大河ドラマ「真田丸」 第40回 幸村 感想

カテゴリ:真田丸
日時:2016/10/09 22:10

今回も雌伏の時代からラスト10回のクライマックスに転換するつなぎ回で、話としては地味になってしまいました。が、苦難を極めた片桐且元が語る大坂冬の陣への道、信繁を励ますきりなど、見応えは十分でした。

真田信繁の前に現れた明石全登、「会うていただきたい方がいます」と言って信繁を誘います。さて、信繁に会いに来た人物とは?

一方、沼田城の真田信之には、徳川秀忠から江戸への呼び出しメール。が、手がうまく動かず書状を取り落とします。「手が滑った」とごまかしていましたが、明らかに手にしびれか麻痺のような症状があるようです。信之は病で大坂の陣には出陣していなので、そのフラグというところでしょう。

場面は再び信繁。彼を待っていたのは片桐且元でした。はて、且元はこの時期すでに大坂城を追放されていたような。 世の動きを知らないという信繁に、いきさつを語り始める且元。なるほど、大坂冬の陣決定までの歴史の語り部役というわけですね。当然ながら、話は方広寺鐘銘事件から。方広寺の梵鐘に刻む銘文を南禅寺の文英清韓に依頼したところ、徳川家康にケチをつけられてしまう。そこで清韓にリテイクを依頼。リテイクバージョンには「趣向」ということで、超有名な
・国家安康
・君臣豊楽
を加えたという清韓。ドラマでも語っていたように、清韓はこれをあくまでも「祝意」だと主張するのですが、林羅山らによって無礼であり呪詛調伏の意図ありと難癖をつけられることになります。清韓が本当に祝意のつもりであったとしても、デリケートな諱を使っちゃったのは軽率でした。

江戸から鐘を作り直せと言われたものの、大野治長には作り直しや日延べを拒否され、窮した且元は茶々に相談します。そして駿府の家康に会いに行くことになります。しかし家康には会えず、本多正純には呪いだと決めつけられ、厳しく責められます。

家康に会えぬまま大坂へ帰る途中、近江で大蔵卿局と邂逅。大蔵卿局は家康と直接会って、懇ろに扱われます。正純と異なり家康は怒りを示さず、「無学の且元が田舎坊主のいいなりになってしでかしたこと。いちいち騒ぎ立てるまでもなし」と言われたと語る大蔵卿局にショックを受ける且元。

そこで且元が言い出したのは、正純から突きつけられたという三カ条。
秀頼公は大坂城を立ち退き伊瀬もしくは大和へ移ること
・お上様を人質として関東に送ること
・秀頼公は諸大名と同じく江戸に参勤すること
が、実は大蔵卿局への怒りから且元がでっち上げてしまったことであることが判明。大阪でもこれが問題になってしまいます。内通を疑われるものの、茶々に「且元にはそのような策を立てる度胸も知恵もない」と庇われますが、ちっともフォローになってねぇ!

且元の立場は悪化の一途。鐘作り直しと開眼供養の日延べの責任を取らされることになります。さらに、大野派が暗殺を企んでいると知り、且元は大坂城を退去せざるを得なくなります。

最後に天守を見上げ、石田三成が残した桃の木を眺める且元が切ない。小林隆を且元に充てたのは絶対に今回のためだと思っていましたが、まさにピッタリの哀愁感。本当にこの時期の且元は気の毒だし、小林隆はそれを見事に演じておられた。

この時期の且元のかわいそうっぷりは司馬遼の『城塞』にも詳しいので、興味がある人は一読をお勧めします。

よかれと思って大坂城を退去した且元ですが、取り次ぎ役の且元を追放したことを徳川との手切れとみなされ、大坂攻め決定。

というわけで、信繁に「大坂城へ入って兵を預かり徳川勢を迎え撃ってくれ」と懇願する且元でした。しかし、信繁は「真田左衛門佐は死んだものとお思いください」と言って拒絶。

屋敷に戻ってきた信繁が縁側で物思いにふけっていると、きりが登場。「お行きなさいよ」と信繁に勧めます。「あなたは行きたいと思っている」

「大軍を率いて敵と戦ったことなどない」と躊躇する信繁ですが、徳川に二度勝った昌幸の血が流れている。誰も疑わない。あとははったりよ、と勇気づけます。

『功名が辻』のときは悲惨でしたが、長澤まさみもだいぶうまくなったなぁ。セリフの良さも相まって、なかなかの名場面です。

信繁を励ましていたものの、だんだん話が怪しくなっていきます。「真田源次郎がこの世に生きたという証を何か1つでも残してきた?」

・聚楽第の落書きの科人とうとう見つからなかったよね
・沼田を巡って談判はしたけど最後は北条に取られちゃった
氏政様を説き伏せに小田原城に忍び込んだみたいだけど、氏政様がお城を明け渡したのはあなたの力ではないですから。後から会いに行った何とか官兵衛様のお手柄ですから

ここで黒田官兵衛を出してきたか(笑)。

こうしてみると、主人公補正でいろんなことに絡んで大活躍していた信繁ですが、本当に何も成功してないな。

信繁「お前の言ったことくらいはな、とっくに自分で問いかけておるわ! だが自分で問いかけるよりもお前に言ってもらう方がよほど心にしみた」

そして1人になった信繁の心に去来する思い出の数々。

翌日、何やらお習字を始める信繁。どうしたどうした。そして、書き付けた文字を一字ずつ切り分けて壷に入れろと真田大助に命じます。あー、「兄が捨てた『幸』」エピをここで持ち出して、「アノ文字」をくじびきで決めるわけですね。

大助の作業を待つ間、信繁は庭に出てサトイモをひと株収穫。そして、大助に庭のサトイモをことごとく取り入れよと命じます。

大助「残しておかなくてよいのですか? さきざきのために」
信繁「よい」

このセリフと信繁の吹っ切れた笑顔に、ハッとなる大助。君も気付きましたか、信繁が決断したことに。

部屋に戻った信繁と大助。信繁は予想通り、新しい名を名乗ることにしたと宣言。大助にくじを引かせると出てきたのは九度山村の「村」。

で、幸村。

「幸村」の名は使わないまま終わるかと思ったら、ラスト10回は幸村ですか。「幸」の字を使ってほしいというのは亡き真田昌幸の意志でもあるし、うまく虚実をでっち上げたものです。史実性はともかく、九度山村を脱出して大坂城へ入城する決意を固めた象徴としては効果的だったと思います。

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