NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」 第4回 日清開戦
カテゴリ:坂の上の雲
日時:2009/12/20 23:37
今回の見所は、ずばり戦闘シーン。陸戦も艦上の描写も迫力があって大変よろしい。サラウンド環境で音量大きめにして見ると、サイコーである。NHK、がんばった。一方、原作にはないオリジナル部分でボロがボチボチ出てきた。最近の大河ドラマほどヒドくないのが救いだが……。
やはり第3回ラストの高陞号撃沈事件は、第4回への引きであったか。緊張感があってよい演出だった。実際の東郷平八郎は、あのとき国際法を調べ直すなど、慎重に慎重を重ねるような対応をしているのだが、それをドラマで再現したら間延びするしねぇ。
欲を言えば、前回砲撃シーンを入れず、「攻撃か、攻撃回避か」の緊迫感をギリギリまで引っ張った方がよかったような気もするが……。ま、史実や原作を知っている人にとっては無意味か。
石坂浩二の山本権兵衛は合っていたが、山本と東郷のシーンは団長がヘタすぎてツラかったな。
緊張感のあるシーンといえば、小村寿太郎 vs 李鴻章(ATOKは一発で変換できるんだな)のくだりもよかった。竹中直人って、何をやっても彼のアクが出てしまうので正直イヤなのだが、今回はまぁまぁアクは抑え気味だったかな。悪くない。でも若干シュトレーゼマンっぽかった気もする。基本的に、竹中直人って出オチキャラなんだよなぁ……。
袁世凱……この役者、よく見つけてきたなぁ。笑ってしまった。 さて、まずは陸軍パート。
遼東半島行軍シーン(ロケ地:内モンゴル)は寒そ-。役者さん&スタッフ、お疲れ様です。
で、第二軍司令部。「大山巌が米倉斉加年ってのはどうだろう?」と不安を感じていたが、なかなかハマっていた。逆に、柄本明の乃木希典はちょっとなぁ……。もっと、ただ黙っているだけでも人を感動させるような人格者っぽいオーラを出さないと、司馬遼版乃木は単なる無能者で終わってしまうぞ。あの場面で部署を志願するようなタイプでもないような気がするんだが、どうだろう。
この軍議で決まった旅順攻撃に先立ち、水師営から出てきた敵と秋山好古の遭遇戦が発生。戦闘シーン、がんばってるじゃないか。サラウンドで砲撃音も大迫力だ。実にすばらしい。
完全に伊集院少尉から脱却した阿部寛だが、今度は不識庵状態。かっこいいが、敵陣を中央突破しそうな勢いで笑った。
NHKの心意気に感動したのもつかの間、従軍記者子規のパートにがっかりさせられた。安っぽいね、実に。
パーフェクトな軍隊はないだろうし、この程度で「左翼っぽい」とか言うつもりもないんだが、とにかく「曹長」(役名なし)のステレオタイプっぷりには失笑するしかない。「悪い軍隊」の象徴ですか? こういうタイプの軍人描写は見飽きたよ。このためだけに森本レオをキャスティングしたのには驚かされたが。
子規の描写は、反戦主義や人道主義というより中国人の態度に戸惑いを覚えているだけ、という感じなのでまぁ悪くはないと思う。ただ、実際の子規はノリノリで戦争を賛美してたってことを考慮すると、現代感覚的に美化しすぎ。「曹長」に何の疑問も抱かずに戦地を満喫してたかもしれないぞ。
もう1つ、司馬遼太郎がくどいほど書いていたのが、当時の日本軍が国際法を遵守しようと涙ぐましいまでの努力をしていたという点。とにかく、日本軍は「外部の目」に非常に神経質になっていたのである。こうした意識の低い軍人もいたかもしれないが、従軍記者が見ている前で物資徴発とかするかね。
ここで森林太郎(鴎外)が出てきたのは、ムリにでも歴史上の人物を絡めたいという思惑がのぞいて興ざめ。鴎外が脚気に言及するところは笑うところか? 鴎外の言う「維新の押しつけ」とかって、当時の感覚としてどうだろう? 彼のセリフは、全般的に現代的な視点が入り込んでいるように感じられて、イマイチ話に入り込めなかった。
次に海軍パート。
花田兵曹、死亡フラグ立てすぎだ。さて、一体どこで? と思ったら威海衛か。ってことは、黄海海戦はスルーですか。残念。
戦闘シーンは音、映像ともに迫力があり、これはこれでよかったし気合いが感じられたが場面はすべて筑紫艦上で終始。『男たちの大和』みたいだった。本当に見たいのは艦隊戦なんだが……日本海海戦は大丈夫だよね?
