大河ドラマ「真田丸」 第21回 戦端 感想

カテゴリ:真田丸
日時:2016/05/29 22:29

第21回もまた、お笑いシーンと濃密なおっさんシーンを入れつつ、真田信繁をからませるという虚構とともに板部岡の上洛という史実を盛り込んできました。

関東以西を平定した豊臣秀吉にとって、北条の上洛(つまり北条の臣従)は最重要課題の1つ。捨を抱いた秀吉は、「ヒソヒソ」と北条に怒ります。ヒソヒソと怒るくらいなら捨を誰かに任せろよと思ったら、よりによって信繁に渡します。

「討ち滅ぼすか」とこともなげに言っちゃう秀吉ですが、石田三成は武力行使を諫めます。が、結局北条攻め決定。

対北条強攻策の背後に、誰かの入れ知恵の存在を感じる三成。案の定、「おやりなはれ」と利休が秀吉をたきつけていました。「乗るしかない、このビッグウェーブに」って感じです。

一方、戦国ガールズは、捨を囲んでガールズトーク。今回もまた、北政所と茶々の仲は悪くないように見えます。

北政所「殿下に似てまったら2代続けてサルだがね」
茶々、阿茶局「……」 なんてコントを入れたりもしていますが、阿茶局は冷静に両者を観察。茶々は子を産んで自身を付けていると、火種の萌芽を見つけて家康にご報告。円満だった北政所と茶々の関係は、捨そして豊臣秀頼を産んだ茶々の増長で険悪になっていくという伏線でしょうか。

本多正信がここから想定した火種は豊臣秀次なのですが、秀次はというと、ガッカリしているどころかほっとして、捨のために風車を鋭意制作中。

秀次「とはいえ、お捨が元服するまでは私が気張らねば。身が引き締まる思いとはこのことじゃ」

と、けなげな発言。下の者にも気さくだし、分を弁えた好青年です。ちょっと頭は弱そうですが。

秀次と秀吉の仲が本格的にややこしくなるのはお捨の死後、秀頼が生まれてから。この秀次キャラだと破局する感じが全くしないので、どこかで秀次が意地を張りたくなるようなターニングポイントが発生するのか。あるいは最近の説の通り、秀次が自分の意志で切腹するのか。この場合、秀次の妻子が虐殺される理由が見当たらないので、やはり秀吉を怒らせる何らかの行き違いが設定されるのか。

秀次もまた、出てくるたびに魅力が増して、退場時の悲壮さを予感させられます。

場面は上田城へ。真田信幸は、なかなか心を開かない稲に困惑中。高梨内記にちょっと弱音を吐きます。

内記「鼻っ面をつまんでぎゅーっとひねってやればよいのです」
信幸「そんなことしてみろ。すぐに本多忠勝が俺を殺しにやって来る!」
綱家「本多平八郎様がお見えです」
信幸「何!? 何しに?」
綱家「奥方様のお見舞いと」
信幸「先日やって来て帰ったばかりではないか!」
内記「わずか数日で上田と駿府の往復。ただ者ではありませんな」
信幸「することがないのだろうか?」

やめろ、笑い死ぬ。このシーンだけ3回再生してしまいました。それから、コイツが河原綱家か……。

で、忠勝登場。入るなと言ったり入れと言ったり、恥ずかしげもなく稲を絶賛するし。本当に面倒くさい。実に三河武士らしい面倒くささです。稲にふさわしい武士になってほしいとか言っちゃってますが、信幸はこの時点で十分実績を積んでますが。気の毒に、ドラマでは描いてもらえてませんが。

そこへ、ばば様体調不良のお知らせ。稲は、風邪がうつるからという忠勝の指示により、見舞いせず。無骨者の忠勝なら、「嫁として恥ずかしくないようばば様の世話を致せ」と言いそうな気がしますが、このドラマの忠勝では仕方がありません。

信幸がばば様を見舞うと、こうがかいがいしく世話をしています。元妻と今妻の対比に何を思う、信幸。ちなみに、ドラマストーリー後編のこうの肩書きが「真田家の侍女」になっていてちと切ない。

お笑いシーンの後は、おっさんシーン。大河ドラマの良しあしは、「おっさんシーンの出来不出来にあり」です。戦シーンはなくても構いません。

『葵』の関ヶ原を除けば、大河の戦シーンなんてどれも大したことはありません。『草燃える』なんか、数人の武士が海岸でチャンバラしてる程度だし、『毛利元就』は向き合った長やり足軽が互いに槍をペシペシやるシーンと、火矢がピュンピュン飛んでるシーンを繰り返すだけ。まぁそんなものです。私としては、地図の上を赤と青の「凸」がチョコチョコ動いてるだけでもいいんじゃないかと思ってるくらいです。

徳川家康のアポなし訪問を受け、北条氏政・家康会談スタート。家康は、秀吉に面従腹背していると語り、上洛して形だけでも秀吉に頭を下げろと説得します。

氏政さん、目元をわずかにピクピクさせはじめたので顔芸スタートか? スグルちゃん化するのか? と思ったら、家康には意外に大人な対応です。

家康もまた、「うそいつわりはない」と説得する一方、手切れの際は縁組みを解消すると脅迫めいた一面も臭わせ、氏政の翻心を促します。

そして正信と2人だけになった家康。おっさんシーンは続きます。

正信「で、まことうそ偽りはございませんのですか?」
家康「確かに、北条には滅んでもらった方がどれだけ助かるか。しかし、心底救ってやりたくなったのだ。何の得にもならんが」

こういう一面がまた、この家康を面白くしています。

まだ秀吉を舐めてる氏政さんは、パワーゲームの続行を決意。上洛の条件として沼田を要求して秀吉の出方を探ります。

こうして、当事者の真田昌幸が京に召し出されることになります。真田の京屋敷には、複数の隠し扉を設けているのが昌幸さんの自慢です。

で、京屋敷に着いてみたら、「隠し扉は必要ないからやめました」(信繁)で昌幸さんガッカリ。さらに、沼田を渡せという話に激怒します。まぁそうなるわな。で、信繁が不首尾でしたと三成に報告。

三成「はなからあてにはしておらぬ」

ひどい。

で、秀吉の前で真田と北条が話し合い、秀吉が裁定することになります。各者の根回しにより、秀吉、家康、昌幸が承諾するも、氏政が上洛を拒否。そこで、板部岡が名代として上洛することに。それを聞いた家康は、沼田問題に嫌気がさして正信を名代に立てることに。

昌幸は、北条と徳川が来ないことにヘソを曲げて出席を拒否。で、名代だらけの弁舌大会に。こういう、右に行きかけたものが何かのきっかけでパタパタと左に戻る展開は、実に三谷らしい。

信繁、正信、江雪斎「……」

気まずい雰囲気から脱出する振りをして、隣室に滑り込む信繁。そこには昌幸が隠れている、と。そして、「徳川を味方に付けろ」とアドバイス。そして信繁の胸をグーパン。

昌幸「これは戦じゃ」
信繁「ゴフッ」

そして秀次、秀吉が上座に着き、本日はここまで。

氏政の上洛問題のため、板部岡江雪斎が上洛しているのは史実。さすがに信繁を名代とした主張合戦はフィクションですが、沼田を北条領とする裁定が下った経緯まではよく分からないので、面白い創作だと思います。

最後のシーンは夏の描写だったので、天正17年(1589年)夏ということになります。同年11月には、沼田城代になった北条家の武将・猪俣範直が「やらかして」小田原征伐決定です。

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