が憎いなら、織田の庇護を離れて自分で生きればいいものを、実に見苦しい。
娘たちの酷い振る舞いの数々を見る限り、躾も満足にできなかったようです。母親としても失格。
勝家を勝たせるために「武士の心で嫁ぐ」(笑)とほざいて嫁いだ後も、娘たちと一緒になって勝家の足を引っ張り続ける始末。とんでもない疫病神です。
このドラマの市は、高慢・自己中かつ完全に無能な女性でした。この人、現代視点でも役立たずでイヤな女でしょうね。こんな不快な女、どんなに美人でも近づきたくないな。
で、今回のストーリーから。賤ヶ岳は対陣膠着状態からスタート。
「天地人」の信長に代わり、戦国評論家状態の家康。伊賀者を大活用しているのか、すごい情報力です。柴田方(佐久間盛政)が大岩山を落としたことまでつかんでいます。
秀吉が信孝の挙兵に対応するため美濃に動いたのが4月17日。羽柴本隊の木ノ本離脱に呼応して佐久間盛政らが大岩山を落としたのが4月19日。家康が知っていたのはこの時点の戦況です。大垣城にいた秀吉が木ノ本に戻ったのが4月20日なので、家康の情報収集能力はほぼリアルタイム。佐久間盛政あたりがTwitterでもやってたのか?「大岩山なう」
特に前田利家の離反もなく、七本槍の活躍もなく、秀吉の美濃返しだけで賤ヶ岳の戦いは決着。賤ヶ岳の戦いに関しては「利家とまつ」の方がそれなりにちゃんとした描写でしたねぇ。秀吉に見方するよう利家に諭す勝家、前田家臣団による利家強制連行撤退など、トンデモ描写も多々ありましたが。
北ノ庄城に戻った勝家はしょんぼりモード。もらったお守りをリターンしようとします。それを押し戻す市。「これはいくさに勝つようにとお渡ししたもの」って、割れたはんこはどう見ても呪いアイテムです。本当にありがとうございました。そのはんこは取り出して、グレート義太夫袋だけ受け取る勝家。呪いアイテムを手放すことに成功しましたが、もう手遅れです。
このブロークン天下布武を見ていると、「義経」の屏風や「風林火山」の摩利支天ペンダントを思い出します。勝家から市に戻されたブロークン天下布武、次の犠牲者は誰に……。
死を決意した市は、不可解な理屈をこねて自己正当化を続けます。
「女のいくさは生きること」(キリッ)と信長に大見得を切りながら、「いくさは終わっていた」と言って死を選んだ自分を肯定(えー?)。この理屈が通るなら、どんな前言もひっくり返せますね。
母親失格なのは以前からなので驚きませんが、育児放棄して娘たちを残していくことはどう正当化するつもりでしょう。この理屈もスゴイ。
「役目は終わった。そなたたちは十分に大きゅう、美しゅう成長した」
ビジュアル上、「十分に大きい」には同意しますが、実際には14歳、13歳、10歳の小娘です。単にそう見えないだけです。時代的には十分大人扱いされる歳ですが、後ろ盾もなく、嫁ぎ先の手当もない状態で放り出していいものか。「娘たちに手を出すな」というメールを三成に託しますが、結局、三姉妹は秀吉の政略にいいように使われます。これも育児放棄した市の責任。
史実の市も三姉妹を残して自害しているので、行動自体は否定しません。が、ドラマ的にもっと納得感のある心情描写やセリフが欲しかったところ。2人の息子を持つ身としてはどうしても、娘を残して死ぬという決断をうまく消化できないのです。私なら「この子たちが大きくなるまで何があっても死ねない」と思ってしまいます。
そして形見分け。すぐに短刀を突きつける武闘派の茶々には長政の短刀。江には、あのブロークン天下布武。主人公補正があるので、江は呪いの影響は受けません。江の手から他者に渡ったときは要注意です。これも、割れているとはいえ信長由来の品と思えば値打ちもんです。
そして初は……市の髪を縛っていた「紐」。えっ、それだけ?
このドラマの初は本当にかわいそうな子です。
北ノ庄城の最後が近づいてきました。宴会シーンのときにちらっと映ったブラックパウダー。城内に油をまいているときにも、黒い粉が詰まった箱がこれ見よがしに映されます。これはもしや……。
ついに火が放たれて、炎上する天守最上部。かなり火が回っているようだけど、まだかな……。そろそろ……?
崩れ落ちる天守。
……あれは火薬じゃなかったのか。何であんなカットを入れたんだろう?
さて、ここまでは「天地人」級のクオリティ(実際、「天地人」と比較するレベルのドラマが作られるとは思いもしなかったけど)で「悲惨」の一言でしたが、言ってみればここまでは序章のようなもの。江にとっては次回からが本当の始まりです。ここから盛り返せるのか、「天地人」級あるいはそれ以下のスーパー失敗作に終わるのか。いろいろな意味で楽しみです。
・大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」キャスト(配役)
・大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」 三姉妹年齢年表
も第10回に合わせて更新しました。よろしければご利用ください。