威海衛の戦いは、筑紫艦上で血しぶきが上がっているうちに、日本側の勝利に終わる。丁汝昌と伊東祐亨のくだりは、鴎外のセリフでねじ曲げられた形で語られるだけで終わってしまった。伊東祐亨の対応とか、感動的な部分なんだけどなぁ。何で親切の押し売りみたいな言い方するかなぁ。残念だね。
ああ、日本側が勝っているような描写がまったくないままに、日清戦争は終わった模様。好古撤退や筑紫ボッコボコのシーンだけ見たら、日本負けてるようにしか見えないけどな。こうして、連合艦隊司令長官 伊東祐亨は登場せず、ということに。残念。
真之が「軍人は向いちょらん」と言い出すのは、原作にもあるのでNHKの持病である「薄っぺらい反戦思想」ではない。けど、ムリに東郷と絡ませなくっていいって。
キャスト
主人公と家族
秋山好古(1859-1930):阿部寛
秋山真之(1868-1918):本木雅弘
正岡子規(1867-1902):香川照之
正岡八重(1845-1927):原田美枝子
正岡律(1870-1941):菅野美穂
子規関係者
陸羯南(1857-1907):佐野史郎
海軍関係者
山本権兵衛(1852-1933):石坂浩二
東郷平八郎(1847-1934):渡哲也
広瀬武夫(1868-1904):藤本隆宏
陸軍関係者
大山巌(1842-1916):米倉斉加年
森鴎外(1862-1922):榎木孝明
乃木希典(1849-1912):柄本明
伊地知幸介(1854-1917):村田雄浩
政府関係者
伊藤博文(1841-1909):加藤剛
陸奥宗光(1844-1897):大杉漣
小村寿太郎(1855-1911):竹中直人
外国人
李鴻章(1823-1901):任大恵
袁世凱(1859-1916):薜勇
丁汝昌(1836-1895):徐文彬
そのほか
曹長:森本レオ
やはり第3回ラストの高陞号撃沈事件は、第4回への引きであったか。緊張感があってよい演出だった。実際の東郷平八郎は、あのとき国際法を調べ直すなど、慎重に慎重を重ねるような対応をしているのだが、それをドラマで再現したら間延びするしねぇ。
欲を言えば、前回砲撃シーンを入れず、「攻撃か、攻撃回避か」の緊迫感をギリギリまで引っ張った方がよかったような気もするが……。ま、史実や原作を知っている人にとっては無意味か。
石坂浩二の山本権兵衛は合っていたが、山本と東郷のシーンは団長がヘタすぎてツラかったな。
緊張感のあるシーンといえば、小村寿太郎 vs 李鴻章(ATOKは一発で変換できるんだな)のくだりもよかった。竹中直人って、何をやっても彼のアクが出てしまうので正直イヤなのだが、今回はまぁまぁアクは抑え気味だったかな。悪くない。でも若干シュトレーゼマンっぽかった気もする。基本的に、竹中直人って出オチキャラなんだよなぁ……。
袁世凱……この役者、よく見つけてきたなぁ。笑ってしまった。 さて、まずは陸軍パート。
遼東半島行軍シーン(ロケ地:内モンゴル)は寒そ-。役者さん&スタッフ、お疲れ様です。
で、第二軍司令部。「大山巌が米倉斉加年ってのはどうだろう?」と不安を感じていたが、なかなかハマっていた。逆に、柄本明の乃木希典はちょっとなぁ……。もっと、ただ黙っているだけでも人を感動させるような人格者っぽいオーラを出さないと、司馬遼版乃木は単なる無能者で終わってしまうぞ。あの場面で部署を志願するようなタイプでもないような気がするんだが、どうだろう。
この軍議で決まった旅順攻撃に先立ち、水師営から出てきた敵と秋山好古の遭遇戦が発生。戦闘シーン、がんばってるじゃないか。サラウンドで砲撃音も大迫力だ。実にすばらしい。
完全に伊集院少尉から脱却した阿部寛だが、今度は不識庵状態。かっこいいが、敵陣を中央突破しそうな勢いで笑った。
