大河ドラマ「真田丸」 第22回 裁定 感想

カテゴリ:真田丸
日時:2016/06/05 22:39

ミステリ仕立ての第20回に続き、今回は法廷劇。ドラマが単調にならないように、ちょいちょいと変化球を入れてきます。やり過ぎると時代錯誤感が出てギャグになってしまいますが、ギリギリのところで歴史モノの範疇に踏みとどまる絶妙なバランスがすばらしい。

まずは型通り、原告(北条:板部岡江雪斎)と被告(真田:真田信繁)がそれぞれ所有権を主張。

片桐且元が沼田城の概略を説明し始めると、「長い!」と豊臣秀吉が一喝。いや、それほど冗長ではなかったと思うけど……。

そして、「なぜ沼田城に拘る?」と秀吉が疑問を呈すと、石田三成が且元にパス。

秀吉「ちっ」

そんな、嫌そうな顔しないであげて! 茶々の件でもあらぬ疑いをかけられて叱られてたし、気の毒な人です。淀と徳川家康の板挟みになって苦しんだ件から逆算したようなキャラ立てですが。

もともと沼田城を所有していたのは北条であるという江雪斎の主張は、であればさらに先の所有者である上杉に返還すべきという信繁の反論で封殺。

次に、江雪斎は沼田は真田がだまし取ったと主張します。感情論に引きずり込む策にまんまと引っ掛かる信繁。

信繁「おっしゃる通り、だまし取り、かすめ取り、勝ち取りました!」

が、信繁の開き直り方が秀吉に刺さります。そして休廷もとい休憩。

休憩中、信繁は江雪斎と遭遇します。憎々しい敵役の江雪斎が何を言い出すのか……。

板部岡「これは戦だとわしは思うておる」

割と月並みなことを。と思ったら、

板部岡「こうして我らがやり合うことで、まことの戦をせずに済む」

と、江雪斎にも華を持たせます。もちろん、江雪斎が言っているのは薄っぺらい反戦論ではなく、冷徹な損得論。豊臣とガチでやりあえば北条とて危ういという危機感からの戦回避。そのためには沼田問題を解決して氏政さんを上洛させなければならない。江雪斎の判断はとってもシンプルでまっとうなものです。

このドラマには江雪斎に限らず、取りあえず反戦を唱えれば意識が高いと思ってる知能の低い人物が出てこないのがいいですね。

そして審議再開。問題は天正10年(1582年)の徳川と北条の盟約に絞られます。この件で本多正信に証言を求める三成。すると江雪斎が遮って発言。徳川が沼田を引き渡すと取り決めたと主張し、起請文を提出。

続いて信繁が、徳川が沼田を安堵すると約束したと主張し、同じく起請文を提出。

こうして、問題は徳川が沼田を双方に与えると約束してしまったことにあることが明らかになります。まさに、これですわ。

が、審議が飽きちゃった秀吉は、豊臣秀次に後を任せて退場。

さらにこじれるかに見えたところで、正信が参戦。徳川は沼田を北条に譲り渡す気はなかったと言い出します。「奪い取るなら好きにせよ」と言っただけ、起請文にも「手柄次第」とあるはずだと主張します。

秀次「ずっと気になっていたのだが、『譲り渡す』にせよ『奪い取る』にせよ、それは沼田城が真田の城であることを暗に認めていることにはならないか。北条のものであるなら、『取り返す』『奪い返す』と言うべきである」

をを! 落ち着いた口調でさらりと核心を突いてきた! やるじゃないか秀次。

こうして審議は終了。後は秀吉の判決もとい裁定を待つばかりとなります。信繁は正信を呼び止め、味方をしてくれた理由を尋ねます。

正信「必死で戦こうている若者を見たら、手を差し伸べてやるのが年寄りというもの」

と、小さく笑って去っていきます。脇役にそれぞれいいセリフを用意するところにあざとさを感じないでもないのですが、いいセリフだったので仕方がありません。近藤正臣のような存在感のある役者さんには活躍してもらわないとね。

そして昌幸が潜んでいる部屋に戻ると、真田昌幸大喜び。が、そこへ三成登場。氏政を上洛させて戦を避けるため、沼田は北条に渡したい。「ここは折れてくれぬか」と頭を下げる三成に、昌幸も譲歩することにします。ただし、名胡桃城だけは残したいという条件を出します。

これが小田原征伐の直接の引き金になるのだから、歴史というのは面白いものです。名胡桃城が真田領として残されなかったら、小田原征伐はなかったかもしれません。

こうして根回しがまとまり、判決もとい裁定が下ります。沼田城を含む沼田2/3が北条領、名胡桃城を含む1/3が真田領に決定。しかし北条氏政さんは名胡桃城が真田領になったことを不服とし、2万の兵を動かします。

問題は、沼田城主・矢沢頼綱の説得。信幸が説得するも、沼田を守るために死んでいった者の名をつぶやきながら怒る頼綱、何と柱に自分を縛り付けて抵抗します。死んだ者の名を思い出していたくだりは泣かせるのに、途端にお笑いシーンに一変だもんなぁ。あれはあれで面白かったのですが、頼綱の悲嘆・悲哀が刺さるようなエピで見たかったような気もします。

そして天正17年(1589年)11月。北条家家臣・猪俣邦憲がやらかします。沼田城代だった邦憲が、独断で名胡桃城を攻め落としてしまったのです。惣無事令違反。秀吉が討伐する大義名分を得たことになります。

取りあえず、最前線である真田はこの事態にどう対処すべきか? そこへまたまた遊びに来ていた本多忠勝が闖入。名胡桃を攻めよと信幸をけしかけます。そんな忠勝を毅然と退ける真田信幸。これは……次の展開は読めた。案の定、忠勝は信幸の判断を大いに気に入ったのでした。こうなると思ったよ。

名胡桃城の件を知らされた昌幸は、秀吉に名胡桃奪還の許しを請います。が、「名胡桃のこと、わしに預けろ」と言われ、手も足も出ず。もう北条を攻める気マンマンです。それでも三成は、名胡桃の返還と氏政の上洛を促して、最後まで戦を回避しようとします。

ここで、ドラマストーリーにあってドラマにないシーンが登場します。ドラマストーリーには、三成の要請に対して、北条からわび状が帰ってきます。わび状には、名胡桃の一件は猪俣の独断であり氏政は知らなかった。城は返すとある。そこで、猪俣の首を差し出せと北条に要求。

氏政「秀吉は九州を平定し、まだ日も浅い。戦というのは金がかかるものじゃ。そう立て続けにできるものではないのだぞ、江雪斎」

と、まだナメてる氏政さん。

というわけで、名胡桃の一件がドラマでは若干簡略化されています。それでも、小田原征伐までの流れは相当詳しくやってきましたが。

こうして、ついに小田原征伐決定。

氏政は、徳川を味方に付けろと江雪斎に命じますが、今さら家康が北条と手を組むはずもなく、江雪斎は家康と会うことすらできません。江雪斎もまた、信念を持ってこの事態の回避に努力してきただけに、汗?でビショビショの姿が痛々しい。

さて、次回から小田原征伐。どんなふうに描かれるのか実に楽しみです。真田は「のぼうの城」攻めに加わっていたのですが、そのあたりもちゃんとやるかな? ドラマストーリーを読めば分かるのですが、来週まで我慢我慢。

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