大河ドラマ「真田丸」 第35回 犬伏 感想
カテゴリ:真田丸
日時:2016/09/04 22:48
今回は真田モノには欠かせない重要エピ「犬伏の別れ」です。河原綱家が前歯を折られるエピまで入れてくるなど、意気込みは感じられるのですが……。
真田家も上杉討伐に出陣することになり、上杉につくと宣言して妻たちに大坂脱出を命じます。稲は父・本多忠勝からのメールを真田昌幸に提出。真田が裏切るそぶりを見せたら知らせろと描かれているが稲は信幸の妻であると言い切ります。
徳川に近い動きをすることも多く、真田信繁と信幸が対立陣営に属したりもしましたが、ここでは真田は一枚岩に復帰。稲のエピも含めて、真田の団結っぷりを強調してます。
江戸では、徳川家康が徳川秀忠に先発を命じます。が、本多正信を付けると言われて秀忠萎え萎え。モチベーションダウンした萎忠ですが、江に叱咤されます。まさか江が出るとは思っていなかったのでオープニングのクレジットに驚きました。
何にせよ、いつかの変なドラマよりかなりまともな2人で好感が持てます。秀忠もスネてますがヒネ忠でもないしグレてもいないし。江も変なこと言い出さないし。 7月10日。大谷吉継は美濃まで進軍。そこへ、石田三成がやってきます。三成による吉継説得は、吉継が三成の佐和山城に立ち寄ったときという説もありますが、まあドラマなのでどうでもいいことです。
「勝てるか分からないがやらなければならない」と、吉継に同心を依頼する三成。熟慮した吉継は、「共に死ぬなどまっぴら」「必ず勝つ、その気概がなくてどうする」と三成を叱咤。軍略を示し、「わしがおぬしを勝たせてみせる」というところが泣かせます。
三成と吉継が大坂城に入り、アンチ徳川勢も気合が入ります。が、伏見城攻めを任されてヘコむのが俺たちの金吾君。期待を裏切らぬ残念感を醸し出します。ここで板部岡江雪斎が間者であることをカミングアウト。この時点で金吾の調略はほぼほぼ成功って感じです。肖像画にも何となく似てるし、ヘタレっぷりも素晴らしいし、今後とも浅利陽介には金吾俳優として邁進していただきたい。
そして三成は大坂にいる大名の妻女人質化計画を発動。というわけで、関ヶ原直前には必ず挿入されるお玉自害エピ開始です。阿茶局が脱出した件はドラマでも紹介されていましたが、他に黒田や山内などなど、大坂を脱出した妻女はたくさんいます。が、「何かあったら自害せよ」と細川忠興に命じられていた玉は違います。才知を巡らせてしたたかに生き残った妻女と異なり、玉は(というか細川家は)何の努力もせず、ここで犬死にです。忠興の命もあるし、夫婦仲も冷めていて厭世的になっていた説もあったりして玉を責めても仕方がないのですが、イマイチ悲劇のヒロイン扱いに同調できません。
玉は屋敷に火を放ち、キリシタンは自害できぬからと小笠原秀清に別室から槍で突かせて死亡します。なぜ別室だったかというと、忠興が嫉妬深くて家臣にも玉の顔を見られるのをきらったからとか。本ドラマでは割とスタンダードな説(通説というか、俗説というか……)通りでしたが、玉が自分で腹を突き、秀清が介錯したという説もある(この場合、秀清は同室にいたことになる)ので、ここは「ガラシャの死といえばこんな感じだよねー」くらいに思っておけばいいでしょう。
本ドラマでは、ここできりが乱入すること。豊臣秀次の死の傷をキリスト教が救い、その縁で玉に仕えることになり、奉公先の細川屋敷の煙を見て駆け付ける。と、きりを目撃者にする見事な流れができていました。
うっすらほほえみ、死を受け入れている玉。表情とか、狂信者っぽくて私は嫌いです。この薄気味悪い女を引きずり出そうとするきり。
きり「案外重い!」
こんなときも笑いを突っ込んでくるところ、俺は嫌いじゃないぜ。
