大河ドラマ「義経」 第14回 さらば奥州

カテゴリ:義経
日時:2005/04/10 22:43

今回は、せっかくの名場面を台無しにしてしまったねぇ。フジの大奥スペシャルは途中で中だるみがあったものの、ドラマとしては圧倒的に大河よりも面白かった。家光が死ぬシーンは泣きそうになったぞ。大河のスタッフは、ドラマの作り方を少し勉強し直してはどうか(大奥を見習えとはいわんが)。

前回ラストで最高にカッコイイ頼政を演じた丹波哲郎だが、今回の脚本や演出はその気概を十分に生かしきれていなかった。あれだけの見栄を切って挙兵しながら、今回はいきなり平氏方に追い詰められた状態からスタート。少しは頼政方が奮戦しているところを描いてやれよ。阿部知盛の降伏勧告を跳ね除けたシーンはかっこよかったが。 前回、これ以上ないほど胡散臭い大杉十郎行家を追い返した中井頼朝もついに挙兵。相変わらず小林稔侍の演技はクサいが、最近慣れてきた。政子はすっかり(一豊の妻千代とは別の意味で)賢妻ぶりが板に付いたよう。もう少しスケベ佐殿とのラブコメが見たかった気もするが。

ちょっと期待していた石橋山の合戦シーンは、あっさりスルー。B級タレントの配役で予算使い切ったっぽいし、負け戦だからしかたがないか。そして、真のガッカリシーンへと続く。

敗れた頼朝を梶原景時が助ける有名な場面。景時の先見の明と保身術、このとき受けた恩義を後に返す頼朝へと続く伏線、そして何よりも、絶体絶命の緊迫感から安堵へと移行する名場面となり得るはずだった。が、源氏方が多数隠れる穴に、景時が単身で入り込むという演出により、緊迫感はまったく失われてしまった。だって、景時1人なら袋叩きにできるだろ。むしろ、ピンチなのは景時ではないか?

頼朝のもとに行きたいというヨッシーに対し、「わしがすべて用意してやる!」と大見得を切る高橋秀衡。けどねー、この秀衡の判断はものすごく中途半端。結果論なんだけど、結果を知っている後世の人間にしか語れぬこともあろう。

武具はともかく、付けてやった兵は佐藤ブラザーズのみ。頼朝にしてみれば、所領も持たず、たったの数騎のみを従えたヨッシーは単なるごくつぶし。各地の豪族が百、千単位の兵を率いて合流している中では、ヨッシーの立場などないも同然。こうして、もともと差があった権威がさらに開くのである。

もし、秀衡が千単位の兵をヨッシーに付けてやったらどうなっていただろうか。頼朝は当然ヨッシーを警戒しただろうが、この時期の兵力付き参陣はうれしいはず。そして、ヨッシーは頼朝のもとで一定の発言力を得ることもできただろう。これにより、秀衡はヨッシーを平泉の代弁者とすることができる。平泉は頼朝に恩を売るとともに、奥州討伐の口実を与えないことになる。

ヨッシーがあまりバカなことをしなければ、源氏のナンバー2的な権威を帯びることもできたかもしれない。この場合、ヨッシーが史実どおり軍事面で活躍し続けると非常に危険な事態となる。最悪の場合、鎌倉時代版観応の擾乱発生か。源氏にとっては不幸な事態だが、平泉にとってはオーライだろう。ヨッシー自身に固有の武力がなかったことは、頼朝にとって実に幸いだった。

あの当時の状況では仕方がなかっただろうが、秀衡に先見の明があったなら、ヨッシーや平泉の運命は変わっていたかもしれない。