大河ドラマ「真田丸」 第33回 動乱 感想

カテゴリ:真田丸
日時:2016/08/21 22:42

関ヶ原に向けて、対立の構図を分かりやすく描き出した第33回。上杉挙兵の下ごしらえまで今回でやってしまうとは予想していませんでした。前回で三成の痛々しさには慣れてしまったので、今回は三成よりも清正に目がいってしまいました。清正は何度も歩み寄ってるんだけどなぁ。

ではドラマスタート。慶長4年(1599年)1月21日、石田三成が徳川屋敷襲撃計画を宇喜多秀家に報告します。

島左近が登場するも、遊撃計画を立案するのはなぜか真田信繁。一瞬、吉田松陰の妹を称する女が城の防衛計画を得意げに開陳しているシーンが脳裏をかすめましたが、いやいや女性がそんなことをするなどという馬鹿げた話などあるわけがありません。きっと気のせいでしょう。

それはともかく、何かをやったという記録のない主人公を引っ張り出すと、本来それをやるのにふさわしい人物がいるにもかかわらず主人公が出しゃばるハメに陥るのは残念なことです。

ここで板部岡江雪斎が唐突に登場。大名家の滅亡の悲哀を描くだけかと思ったら、コイツが徳川に襲撃計画を漏らします。なるほど、こうきました。 三成による襲撃計画を知った本多正信は、これを豊臣恩顧大名の踏み絵に使うことを思い付きます。

信繁が真田屋敷に戻ると、徳川家康から勧誘メールが届きます。とはいえ、今さら徳川にはつけないという真田昌幸。意外に普通の反応です。一方、信幸は縁戚でもあり徳川に付くことに。そして信繁は三成が籠もる治部少輔丸に戻ることに。

信幸「敵味方に分かれて戦うのだけは勘弁してくれ」
信繁「戦にならぬことを祈るだけです」

ほぼほぼ犬伏の別れの構図になっていて、今後がちょっと心配になります。犬伏の別れで再び兄弟が敵対陣営に分かれるという話を「繰り返す」ことになってしまいます。今回はあまり悲壮感もなくサラっと流しましたが、犬伏の別れは盛り上げるのか。それとも予想をあえて外すように盛り上げどころにしないつもりか……。

そこへ、北政所からの呼び出しがかかります。信繁が参上すると、城下の不穏な事態について厳しい叱責。この段階で、加藤清正福島正則が三成につくべきか家康に付くべきか悩んでいたことが明かされます。清正、まだ三成のこと嫌ってないんだ。

悩む清正と正則に、徳川につけと言う北政所。

北政所「戦のない世の中をおつくりになったのは殿下です。殿下の命に逆らう者に味方などしてはいかん」

この言葉に感ずるものがあった顔の清正。これが反三成へのとどめか……と思いましたよ。この時点では。

北政所に叱られた信繁は、きりに意見を求めます。

信繁「お前は煩わしいことも多いが、偏りなくものを見ている」
きり「褒められてるんでしょうか?」
信繁「もちろん」

いやぁ、けなしてるように聞こえますよ信繁さん。

きりは、三成は引っ込みが付かなくなっていると主張します。

焦った三成は、大坂城へ行き秀吉の馬印を要求します。確かに、千成瓢箪を掲げられたら恩顧大名は抵抗しづらくなることでしょう。が、豊臣秀頼の傅役である前田利家は三成の要求を拒否します。

徳川屋敷は、集まった大名たちで大盛況。正信は、暗殺未遂の首謀者は三成だと皆に吹き込みます。これに激怒した清正は、治部少輔丸に乗り込みます。ついにキレたかと思ったら、さにあらず。三成に兵を引けと諭す清正さん。理と情を交えた見事な説得です。

清正「徳川内府は太閤殿下に後を託されたんだ。むやみに殺す訳にはいかぬ」
清正「お前が内府を憎んでいることはよ~く分かった。だがな、力ずくで相手を倒そうなどとお前らしくなかろう。どちらかといえば、わしだ」
清正「よっぽどなんだろ? よっぽどなんだよな? 振り上げた拳、どうしたらよいのか困っておるのだ」

清正視点で言えば、三成に差し伸べた手を何度も振り払われてきたようなもの。嫌われても仕方がないような態度をとり続けてきたのは三成でした。にもかかわらず、この優しい説得。この清正、いいヤツだなぁ。そして、清正の分析もまたきりと同じだったことで、きりの洞察力が裏付けされたのでした。

