大河ドラマ「花燃ゆ」 第35回 孤高の戦い 感想

カテゴリ:花燃ゆ
日時:2015/08/30 23:04

今回は、軍師美和が表の本職の武士を差し置いて山口城の防衛プランを立案し、指揮官まで任命しちゃうという大活躍。本来ならチラシの裏にでも書くべきくだらない妄想を放送しちゃうんだから笑えます。

慶応元年(1865年)11月、幕府軍は広島でミーティング。主要メンバーは、老中・小笠原長行、総督&和歌山藩主・徳川茂承、陸軍奉行・竹中重固、先鋒副総督・本荘宗秀

一方、長州もミーティング。まさに大村益次郎が戦略を説明すべき場面なのですが、ここには登場せず。それならとことん出さなければいいのに、後で中途半端に出すという適当さです。

で、「時間稼ぎしたいよね」ってことで、小田ムダが軍使を志願。自薦か他薦かは知りませんが、とにかく小田ムダが副使として広島に行ったのは史実です。敬親に偉そうに演説してるあたりが鬱陶しいところですが。

奥御殿では、都美さんがみんなを招集。ノベライズでは、「真っ赤な甲冑を身に着け、薙刀を持ち……」という出で立ちだったのですが、ドラマでは甲冑を用意したのみ。この時点で甲冑を着込むのはやる気の空回りっぷりが痛々しくなるので、ドラマの描写の方がいいでしょう。 都美姫の決意表明に、次々に参戦表明する銀姫&奥女中。が、俺たちの美和さまはそっぽを向いて無言。

美和「恐れながら(でたよオイ)、私は逃げたいと」

またちょっと違うことを言って意識の高さを見せつけます。

美和「姫様興丸さまをお連れし、逃げてどこまでも逃げのびて、危急の際にはこの身を挺して興丸さまをお守り致します。たとえ長州が焦土となろうとも、興丸さまさえご無事なら、毛利家は必ずや復興しましょう」

実際に高杉晋作が言ったか書いたのか、司馬遼の創作かは知りませんが、『世に棲む日日』では高杉が「いざとなったら藩主と若殿を担いで朝鮮に亡命する」と語る場面が度々登場します。美和さまのセリフは、これがベースでしょう。

一同、この意識高い系の美和さまにすっかり感動。

都美「今こそお前の力がいる」

そこで調子に乗った軍師美和さまは、山口城の防衛計画を開陳なさいます。奥御殿に限定しても僭越きわまりないというのに、何と城全体の部署割りまでしちゃうのですから恐れ入ります。

守備すべき門に土塁構築、堀への注水……いや、そういうのは普通に表の仕事だから。奥女中ごときが口出しすることじゃねーから。鶴ヶ城籠城時、八重松平容保に意見具申しましたが(史実)、それは八重が砲術の専門家として容保に質問されたから。主人公補正じゃなくて、実際に実力と知識があった、「スゴイ女性」だったのです。

飯炊き女の出る幕じゃねーんだよ

俺たちの美和さまは、さらに笑わせてくれます。

美和「兵の数が劣るときは、まず一点に敵の兵を集めよ

うん、美和さまの言っていることは正しい。

敵がとんでもない無能ぞろいで、美和さまの希望通りに動いてくれるならな!

兵法の基本中の基本、『孫子』に曰く、兵力が敵の2倍だったら挟み撃ちにし、10倍であればこれを囲む、と。つまり、「兵の数が勝るときは、兵を一点に集めない」のが常識。城攻めの際は、最低でも大手と搦め手の2つに兵を分けます。

軍師気取りの美和さまはドヤ顔でしたが、絵に描いたような机上の空論でした。

なぜこんな馬鹿げたことを考えちゃったのか。

美和「昔、の講義を聞きかじったことが……」

こういうのを「生兵法は大怪我のもと」と言います。昔の人はいいことを言う。

こんな馬鹿げたプランに感じ入る一同。ダメだこいつら……早くなんとかしないと。

調子に乗った美和さまは、頭の悪いプランを開陳するだけでなく、指揮権まで発動なさいます。「日出様、万一のときは、長局の差配をお任せしてもよろしゅうございますか?」と、日出に直接要請。

いやいやいや、お前何様だよ。差配を任せるかどうかを決定して命じるのは御前様の役目だろ。

さらに、日出の性格を偉そうに評価しちゃいます。お前何様だよ。

そのころ、小田ムダは広島でノラリクラリと時間稼ぎ。と言っても、単に挑発しているようにしか見えず、あれでは時間稼ぎにはなりそうにありません。まぁ、小田ムダってムダに偉そうに語るので大人物っぽく見えますが、役に立ったことはほとんどないですしねぇ。

