大河ドラマ「真田丸」 第48回 引鉄 感想

カテゴリ:真田丸
日時:2016/12/04 23:02

牢人たちの暴走による夏の陣のきっかけ、大坂城茶室跡から出土したオーパーツのフリントロック銃。そして付いたタイトルが「引鉄」(旧題:発火)。人々の勢いが計画を押し流していく過程が描かれます。信繁の発言が全てラストに向かって研ぎ澄まされていくのも今回の大きな変化といえるでしょう。

和議が成ったはずの徳川本陣(まだ茶臼山か?)に、大坂方が夜襲。が、徳川家康を驚かせたのみで、深入りせずにサクっと撤退。この引き際の良さから見て、デモンストレーション的な行動のようです。

「この夜襲でビビった家康は、翌日には京に戻るはず」と、内応者確定の織田有楽斎に打ち明ける真田信繁さん。なるほど、プチ夜襲は有楽斎を動かすためのエサでしたか。

当然、有楽斎は家康にご報告。家康は信繁の裏をかいて当日中に出立。が、「恐らく家康は我らの裏をかいて今日中に動くはず」なので、そのセンで佐助に家康暗殺命令を出す信繁。ありがちな心理戦です。 佐助は出立に際し、きりにプロポーズ。

佐助「もし無事に帰ってきたら……夫婦になってもらえませんか?」
きり「ごめんなさい」

早っ!

食い気味に速攻で拒否るきり、ひどいというか気を持たせないのはむしろいいというか……。佐助の淡い恋心も、最終回を目前にして決着しました。

あらためて、大坂城マネジャーミーティング。非正規労働者の契約解除を主張する大蔵卿局ですが、豊臣秀頼は正社員化の意志を表明。

家康のポチである有楽斎は、早速報告メールを執筆。が、書き終えたメールを渡した相手は信繁。泳がせておいた有楽斎をいよいよ排除するおつもりか。

有楽斎「わしは織田信長の実の弟。命乞いなどせぬわ!」

おお、見上げた根性。と思ったら、

有楽斎「ちと待て!」

あらら。

有楽斎「豊臣と徳川の懸け橋となるのはわししかおらぬ! それでも斬るというのなら……。斬るがよい!」
信繁「信長公が泣いておられます」
有楽斎「ちと待て」

井上順、衰えて声は出なくなってしまったものの、やはりベテラン。声がダメならダメなりの演技を見せてくれました。きめゼリフの直後のビビりっぷりなどの緩急はやはりうまい。

というわけで、大坂城の病巣の1つが排除されました。

一方、家康は京まであと5里のところでご休憩。そこへ現れた佐助によってあっさり刺殺されます。まぁ、ここで家康が死ぬわけがないので、これはアレですね。某小説&そのコミカライズのように、家康本人が死んで影武者が家康に成り代わったという超展開を持ち込まない限りは。

大坂城では、帰還した佐助がすすり泣き。失敗したことを知ったのでしょうが、そのタイミングがよく分かりません。そこへ内記が戻ってきて、「徳川家康京の二条城に入ったのは間違いないようですな」と報告。影武者疑惑→確定という流れ? 疑惑の時点で佐助が泣いていた?

私の洞察力ではドラマの描写がイマイチ分からなかったのですが、ドラマ視聴後に「ドラマ・ストーリー」を読んで、やっと理解できました。
佐助はしとめたのが影武者だったことに愕然とし、涙ながらに幸村に報告した。
つまり、刺殺した時点で影武者だったことに気付いていて、信繁にそう報告したということでしたか。

そしてついに本作のラストイヤー、慶長20年(1615年)がやってきました。

信繁は、大野治長らに新防衛プランを開陳。私が読んだり見たりした中で最もまともな精神構造を持つ治長は、信繁のプランにいたく感動。「この先、面倒は全て私が引き受ける。存分に力を尽くしてくれ」と信繁のバックアップを明言します。

まぁ、この程度ならこれまでもちょいちょい口にしていたのですが、今回はさらに踏み込んできました。

牢人たちをとどめおくことにまだ反対する大蔵卿局に、「これより母上は口を挟まないでいただきたい」「あとは秀頼公と私で全てを決めてまいります」と、かなり遅すぎですが、そもそも乳母にすぎない老女の政治介入を否定。茶々も大蔵卿局排除に同意して、ようやく留飲が下がる思いです。

