大河ドラマ「真田丸」 第43回 軍議 感想

カテゴリ:真田丸
日時:2016/10/30 22:16

今回は、動き(アクション)を最小限に抑え、信繁が1人1人を説得して主張を認めさせるという会話劇。カタルシスと落胆、そして真の病巣の特定。一般ウケしそうにない回ですが、見応えはありました。

ではドラマスタート。真田信繁が大坂条に入ったことを知った真田信之は、松に京に上ってほしいと依頼します。が、松は相変わらず。「手加減してくれるんじゃないかしら」。まぁ、平常運転というか、年を取ってもブレないところはさすがです。

信之「敵陣に身内がいれば源次郎の目が曇る。源次郎の好きにさせてやりたいのです。あれは14年間このときを待っていたのです」

お兄ちゃん……。父と弟にあれだけライフを削られてなおこの優しさ(泣)。

松「書き留めて。忘れそう」

「一番前に陣を敷くな」ってことだけなんだけど……松らしい。このままこの人ボケ通す気なのか。信繁と最後の文通もあるし、最後の最後で泣かせどころが回ってくるのか……この人もまた読みにくい。

京では、徳川家康の下に片桐且元がやってきます。歓待する家康のタヌキっぷりは相変わらず。徳川への仕官を勧め、且元同意すると本多正純と呼吸ピッタリの大喜びっぷり。ここですかさず豊臣の内情に探りを入れるところが嫌らしい(褒めてます)。 家康「今の大坂条に10万の兵を養うだけの兵糧があるか? 城はどれぐらいもつ?」

逃げ道もちゃんと用意します。

家康「豊臣に義理立てしたいのであれば答えんでもよい」
家康「よう分かった。さすがは中心片桐東市正! あっぱれじゃ!」

この且元、ボケ役が多かったとはいえ馬鹿という描写ではなかったので、当然家康の本心など分かった上でのことでしょう。その上で、

且元「もって半年……」

と泣きながら答えるところが切ない。小林隆さんが且元でよかった。

そして本日のメインテーマ、軍議スタートです。少なく見積もっても20万になる徳川方をどう迎え撃つか。大蔵卿局らの意を受けた木村重成が籠城を主張します。これに後藤又兵衛、毛利勝永、長宗我部盛親、明石全登が承知。信繁だけが不承知と答え、討って出ると主張します。

大坂、京、伏見、大津、上方全てを戦場化するという信繁。

織田有楽斎「そうこう(籠城)するうちに、家康が死ぬ。それを待つ」

と、悠長な策を言い出す有楽斎。えらくのんびりした話だという気がしないでもありませんが、「結果論で言えば」意外にアリな作戦ではあります。冬の陣で本丸に大砲をブチ込まれても籠城し続けられるくらいキモが座っていれば、ですが。

信繁「考え抜いた策をろくに吟味もせずに退けられたのではやる気も起きませぬ。九度山に返ることに致す」

サクっと退出する信繁。「父上ならどうするかと考えた」というわけで、真田昌幸戦法です。
内記「はったりは真田の家風でござるぞ」

微妙に自慢にならんことを堂々と……。

軍議に戻った信繁は、あらためて出戦策の詳細を語ります。

伏見城を落として二条城に攻め込み、秀忠が京に来る前に家康の首を取る。同時に近江を押さえ、瀬田と宇治の橋を落として徳川秀忠を足止め。豊臣恩顧大名の離反を誘い、伊達、上杉に秀忠の背後を襲わせる。

信繁「負ける気が致しませぬ」

が、他の3人は籠城を支持。勝永だけが信繁を支持。「1つの策ではあるな。しかしここはやはり籠城だ」という又兵衛のセリフが、とにかく籠城前提で笑えます。

休憩中の説得で、信繁支持に回る全登と盛親。これで5人衆のうち4人が出戦策になります。さらなる信繁の主張により、大蔵卿局に釘を刺されていた重成までが信繁支持に転向。おお、重成えらいぞ。

それでも又兵衛だけが反対し続けます。その理由は、「天下の後藤又兵衛だ。天下一の城を枕に討ち死にするしかねえと思った」から。

信繁「私は勝つためにここへやって来た。死にたがっている者に用はありません」
又兵衛「勝てる訳がなかろう。俺たちは日の本中を敵に回してる。口には出さねえがみんな思ってることだろ」

あーあ、言っちゃった。

が、ポジティブシンキングを貫く信繁。「負ける気がしないのです。(中略)死にたいのなら徳川につくべきだ」

これで又兵衛さんも何かがふっきれたご様子。

又兵衛「実はな、俺も籠城はまだ早いと思ってたんだ」

恥ずかしげもなくこんなセリフが言えるとは、この人も面白いキャラのようです。

さて、今回の見所はここからです。ついに本性や本音が露呈していきます。

有楽斎「初めから申し上げておる。籠城以外にはない」
有楽斎「お主らはしょせん金で雇われた牢人たちじゃ。身の程をわきまえよ。我らの指図に従い戦っておればいいのだ」

いや、ここまでぶっちゃけちゃうと牢人たちが戦ってくれなくなりますよ?

有楽斎とは全く別の一面を見せたのが、大野治長。これは以外。

治長「ここにいるのは豊臣を守るために集った者たちでございます。我らにとってはあくまでも客人。非礼は許されません」
治長「決めるのは右大臣秀頼公でございます。あなたではござらん」

かつてここまでかっこよかった治長があっただろうか。牢人の足引っ張る係だと思っていただけに、これは予想外のキャラ設定でした。

秀頼「籠城はせぬ! 討って出よう!」

やたらと籠城を主張する大蔵卿局と有楽斎。これに従っていた者たちが、次々に信繁の主張に心を動かされて出戦に転向して逆転。不条理さが覆されるカタルシスを得たところで、ふと我に返るわけです。

討って出る? 決定? 籠城したんだけど……と。

今回の軍議を通して、何やら絆めいたものが生まれた五人衆。5人で並んでいるシーンが妙にクサいのですが、多分狙ってやってる演出でしょう。

勝永「分からぬのは、豊臣の連中は不利と分かっていてなぜあそこまで籠城にこだわる?」
又兵衛「臭うな」

一方、視聴者同様カタルシスを得て舞い上がっちゃった秀頼は、ママに得意げにご報告しているところがほほえましい。

茶々「なりませぬ」

信じられるのは真田だけ、城にとどめて監視する必要があると言い出します。

一転、籠城に決定。この40分は何だったんだという憤懣が信繁と視聴者の一体感を高めます。治長や重成は恐縮しきりで信繁に謝罪しており、心の面では信繁らとシンパシーを持っていることが分かります。有楽斎は今回の一件で、牢人を侮蔑しているものの大したことはできない小物であることが明らかに。そして、残る大蔵卿局こそが、異常に籠城にこだわり、茶々の考えをも左右してしまう存在として浮かび上がってきました。

信繁「そうと決まったからには、すぐに次の策を考えましょう」

この状態でよくもまあモチベーションを保てるものだと感心させられます。

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