そして、玉の犬死にを目撃し、抜け穴から脱出します。佐助もついてるし、これで安心です。と思ったら、佐助ともども石田方に捕まってるし。
まだ江戸にいる家康さんは、上方に不穏な動きがある(タイムラグがあるので雰囲気だけ伝わった感じか)という知らせに動揺します。「三成を暴発させるためにあえて大坂を空けた」、つまり三成の挙兵を待っていたという俗説あるいは筋書きのドラマ、小説も多いのですが、この家康さんはガチで驚いたご様子。三成の挙兵を期待していたのか、意外だったのか、家康の本心は知りようがありませんが、本ドラマのパターンは少ないので家康がどう動くのか楽しみです。
何にせよ、家康がいるのは本拠地の江戸。東西どちらにも動ける点は有利というもの。上杉と交戦状態になっていたら、話は別なのですが……。
7月19日、秀忠出陣。同日、宇喜多秀家、小早川秀秋が挙兵。
7月21日、家康出陣。この時点で秀家と秀秋の動きは伝わっていないので、会津に向けての行軍となります。
このとき、真田は犬伏(現栃木県佐野市)に布陣中。7月25日に家康が行う「小山評定」の地のちょうど真西、直線距離にして20kmってところです。江戸を出発した家康をここで待っている状態です。
そこへ、佐助が吉継の密書を持って到着。佐助がもたらした三成挙兵の知らせに昌幸は激怒します。
昌幸「早すぎるわ!」
全くだ。
昌幸は信繁と信幸を呼び出し、「最後の」親子ミーティング開始です。昌幸は戦が10年は続くと予想し、戦が続いて両陣営が疲弊したら動くという戦略を開陳します。
これに信繁が疑問を呈し、案外早く決着がつくと予想します。
信繁「どちらにもつかぬということは、どちらも敵に回すということ」
そして、昌幸の甘い見通しを初めて強く否定します。情勢を読む目が、ここで完全に逆転。信繁が成長したと言うべきか、昌幸さんが衰えたと言うべきか。信繁がつらそうに反論しているところがまた泣かせます。まぁ、昌幸さんの読みはこれまでもかなりの確率で外れてたのですが、それは忘れてあげましょう。
徳川か豊臣に賭け生き残るしかないという二者択一を迫られ、窮する3人。昌幸が何やらガサゴソやってるなと思ったら……
出た、こより!
昌幸さん、それはアカン。
次は信幸の見せ場です。
信幸「こういうことはもうよしましょう」
信幸「私は決めました、父上」
信幸が出した苦渋の決断こそ、豊臣と徳川に別れる「犬伏の別れ」プラン。これまで真田家を引っ張ってきたのは昌幸でしたが、ここでその構図が完全に崩れたことになります。長期戦になるという見通しを信繁が覆し、二者択一状態から真田家の生き残り策を出したのは信幸。真田兄弟が真田家の進むべき道を考えたわけです。豊臣と徳川に別れる策を昌幸が考えたことにしなかったところに、切なさがあります。
信幸「もし徳川が勝ったならば、俺はどんな手を使ってもお前と父上を助けてみせる」
お兄ちゃん、かっこいいい! そして、実際彼はやりましたしね。関ヶ原後の助命嘆願も泣かせてくれるに違いありません。
ちなみに、ドラマでは河原綱家がミーティングを覗きに行って昌幸に刀を投げつけられてましたが、実際に昌幸が投げたのは下駄。これが綱家にヒットして前歯が折れたのも史実だそうで、三谷らしいギャグ挿入見せかけて、実は史実再現度の高いシーンでした。
ミーティング後、昌幸は1人で飲み、兄弟は涙ながらに静かに語り合います。三成の家康襲撃事件時に兄弟が両陣営についたエピがなければ、と思わずにいられません。既に敵味方に分かれる事態が生じてしまったため、犬伏の別れが薄まった感じがするのです。ここまで、何があっても真田は1つ、敵味方に分かれるなど思いも寄らなかった、という状態でこそ、犬伏の別れが生きるというものです。
