諱呼びについて――私流、大河ドラマの楽しみ方?

カテゴリ:資料&ネタ
日時:2015/09/30 22:17

大河ドラマは、以前から「諱呼び」が批判の対象となっていました。「諱(いみな)」とは、「信長」「秀吉」「家康」などの個人名のこと。嵯峨源氏などごく一部の例外を除き、漢字2文字で構成されています。

「本名を知られてはいけない」「本名を呼ばれると呪術をかけられてしまう」といった言霊的・呪術的な思想から始まり、諱で呼ぶのは大変無礼なこととされてきました。目下の者が目上の者を諱で呼ぶなど言語道断。面罵するに等しい行為で、敬称を付けてもアウトです。秀吉が「信長様」などと呼ぼうものなら、その場でなますにされていたことでしょう。

『軍師官兵衛』で、秀吉に心酔した黒田官兵衛が「秀吉様秀吉様」と連呼していたのは非常に頭が悪そうでした。 が、諱呼びにツッコんでいたら切りがないのでスルーすることにしました。近年の時代劇のフォーマットだと思って諦めましょう。ツッコんだら負けです。

ちなみに、諱がダメならどう呼んでたのかというと、通称や敬称を使っていたのです。通称には、藤吉郎、又左衛門などの他、受領名(上総介、薩摩守など)、官途名(治部少輔、玄蕃頭など)などがあり、十分に個人を特定できました。また、身分が超高い人にはさらに婉曲な呼び方(上様、お館様、御所様など)を使います。他に、平清盛なら「六波羅殿」、源頼朝なら「鎌倉殿」なんてのもあります。

徹底的に諱呼びを避けると時代劇らしい雰囲気が出るのですが、それで喜ぶのは私のようなイタい歴史オタクくらいでしょう。一般的なかたにとっては分かりにくいだけなので、諱呼びも致し方なしだと思います。

なお、「諱呼び」などというと特殊な歴オタ用語のように思えるかもしれませんが、実は現代でも常識的なことなのです。

皆さんも、会社の社長に面と向かって「欣也さん」、部長に「たかおさん」とは呼びかけないでしょう。「北大路さん」「大沢さん」と呼ぶはずです。異性に名前で呼ばれたら、うっかり勘違いしてしまいます。

そう、実は名前で呼ぶなんて、時代劇だろうが何だろうが、異常なのです。