大河ドラマ「真田丸」 第17回 再会 感想

カテゴリ:真田丸
日時:2016/05/01 22:36

今回は、徳川家康の上洛という定番エピ。そこに行方不明になっていた松が絡み、真田信繁と松、信繁と家康、豊臣秀吉と家康の「再会」が同時進行します。秀吉と家康の対面に信繁が絡むくだりはいささか強引かな。三谷といえども、何にでも顔を突っ込む or 巻き込まれる主人公という通弊にはあらがえなかったか。能動的に関わろうとしないだけマシですが。

秀吉が家康に真田攻めを許可したことは、家康の家臣になった真田信尹によって真田昌幸にも知らされます。にわかに緊張感が高まる上田城ですが、昌幸さんは割と余裕。

昌幸「われらも新しき策でいこう」

一方、石田三成によるメールフィルタリングがあるとは知らない真田信幸は、信繁の音信不通と無為無策っぷりをなじります。

もちろん信繁も無為だったわけではないのですが、秀吉にしつこく懇願するだけという無策っぷり。しまいには、「うるさい!」と一喝される始末。実際、うるさかったので仕方がありません。

そして、信繁は秀吉に誘われるまま出雲阿国の踊り(歌舞伎の原型)見物へ。ここで秀吉がようやくプランを開陳します。いったんは家康の顔を立てて真田攻めの許可を出し、その後中止を命じて家康の出方を見る、と。

秀吉「真田はわしが守ってやる」

をを、頼もしい。 ここで、阿国一座に交じっている藤(松)を目撃する信繁。木村佳乃は脚本を読んで驚いたそうですが……。それほどのことか? 「旅芸人に拾われて、一座の一員になって再登場」ってありがちなパターンです。パッと思い付くのは、『太平記』(『真田太平記』ではない)で、藤夜叉(宮沢りえ)が猿楽一座に拾われて行動を共にしていたこととか。

 松は信繁と生涯中が良かった重要人物。やりようによっては終盤の泣かせどころに使えるはずなので、うまく料理していただきたいものです。現在の、「どうでもいい浮いたキャラ」のままでは残念すぎます。記憶喪失になってしっとりしたキャラになるのかと思ったら、キャラ全然変わってないし、大丈夫だろうか……。

真田攻め「おあずけ」命令は既に発せられたらしく、浜松城は騒然。使者の片桐且元本多正信に呼び出されるハメに。

予想通り、おあずけを食らった家康はぷんぷん丸。気の毒な且元は、早くも豊臣と徳川の板挟みに悩まされます。今後、もっとしんどい立場に追いやられるのかと思うと同情を禁じ得ません。せめて、茶々がバカじゃなければねぇ……。

真田攻め中止の知らせは昌幸にも届きました。

昌幸「ここだけの話、少々ほっとしておる」
信幸「新しき策とは?」
昌幸「そんなものはない」

相変わらずハッタリだけで生きている昌幸さんです。そして、このタイミングで上洛を促す信幸に、「もっと真田の値打ちを高める」と言って取り合いません。徳川を止めてくれたお礼言上も兼ねて上洛しとけばいいのに……と思ってしまいますが、昌幸さんは何やら見えない敵とのチキンレースに没頭しているようです。

場面は再び大坂城。セミが鳴いているので、天正14年の夏。秀吉の妹・旭姫が家康の正室になったのが5月、大政所が人質になるのが10月なので、家康上洛問題が手詰まりになりかけていた時期、というところでしょうか。

そこで秀吉は大政所・なかに人質になってくれるように依頼します。これには北政所のお寧が大反対。しかし、大政所はあっさり承諾。

寧「人質がどういうものか分かってらっしゃいますか?」
三成「人質ではございません。家康が上洛している間、向こうにお預けするのです」
秀吉「ほんの一時の人質じゃ」
寧「人質ではないですか!」

こういう場面でも微妙にコントっぽい色を付けてきます。それにしても、この大政所は大河史上でもトップクラスの「なか」っぽさです。「農民の女がいい着物を着せられただけ」感がすごい。

大政所が人質になる件を信繁に伝えるきり。そこへ茶々がやってきます。信繁ときりの仲を問う茶々に対し、きりを「茶々よけ」に利用する信繁。これにすっかり勘違いして、ルンルンと去っていくきり……。最近はTPOを弁えた言動をするようになってきた(どうせまた何かやらかすだろうけど)せいか、この報われない片思いっぷりが哀れになってきました。三谷の思惑通りですな。

そこへ三成がやってきて、書庫へ呼び出し。大谷吉継はここに常駐してるのか?