ラストシーンは、韓信を肴に再び親子3人でトーク。このスリーショットもこれが最後かと思うと感慨深い。
2016年 大河ドラマ「真田丸」キャスト(配役)
もご利用ください。
真田家も上杉討伐に出陣することになり、上杉につくと宣言して妻たちに大坂脱出を命じます。稲は父・本多忠勝からのメールを真田昌幸に提出。真田が裏切るそぶりを見せたら知らせろと描かれているが稲は信幸の妻であると言い切ります。
徳川に近い動きをすることも多く、真田信繁と信幸が対立陣営に属したりもしましたが、ここでは真田は一枚岩に復帰。稲のエピも含めて、真田の団結っぷりを強調してます。
江戸では、徳川家康が徳川秀忠に先発を命じます。が、本多正信を付けると言われて秀忠萎え萎え。モチベーションダウンした萎忠ですが、江に叱咤されます。まさか江が出るとは思っていなかったのでオープニングのクレジットに驚きました。
何にせよ、いつかの変なドラマよりかなりまともな2人で好感が持てます。秀忠もスネてますがヒネ忠でもないしグレてもいないし。江も変なこと言い出さないし。 7月10日。大谷吉継は美濃まで進軍。そこへ、石田三成がやってきます。三成による吉継説得は、吉継が三成の佐和山城に立ち寄ったときという説もありますが、まあドラマなのでどうでもいいことです。
「勝てるか分からないがやらなければならない」と、吉継に同心を依頼する三成。熟慮した吉継は、「共に死ぬなどまっぴら」「必ず勝つ、その気概がなくてどうする」と三成を叱咤。軍略を示し、「わしがおぬしを勝たせてみせる」というところが泣かせます。
三成と吉継が大坂城に入り、アンチ徳川勢も気合が入ります。が、伏見城攻めを任されてヘコむのが俺たちの金吾君。期待を裏切らぬ残念感を醸し出します。ここで板部岡江雪斎が間者であることをカミングアウト。この時点で金吾の調略はほぼほぼ成功って感じです。肖像画にも何となく似てるし、ヘタレっぷりも素晴らしいし、今後とも浅利陽介には金吾俳優として邁進していただきたい。
そして三成は大坂にいる大名の妻女人質化計画を発動。というわけで、関ヶ原直前には必ず挿入されるお玉自害エピ開始です。阿茶局が脱出した件はドラマでも紹介されていましたが、他に黒田や山内などなど、大坂を脱出した妻女はたくさんいます。が、「何かあったら自害せよ」と細川忠興に命じられていた玉は違います。才知を巡らせてしたたかに生き残った妻女と異なり、玉は(というか細川家は)何の努力もせず、ここで犬死にです。忠興の命もあるし、夫婦仲も冷めていて厭世的になっていた説もあったりして玉を責めても仕方がないのですが、イマイチ悲劇のヒロイン扱いに同調できません。
玉は屋敷に火を放ち、キリシタンは自害できぬからと小笠原秀清に別室から槍で突かせて死亡します。なぜ別室だったかというと、忠興が嫉妬深くて家臣にも玉の顔を見られるのをきらったからとか。本ドラマでは割とスタンダードな説(通説というか、俗説というか……)通りでしたが、玉が自分で腹を突き、秀清が介錯したという説もある(この場合、秀清は同室にいたことになる)ので、ここは「ガラシャの死といえばこんな感じだよねー」くらいに思っておけばいいでしょう。
本ドラマでは、ここできりが乱入すること。豊臣秀次の死の傷をキリスト教が救い、その縁で玉に仕えることになり、奉公先の細川屋敷の煙を見て駆け付ける。と、きりを目撃者にする見事な流れができていました。
うっすらほほえみ、死を受け入れている玉。表情とか、狂信者っぽくて私は嫌いです。この薄気味悪い女を引きずり出そうとするきり。
きり「案外重い!」
こんなときも笑いを突っ込んでくるところ、俺は嫌いじゃないぜ。
そして、玉の犬死にを目撃し、抜け穴から脱出します。佐助もついてるし、これで安心です。と思ったら、佐助ともども石田方に捕まってるし。