NHKの心意気に感動したのもつかの間、従軍記者子規のパートにがっかりさせられた。安っぽいね、実に。
パーフェクトな軍隊はないだろうし、この程度で「左翼っぽい」とか言うつもりもないんだが、とにかく「曹長」(役名なし)のステレオタイプっぷりには失笑するしかない。「悪い軍隊」の象徴ですか? こういうタイプの軍人描写は見飽きたよ。このためだけに森本レオをキャスティングしたのには驚かされたが。
子規の描写は、反戦主義や人道主義というより中国人の態度に戸惑いを覚えているだけ、という感じなのでまぁ悪くはないと思う。ただ、実際の子規はノリノリで戦争を賛美してたってことを考慮すると、現代感覚的に美化しすぎ。「曹長」に何の疑問も抱かずに戦地を満喫してたかもしれないぞ。
もう1つ、司馬遼太郎がくどいほど書いていたのが、当時の日本軍が国際法を遵守しようと涙ぐましいまでの努力をしていたという点。とにかく、日本軍は「外部の目」に非常に神経質になっていたのである。こうした意識の低い軍人もいたかもしれないが、従軍記者が見ている前で物資徴発とかするかね。
ここで森林太郎(鴎外)が出てきたのは、ムリにでも歴史上の人物を絡めたいという思惑がのぞいて興ざめ。鴎外が脚気に言及するところは笑うところか? 鴎外の言う「維新の押しつけ」とかって、当時の感覚としてどうだろう? 彼のセリフは、全般的に現代的な視点が入り込んでいるように感じられて、イマイチ話に入り込めなかった。
次に海軍パート。
花田兵曹、死亡フラグ立てすぎだ。さて、一体どこで? と思ったら威海衛か。ってことは、黄海海戦はスルーですか。残念。
戦闘シーンは音、映像ともに迫力があり、これはこれでよかったし気合いが感じられたが場面はすべて筑紫艦上で終始。『男たちの大和』みたいだった。本当に見たいのは艦隊戦なんだが……日本海海戦は大丈夫だよね?
威海衛の戦いは、筑紫艦上で血しぶきが上がっているうちに、日本側の勝利に終わる。丁汝昌と伊東祐亨のくだりは、鴎外のセリフでねじ曲げられた形で語られるだけで終わってしまった。伊東祐亨の対応とか、感動的な部分なんだけどなぁ。何で親切の押し売りみたいな言い方するかなぁ。残念だね。
ああ、日本側が勝っているような描写がまったくないままに、日清戦争は終わった模様。好古撤退や筑紫ボッコボコのシーンだけ見たら、日本負けてるようにしか見えないけどな。こうして、連合艦隊司令長官 伊東祐亨は登場せず、ということに。残念。
真之が「軍人は向いちょらん」と言い出すのは、原作にもあるのでNHKの持病である「薄っぺらい反戦思想」ではない。けど、ムリに東郷と絡ませなくっていいって。
キャスト
主人公と家族
秋山好古(1859-1930):阿部寛
秋山真之(1868-1918):本木雅弘
正岡子規(1867-1902):香川照之
正岡八重(1845-1927):原田美枝子
正岡律(1870-1941):菅野美穂
子規関係者
陸羯南(1857-1907):佐野史郎
海軍関係者
山本権兵衛(1852-1933):石坂浩二
東郷平八郎(1847-1934):渡哲也
広瀬武夫(1868-1904):藤本隆宏
陸軍関係者
大山巌(1842-1916):米倉斉加年
森鴎外(1862-1922):榎木孝明
乃木希典(1849-1912):柄本明
伊地知幸介(1854-1917):村田雄浩
政府関係者
伊藤博文(1841-1909):加藤剛
陸奥宗光(1844-1897):大杉漣
小村寿太郎(1855-1911):竹中直人
外国人
李鴻章(1823-1901):任大恵
袁世凱(1859-1916):薜勇
丁汝昌(1836-1895):徐文彬
そのほか
曹長:森本レオ