が、またも清正の好意を拒絶する三成。

三成「徳川屋敷へ帰れ」
清正「まことの戦になったらわしはお前を殺すぞ!」
三成「望むところだ」

だんだん、清正がかわいそうになってきました。

毛利も上杉も動かぬと知り、腹痛を催す三成。司馬遼太郎の、腹痛に苦しみながら孤軍奮闘する三成を描いた『関ヶ原』を思い出します。

焦った三成は、干し柿を手土産に細川忠興を勧誘。お前、柿食わないだろ。

それにしても、三成らしくない媚びっぷりがまたイタイタしい。三成に好意を持ってなさげな忠興が、何やら思い出話を始めようとしたら、それを遮って自分の要求を押し付けます。ここで忠興の話でも聞いて情に訴えれば、少しは心証が変わったかもしれないのに、それができない三成の不器用さよ。

忠興「かようなもの(干し柿)で人の心が釣れると本気で思うか? おぬしが来るまでどちらにつこうか思い悩んでいたが、これで心は決まった」

こうして、忠興まで徳川に付く始末。

ことここに至って、信繁は三成に挙兵を諦めさせるため、昌幸に徳川に付いてくれと依頼します。

大谷吉継もまた、ついに戦支度。吉継の出馬を喜ぶ三成ですが、吉継は徳川屋敷に行くと行って三成に衝撃を与えます。吉継を翻意させるため、秀吉が「家康を殺せ」と言ったことを明かします。が、吉継には通用しません。

吉継「死を前にした老人の世迷い言に振り回されるな!」

そして続く吉継の痛烈な説得。普通、ここまで言われたら心がボッキボキのパッキパキですよ。

吉継「徳川内府を殺してそのあとはどうする? おぬしは自分が政の要となるつもりか?」
三成「ほかにおらぬならば」
吉継「おぬしに人がついてくるのか?」
三成「やってみねば分からぬ」
吉継「ならば今宵、どれだけの大名がおぬしに従った?」
吉継「まだ間に合う。今兵を引けばとがめられることはない」

それでも兵を引かない三成のハートは大したものです。また、これはつまり関ヶ原のときにも当てはまること。いわば、本件は関ヶ原の予行練習のようなものです。全然従う大名がいないこの惨状を経験して、よくもまあ挙兵したものです。ああ、この惨状を経験させて大名の妻を人質に取る策を思い付くという流れにし、さらにガラシャの死につなげるのかな。

吉継の来訪に驚く家康さん。正信と2人で大歓迎します。他の大名のときは出てこなかったのに、吉継のときは出てくる家康。はて、吉継はそこまで大物だったかなと、ちょっと違和感があります。関ヶ原直前まで、吉継は家康に近いと目されていた人ですし。

妙に歓待する家康と正信に、自身の立ち位置を宣言する吉継。

大谷「それがし、内府殿のために参った訳ではござらぬ。太閤殿下の築かれた太平の世を乱す者を正すのが我が務め。大谷刑部はひ……秀頼公の家臣でござる」

この言葉にうなずく豊臣恩顧大名たち。この空気に、正信も口を挟まざるを得ません。

正信「お言葉をお選び下さりませ、大谷様」

このタイミングで昌幸が登場。昌幸が来たと聞き、微妙な表情の家康が笑えます。

早速軍議を開く昌幸さん。

清正「待たれい。何ゆえ安房守殿が仕切っておる?」

だよな。このドラマの清正とは気が合いそうです。が、伊達政宗と忠興が昌幸の仕切りを受け入れ、昌幸のペースで進めることが確定。それから、名乗るのは最初の1回だけでいいんじゃないかな、みんな。

政宗「徳川内府殿を暗殺しようとしたのも石田治部であったようですぞ。伊達越前守政宗」
昌幸「何、まことか。治部少輔許せん!」

暗殺しようとしたのは昌幸さんですけどね。昌幸の適当トークがまた聞けてなによりです。

場面は再び治部少輔丸。徳川屋敷の活況っぷりに比べて、このスカスカ感が泣けます。さらに、吉継と昌幸が家康に付いたと知らされます。それでも出陣しようとする三成。

そこへ上杉景勝登場。

景勝「徳川内府は……わしが倒す」
兼続「お屋形さまは本気になられた」

何と、ついに景勝のやる気スイッチが入っちゃいましたか。

景勝「太閤殿下の御前で、我らは誓った。その誓いを破る者は義を知らぬ者。義をないがしろにする者を、わしは断じて許すわけにはいかん」

そしてとどめのハグ!

三成が戦支度を解いたことで騒動は決着。徳川屋敷の大名たちも解散します。豊臣恩顧の大名が集まったことで自信を深めた家康もまた、天下取りに向けてやる気スイッチが入ってしまったのでした。

それにしても、クレジットされていた黒田長政藤堂高虎浅野幸長蜂須賀家政は見事なモブっぷりで全然分かりませんでした。七将による石田家アポなし家庭訪問時に、長政と幸長も目立つかな?

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