三成は、徳川が人質をどう扱うのか信繁に問い、大政所の安全を全力で守ると語ります。まぁ、大政所は結果的に無事帰ってきたわけですが、大政所にあてがわれた屋敷の周囲は薪で囲まれていつでも焼き殺せるようになっていたので、丁重に扱われたとは言い難いのですが。

そこへ、大政所が人質になると聞きつけた加藤清正福島正則が登場。三成にくってかかるも、三成はそれをクールに受け流して決裂。三成の屋敷に押し掛けては酔いつぶれていた清正だったのに、これが原因で終生の仲違いという展開でしょうか。

場面は再び徳川家。大政所を人質として差し出すと聞き、さすがに驚く家康。しかし、大政所の顔なんか知らないから本物かどうか分からない……というわけで、大政所をよく知る人物、旭(朝日)姫登場。

清水ミチコか……。これは……これはまた、パンチが効いております。旭姫は泉ピン子や松本明子など、割とその、ナニな人がやる役(『秀吉』の細川直美は例外)で、家康が床入りしたといえば「アレとか! 家康は漢だ!」と称賛されるのが通例だったりします。
今回は床入りシーンこそなかったものの、家康はムチャクチャ優しく声を掛けます。政略結婚では、夫が一切寄りつかないという例も多々あることを思えば、やはりこの家康はとても優しい。笑ってることは分かってやれないけど。いや、家康は悪くない。

天正14年(1586年)10月18日、大政所が岡崎城に到着。再会を喜ぶ旭と大政所の様子を見て、上洛を決意する家康さん。

家康が浜松を出たのが24日。大坂に着いたのが26日。この夜は秀長の屋敷に宿泊。明日はいよいよ秀吉とご対面! というタイミングで、秀吉が信繁の部屋をアポなし訪問。仰天する信繁に、家康に会うのが恐ろしいと言い出す秀吉。何と、信繁に家康との仲立ちを依頼してきました。もちろん、これはドラマオリジナル。秀吉と家康の対面に信繁が関わったなどという史実はありません。

取りあえず、信繁という要素を除けば、対面前夜の秀吉と家康の非公式対面はよく知られたエピソードです。史実かどうかというと微妙なところですが、とにかく徳川オフィシャルヒストリーの『徳川実紀』に書かれているので、この場面を描いたドラマはどれも、基本的な筋書きはほぼブレなく同じようなセリフです。

『真田丸』も、おおむねこのセンに沿っているわけですが、演出で遊びを入れてきました。まず、信繁を絡ませたので、家康と最初に言葉を交わすのは信繁。上田合戦をめぐって皮肉の応酬。さらに会話を交わしているとイラ立った秀吉が立ち上がって家康仰天。この2人、旧知の仲ですからちゃんと顔を見れば秀吉であることは分かります。

そして、翌日の対面の口裏合わせ。が、家康はあがるから「芝居は苦手じゃ」などと言い出します。家康さん、ここ笑わせてくれなくてもいいんですが。

陣羽織ネタは家康のアドリブなのが一般的ですが、ここでは秀吉からの提案になっていました。

家康「殿下……芝居がどんどん難しくなっております」

家康の「えーっ」って顔が笑えます。

一般的に、このエピソードはひとたらし秀吉の行動力、それに見事に応えてみせる家康の度量を表現することが多いのですが、秀吉も家康も会うのをビビったり大勢の前ではあがるなどと互いに小心者として描かれていたり、ネタ合わせに笑いを入れてきたりして、なかなか楽しめました。定番エピをうまく料理したと思います。

秀吉と家康の非公式対面も終わり、信繁は三成とツーショットトーク。秀吉と三成がグランドデザインに沿って物事を進めている中、徳川と真田の件で右往左往するだけだった信繁をたしなめます。

三成「もっと物事の裏を読め。素直なだけでは生きてはいけぬ」

いや、その、お前もなー。

全てが解決に向かっているかに見える一方、父への危惧を募らせる信幸。昌幸は秀吉が滅びると読み、全く上洛する気がありません。

歴史を知るわれわれからすれば、昌幸さんの読みは大ハズレであることは明白で、信幸と同じくこれはヤバいだろと思うわけです。信幸が昌幸と同調してしまっていると、見ていて非常にイラつくというか気持ちが悪い状態になるわけですが、信幸が「コチラ側」にいるので信幸に感情移入しながら昌幸を見ることになります。この状態はなかなかか座りがよろしい。

秀吉と家康が有名な猿芝居的公式対面を繰り広げる中、信幸の危機感は募るばかりなのでした。

さて、次回は真田視点で盛り上がるかな?

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