大河ドラマ「真田丸」 第31回 終焉 感想

カテゴリ:真田丸
日時:2016/08/07 22:32

介護から遺言状作成合戦まで、妙にリアルな認知症老人問題を世に問いかけた(?)秀吉の退場回。関ヶ原や大坂の陣の暗示を随所に盛り込み、これが「終わりの始まり」であることを意識させます。

それにしても、何やってんだ、金吾~!

石田三成たちは豊臣秀吉の死を既定路線として準備を進めます。老衆(おとなしゅう)5人(徳川家康前田利家宇喜多秀家上杉景勝毛利輝元)と奉行衆6人(浅野長政前田玄以、三成、増田長盛、長束正家、大谷吉継)のリストを吉継に見せるも、吉継は病身を理由に辞退。これで五大老・五奉行が決定します。

さらに遺言状も作成して、家康から花押を取り付けます。

自室に戻ったものの、態度を明らかにしない家康。それに対して阿茶局が天下取りを口に出して家康に迫ったのはやや意外でした。

そこへ三成がやってきて、自分の不在時に一存で動かぬよう、家康に釘を刺します。この状況下での口約束何の意味があるのやら……という意味で、三成の行動は単なる挑発行為になっていたような。吉継の言う「やり過ぎは逆効果」という感じです。 吉継の部屋にやってきた三成は、あらためて吉継と真田信繁に助力を依頼。初対面時、信繁のことを完全に無視していたことを思うと、ここで信繁に丁寧に頭を下げる三成の行動は重い。これまでの経緯の中で、信繁のことを認めたことがよく伝わってきます。

奉行衆によって行動を掣肘されている遺言状に危機感を持った家康主従は、都合のよい遺言状を作るため秀吉の寝所に押し掛けます。

寝所に織田信長の鎧を設置して、まずは豊臣秀吉に心理的にプレッシャーをかけます。畏れ、頭が上がらなかった人のモノが寝室にあるなんて、落ち着かないよなあ。

そして、本多正信が奉行による制約を除いた遺言状を書かせます。というかほとんど正信が書いてる状態。

それでも、ひたすら「秀頼のこと頼む」としか言えない秀吉が切ない。さらに、「返す返すも秀頼のこと頼み申し候」と追伸を勝手に加えて哀れを誘います。

この家康の振る舞いに怒る三成、さてどうするのか?

寝ている秀吉を無理やり起こして、ニュー遺言に加筆させます。完全に「認知症の親に自分に都合のよい遺言状を書かせる兄弟」の図式です。

強引さにやましさを覚えたのか、家康が秀吉の下を再訪。そんな家康に対応しながら、枕元のロウソクをチェンジする信繁。燭台の火が消えるときが自分が死ぬときだから、火を絶やさぬようにという秀吉の命によるもの。これは……秀吉臨終のときのフラグか。と思った私はある意味素直過ぎた。

家康は信繁に戦はイヤじゃと語ります。さらに「戦場で逃げ惑うのはもうごめんじゃ」と言わせますか。家康が、信繁に対して。最終回、家康を伊賀越え再びなレベルで逃げ惑わせる演出をするという予告なのか。

そこへ金吾登場。かなりレアな顔合わせです。このシーンがどう転がるのか、全く予想できません。金吾が秀吉にどんな言葉をかけるのかと思ったら、死にかけのじいさんに向かって「お元気で」かよ。

覚醒した秀吉は、2人に再び秀頼を頼むと繰り返します。

家康「お任せあれ」
まぁ、取りあえず大人の対応です。

金吾「できる限りで」
……正直と言うべきか、空気読めと言うべきか。セリフの端々に金吾の残念人生がにじみ出ています。

で、家康と信繁が話していたら、金吾がロウソクに近づいて、え……。

吹き消したー!

信繁、家康「あ~っ!」
秀吉「あ~~」

金吾~!