とはいえ、小田ムダの功績なのかどうかは分かりませんが、冒頭の幕府側ミーティングの約半年後となる慶応2年(1866年)6月7日、幕府軍が長州に向けて兵を進めます。第二次長州征伐始まり始まりー。

幕府軍に周防大島を取られたと知らされた毛利敬親、珍しく「討て!」と命令を発します。司馬遼の『花神』だと、大村益次郎は周防大島を無視し、高杉にも知らせないようにして他の戦線に集中しようとしたが、高杉が勝手に周防大島の幕府艦隊を攻撃しちゃった、としています。このあたりも特に勉強していないので、史実なのか司馬遼の創作なのかは判断できませんが。

6月12日、高杉による奇襲開始。といっても、戦況はほとんど園山トークによる伝聞で処理。大型艦ぞろいの幕府艦隊に小型艦の丙寅丸で勝っちゃったのですが、そういった「スゴイ感」は全く伝わらないしょーもない演出でした。面白いところを直接描写せず、わざとつまらなくするするのは今に始まったことではないので、予想通りでしたが。

ダメダメな演出なりに盛り上がってきたところで、くだらないシーンを入れてつまらなくするのもこのドラマの特徴。ここですかさず、ゴミのようなシーンをぶち込んできます。この地面を這いつくばるようなクオリティの低さよ。この安定感はスゴイ。また、「面白くなりそう」という淡い期待を一切抱かせないあたり、実に誠実です。

雅の「浮気されて悲しー」やら、異常に顔がデカイ辰路のどうでもいいトークでテンポぐだぐだです。ムダに長いので最悪です。

驚いたことに、脚本家は長州が戦争中であることを覚えていたのです。何と、戦のシーンを一瞬だけ入れてきます。ノベライズではセリフがあるのにカットされてしまった大村益次郎が登場するのです。何やらニコニコしているだけでという、もはや何のために出したのかさっぱり分からないシーンです。あー、「一応、大村益次郎だって知ってるんだから」(脚本家)ってことですかね。よくお勉強ちまちたねー。えらいでちゅねー。

話的に、大村益次郎の出番はこれだけだろ。これならいっそ出さなきゃいいのに。

幕府側に捕らわれていた小田ムダは、本荘に偉そうにインチキ和議を提案して恥をかかせます。この後に挿入される小田ムダの偉そうなニヤけ顔!

うわっムカつく。こんなやつ、さっさと斬り捨てちゃえばよかったのに。

高杉は、進行する肺結核をおして門司を奇襲、次に富士山丸への攻撃を敢行します。やはり、戦闘シーンなどまともに作られることもなく、奥女中の伝聞で安上がりにすませます。男たちの苦労をよそに、やることもない姫様&奥女中。そこで、セレブっぽく暇に任せてガーデニングをエンジョイすることに。

美和「皆、不安を抱えております。なので……働こうと」

で、あんな狭い庭にちょいと種まきしただけで「働いた」と。

仕事なめんな。

一方、雅には萩に帰って杉家の塾を手伝えと言い出す美和さま。人に指図するのが好きな人です。何様だよ。

が、美和さまの指図程度は大したことではありません。ここから、浮気された女同士のガールズトークを延々と繰り広げます。長い長い。長すぎる。

男たちが命を懸けて戦ってるときに、お前らいいご身分だなおい。

このドラマのテーマは、「女は本当にどうしようもねーな」ですか?

このドラマを見ていると、女性に対する侮蔑感がわき上がってきて困ります。そんなときは、現実の尊敬すべき女性たちを思い出すことにしています。私のまわりの女性たちはすごいぞ。出産して、育児して、なおかつ立派な仕事をして結果を出している。このドラマの女どもとは大違いです。

そんなことをしているうちに、8月29日、徳川家茂が病死。和議詐欺をやらかした小田ムダは、「停戦後に」解放されて帰還。あんなことして、よく殺されなかったな。こんなクズ、生きて帰ってこなくていいのに。

この小物の小田ムダに、みんなが礼で迎えるなど、気持ちの悪いシーンをぶち込んできます。こんな下りはノベライズにはないのですが。さらに、藩主自ら近寄ってきて、「わしと、この長州を助けてくれ」と小田ムダに懇願します。この異常な小田ムダageシーンには寒気がします。

もちろん、俺たちの美和さまもageられます。都美さんは、美和さまに教えられた気がすると絶賛。さらに、中臈に昇進なさいます。よかったね。

さらに、久坂家再興を許されて感涙。こっちは特に感動しませんでしたが。

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