発言権がさらに増した信繁は、秀頼と語らって短期プラン、中期プラン、長期プランを実行に移します。

中期プランは先に治長たちに語った、茶臼山と岡山をつなぐ防衛ラインの構築。それまで牢人たちの暴発を抑えるための短期プランが、牢人の身内出入り許可。そして長期プランが、讃岐と阿波への国替え。その端々に、信繁の心境の変化が見え隠れし始めます。

茶々「源次郎がおれば心配ない」
信繁「いつまでも私がいるとは限りません。戦場で流れ弾に当たるやもしれませぬ」

これまで口にしなかったようなことを言い出します。

この場面に唐突に同席していた千姫の態度がぎこちないのが気になります。すぐに理由は分かるのですが。

長宗我部盛親と長期プランを語り合った後、千姫に呼び止められる信繁。早くも疑問への解答が得られます。

千姫「江戸へ帰りたいのじゃ」

おお、ぶっちゃけましたね。秀頼とは仲むつまじかったといわれる千姫ですが、本ドラマではイマイチなご様子です。これで徳川秀忠が俗説通り「なぜ秀頼と一緒に死ななかった」と叱るときれいに収まるのですが、本ドラマの秀忠はそういうこと言わなそうな感じです。

この休戦期を利用して、信繁はヒゲ誠や三十郎との再会、甥たちとの面会を果たします。信繁は野戦経験者のヒゲ誠に「敵陣に馬で突き入る」ときの得物を質問。これに対し、ヒゲ誠らしくまじめだが煮え切らない回答。が、ヒントは提示されました。鉄砲は、「火縄の扱いに手間取って逆に狙い撃ち」になると。

ヒゲ誠さん、とぼけているようで、「ましてや敵の本陣になど……」というところで何か察したご様子です。そして、このドラマの信繁は、この時点で大将首(家康)を狙った的中突撃を考えていることが提示されます。

信繁が城に戻ると、作兵衛の城内耕作はまだ続行中。そして、ここで唐突にここが利休の茶室のあった場所だったとう事実が判明します。さすがに唐突だなぁ。利休存命中に茶室近くに特徴的な何かがあって、その特徴が残っていて「あれ、ここってもしかして?」と思わせてくれたらベストだったのですが……。まぁ、仮にそんな伏線が張られていても、私はきっと気付かないか忘れてしまったことでしょう。

そして、茶室だったと判明した途端、何かが出土するというタイムリーな展開。作兵衛が畑を作ったのは今日昨日のことじゃないでしょうに、なぜ今ごろ。

利休マークの箱から出てきたのは、2丁の馬上筒。毛利勝永に聞くと、「火打ち石がついていて火縄を使わずに撃つことができる。いちいち火縄に火をつける手間がかからないので馬の上からでも撃つことができる」という情報をゲット。これで、ヒゲ誠が銃の欠点として挙げた「火縄の扱いに手間取って逆に狙い撃ち」が解消されます。

もう1点、勝永のセリフから、出土したのはオーパーツであることが判明します。火縄の代わりに火打ち石を使う、つまり「フリントロック式」ということです。出土時点では分かりませんでしたが、勝永の説明や今回のラストで信繁が操作していたのは、まさしくフリントロック式でした。このフリントロック式銃は、利休存命中は

まだ発明されていない

シロモノなのです。この銃が埋められたのは利休が死んだ1591年より後ではないでしょう。マーリン・レ・ブールジョワが1610~20年ごろに発明した銃を、1591年時点で入手していた利休。恐るべし。

勝永「新しい武具ゆえ、利休は商いのめどがつくまで隠しておったのだろう」

いや、まだこの世に存在してはならぬものだったからでは?

場面は再び大坂城マネジャーミーティング。「牢人たちに暇を出せ」という家康のメールが議題。牢人たちの処遇もさることながら、備蓄の限界が問題になります。

ここで大野治房が暴走。配下の牢人に金銀などを渡してしまいます。結局、全ての牢人に褒美を配布することに。

大蔵卿局「牢人たちをこれ以上甘やかすなど!」
治長「母上の意見など求めてはおらん!」

牢人たちはもらった金銀で武具を購入。完全に戦支度をしているようにしか見えない事態になります。

治長は治房にボコられるわ、牢人たちは堀を掘り返すわ、開戦に向けて事態が一気に動きます。こうした動きを見た家康が動員命令を出し、夏の陣決定です。

信繁からのメールを読んだ真田信之は、全てを悟ります。「俺には分かる。弟は死ぬ気だ。(中略)恐らくは大御所様と刺し違えるつもりであろう」

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