そして秀吉は危篤状態に。まさか金吾がとどめを刺すとは。まあ、考えてみたらまさかも何も、金吾は豊臣にとどめを刺す係でした。

秀吉がこんな状態になっても、秀吉の下に近づかない茶々。秀頼を会わせることも拒否し続けていました。秀頼が秀吉の心の卑しさや醜さも見てしまうことを恐れ、そして自身が「死」というものに直面することを恐れている、と。が、いよいよという段になり、意を決して秀吉の下へ。

最後に秀吉を見た秀頼は何を思ったのか。もしかしたらいずれ、秀頼自身がこのときの胸中を語る場面があるかもしれませんね。そして茶々は北政所にすがります。以前にも何度か書きましたが、この2人の関係が悪くないのは本当に珍しい。他のドラマや小説では、茶々が一方的に北政所を敵視したり見下したりしていて、北政所はやれやれというパターンなのですが。つまり、この2人の関係が悪くないのは茶々の性格が悪くない、というわけです。

寝所で1人になった秀吉は、ひどくうなされているご様子。すると、信長の甲冑を通して血だらけの少年の幻影を見ます。

この子は……誰だ?

最初は秀頼の運命の幻視かと思いましたが、秀頼と血だらけ少年は別人です。





信長の鎧を介しているということは、信長の近縁者か? 信長の子で秀吉が死に関わっているとしたら信孝ですが、信孝なら少年の姿で出てくるはずがない。やはり、素直に考えて真っ先に出てくる彼、万福丸でしょうか。信長の命令とはいえ直接死に関わっていて、茶々や江(今回、セリフ内で登場)の兄であり、信長の甥。

信長の存在を考慮しなければ、秀吉の命令で死んだ男の子は豊臣秀次の子をはじめたくさんいるのですが……。

などとつらつら考えながら見ていたのですが、NHKのサイトに答えが書いてありました

これが引き金となり、秀吉は三成に家康暗殺を命じます。三成は、忍城以来師と仰ぐ真田昌幸に家康暗殺の相談を持ちかけます。しかし、昌幸は聞かなかったことにすると答えます。落胆する三成ですが……。

昌幸「もし明日の朝、徳川内府が死んだという知らせが届いたとしても、我が真田は一切与り知らぬこと」

このセリフで三成は全てを悟ります。

一方、秀吉は信繁に対して、三成を支えてやってくれと依頼します。秀吉の「淋しい男でな」という三成評が今後を暗示していて泣かせます。

昌幸「徳川内府に死んでもらう」

こうして、以前から殺るきマンマンだった出浦昌相に家康暗殺を命じます。

昌相が徳川屋敷に忍び込むと、家康に熱心に語っているのは、真田信幸かよ……。側室の存在を言い出せず、本多忠勝への取りなしを家康に依頼するという斜め上な行動が笑えます。五大老筆頭の大大名に、プライベートすぎる悩みを持ちかける信幸。出奔中とはいえ現職の関白にもグチるし、何気にこの人相手構わずぶっちゃけ過ぎです。それをちゃんと聞いてやる家康、結構フランクに話せる頼れる上司って感じになってます。

信幸、とぼけているようで昌相が発した音に1人だけ感づきます。忍びの存在を家康に伝えることで、昌相の暗殺を未然に防ぎます。「難儀なことだな」と初めはちょっと馬鹿にされていた徳川秀忠にも頼られちゃってるし。家康を暗殺しようとした昌幸と、それを阻止した信幸。運命はこの親子をどんどん引き離していきます。

場面は再び秀吉の寝所。人を呼ぼうとしたら、鈴は床。それを必死で拾おうとして、そのまま1人で絶命するという寂しい最後。天下人の最後として大きく落差を取った演出でした。

小日向さん、お疲れ様でした。愛嬌と冷酷さを併せ持ついい秀吉でした。実に小日向さんらしいという意味では想像を超えるものではありませんでしたが、自身の持ち味をうまく発揮していました。個人的には、勢いだけでやっているように見える竹中秀吉より小日向秀吉の方が好みでした。

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