まだ江戸にいる家康さんは、上方に不穏な動きがある(タイムラグがあるので雰囲気だけ伝わった感じか)という知らせに動揺します。「三成を暴発させるためにあえて大坂を空けた」、つまり三成の挙兵を待っていたという俗説あるいは筋書きのドラマ、小説も多いのですが、この家康さんはガチで驚いたご様子。三成の挙兵を期待していたのか、意外だったのか、家康の本心は知りようがありませんが、本ドラマのパターンは少ないので家康がどう動くのか楽しみです。
何にせよ、家康がいるのは本拠地の江戸。東西どちらにも動ける点は有利というもの。上杉と交戦状態になっていたら、話は別なのですが……。
7月19日、秀忠出陣。同日、宇喜多秀家、小早川秀秋が挙兵。
7月21日、家康出陣。この時点で秀家と秀秋の動きは伝わっていないので、会津に向けての行軍となります。
このとき、真田は犬伏(現栃木県佐野市)に布陣中。7月25日に家康が行う「小山評定」の地のちょうど真西、直線距離にして20kmってところです。江戸を出発した家康をここで待っている状態です。
そこへ、佐助が吉継の密書を持って到着。佐助がもたらした三成挙兵の知らせに昌幸は激怒します。
昌幸「早すぎるわ!」
全くだ。
昌幸は信繁と信幸を呼び出し、「最後の」親子ミーティング開始です。昌幸は戦が10年は続くと予想し、戦が続いて両陣営が疲弊したら動くという戦略を開陳します。
これに信繁が疑問を呈し、案外早く決着がつくと予想します。
信繁「どちらにもつかぬということは、どちらも敵に回すということ」
そして、昌幸の甘い見通しを初めて強く否定します。情勢を読む目が、ここで完全に逆転。信繁が成長したと言うべきか、昌幸さんが衰えたと言うべきか。信繁がつらそうに反論しているところがまた泣かせます。まぁ、昌幸さんの読みはこれまでもかなりの確率で外れてたのですが、それは忘れてあげましょう。
徳川か豊臣に賭け生き残るしかないという二者択一を迫られ、窮する3人。昌幸が何やらガサゴソやってるなと思ったら……
出た、こより!
昌幸さん、それはアカン。
次は信幸の見せ場です。
信幸「こういうことはもうよしましょう」
信幸「私は決めました、父上」
信幸が出した苦渋の決断こそ、豊臣と徳川に別れる「犬伏の別れ」プラン。これまで真田家を引っ張ってきたのは昌幸でしたが、ここでその構図が完全に崩れたことになります。長期戦になるという見通しを信繁が覆し、二者択一状態から真田家の生き残り策を出したのは信幸。真田兄弟が真田家の進むべき道を考えたわけです。豊臣と徳川に別れる策を昌幸が考えたことにしなかったところに、切なさがあります。
信幸「もし徳川が勝ったならば、俺はどんな手を使ってもお前と父上を助けてみせる」
お兄ちゃん、かっこいいい! そして、実際彼はやりましたしね。関ヶ原後の助命嘆願も泣かせてくれるに違いありません。
ちなみに、ドラマでは河原綱家がミーティングを覗きに行って昌幸に刀を投げつけられてましたが、実際に昌幸が投げたのは下駄。これが綱家にヒットして前歯が折れたのも史実だそうで、三谷らしいギャグ挿入見せかけて、実は史実再現度の高いシーンでした。
ミーティング後、昌幸は1人で飲み、兄弟は涙ながらに静かに語り合います。三成の家康襲撃事件時に兄弟が両陣営についたエピがなければ、と思わずにいられません。既に敵味方に分かれる事態が生じてしまったため、犬伏の別れが薄まった感じがするのです。ここまで、何があっても真田は1つ、敵味方に分かれるなど思いも寄らなかった、という状態でこそ、犬伏の別れが生きるというものです。
ラストシーンは、韓信を肴に再び親子3人でトーク。このスリーショットもこれが最後かと思うと感慨深い。
2016年 大河ドラマ「真田丸」キャスト(配役)
もご利用ください。