大河ドラマ「花燃ゆ」 第32回 大逆転! 感想

カテゴリ:花燃ゆ
日時:2015/08/09 23:25

今回は、美和さまと小田ムダの登場シーンを全てカットすれば、まぁ悪くはありませんでした。特別ほめるほどの出来ではありませんでしたが、貶すほどの失敗もなし。美和さまが絡むシーンは全てゴミでしが。

このドラマ、もったいないなぁ。美和さまと小田ムダのシーンさえなければ、「駄作」という程度の評価は得られたでしょうに。

高杉挙兵の報に大揺れの萩城下。すっかり美和さま専用伝言係に成り下がった鞠が、座敷牢の美和さまに知らせます。すると、俺たちの美和さまは真っ先に高杉の家族を心配なさります。

ソコ!?

すると無能な園山さんは、銀姫を守るためという理由で美和さまを釈放します。この段階で姫の近辺を固めても仕方がないし、美和さまがいてもしょうがないでしょうに。

そして話は12月15日、高杉の功山寺挙兵の場面にさかのぼります。「功山寺集合ね!」と宣言したのに、待てど暮らせど誰も来ず。春風ちゃんがボッチ挙兵を覚悟したとき、利助 with 力士隊とイッセー前原と遊撃隊の仲間たち計80人が合流。「真っ先に高杉さんのもとに駆け付けた」(by 伊藤博文)という主張を採用したようですね。

そして三条実美ら五卿に挨拶して出発という、おおむね通説通りの功山寺挙兵でした。ここは特にケチを付けるところはありませんでした。個人的には、「高杉の挨拶を訳が分からず取りあえず聞かされた五卿」って感じの『世に棲む日日』の功山寺挙兵の方が好みですが。 ここで突然重要度を増したのが春風ちゃんの妻である雅。高杉の暴挙に憤る者らから守るためという、表向きは実にもっともな口実を設けて雅を人質に取ろうとする椋梨。ここはまあ分かる。

一方、俺たちの美和さまは、理由は不明ながらとにかく雅の身を案じて奥御殿にかくまうことを画策。相変わらず、ぼんやりした理由で周囲を巻き込みます。また、「高杉の家族」を心配していたはずが、春風ちゃんの父・小忠太のことは眼中にないようです。

こうして数日後、銀姫のためにお側付き新メンバーが加入。母さん、あの意味不明なリストラはなんだったんでしょうね。1回ごとに矛盾が生じるドラマです。

俺たちの美和さまは、銀姫の世話を放り出し、春風ちゃんの子・梅之進をあやします。奥御殿に上がって以来、奥の仕事などろくにしないで高杉のために奔走し、小田ムダの助命嘆願のために大騒ぎし、雅と梅之進の世話に気を取られるなど、私情でやりたい放題。何だろう、このクソ女。

そこにやってきた都美さん。「抱いておるのは何じゃ?」。奥御殿に突然赤子(10月5日生まれだから生後2カ月強か)が出現したのだから、驚くのも当然です。

都美さんに「分を弁えよ」と叱られた美和さまですが、何と、反論しようとします。主君に叱責されて言い返すなど、ありえない無礼なんですが。誰か、ちゃんとしつけていただきたい。

しかし、無礼な女はコイツだけではありません。梅之進をあやす銀姫に、「お上手でございます」と称賛する雅。主君を褒めるというか「評価をする」なんてのも臣の分を超えた無礼。コイツら、そろいもそろって現代劇のノリでイライラします。時代劇ってのは、身分という不自由な枠の中で、主従が分を弁えた交流をするところに感動が生まれるもの。不自由さとい枠を取ってしまったら、時代劇をやる意味なんかないと思うのです。

実際、『花燃ゆ』を見ていても主従関係でよかった場面なんか1つもありません。『八重の桜』の前半が良かった点の1つに、容保を中心とした主従関係がしっかり描けていたところがあります。

高杉の檄に応じなかった奇兵隊ですが、突然モチベーションアップ。頭悪そうに高杉を斬るといきっていた野村靖品川弥二郎山県狂介を突き上げる様には苦笑するしかありません。

こうして、元治2年(1865年)1月6日、奇兵隊が絵堂の藩政府軍を奇襲。宝蔵院流槍術マスターだけに、山県の得物は槍でした。こういうところはちゃんとやればできるじゃないか。

が、奇兵隊の進撃も兵糧不足でストップ。しょんぼりする山県ですが、この絶妙なタイミングで高杉がお米を配達。「兵糧が足らん」と言ったら米が届くという、実に便利な世界でうらやましい。

さらに雨の中で藩政府軍を奇襲して勝利するものの、玉木彦助は負傷。というわけでこの戦いは1月16日と判明。その後、敏三郎に看取られて息絶えます。ホントは21日に自害したんですが、なぜ武士らしく死なせてやらないんでしょう。こうして、彦助も貶められたまま退場です。もっとも、全然キャラ立ちしてなくていまだに顔を覚えていなかったくらいなので、切腹しようが床で息絶えようが、何の感慨も湧きません。

大田・絵堂の戦いで藩政府軍が敗北し、奥御殿はパニック。この中途半端なタイミングで、雅の存在を聞きつけた都美さんが銀姫を詰問。美和さまもあっさり身元バレするし、秘密の守れない職場です。司馬遼がしばしば「長州は機密が守れない」と書いていたのを思い出します。まあ、「防長一の美人」と言われた雅が目立たないはずがなく、「気付くの遅っ!」とも言えますが。

美和さま「おそれながら。云々」(主張自体はどうでもいい)

またそのセリフか。

都美さん「やはりお前か」

だから、こんな女さっさと手打ちにしておけばいいのに。

すると雅が自分を人質にしろと言い出します。「さすれば高杉晋作は決して奥には手を出せませぬ」、と。

くだらねぇ。無意味なことで時間を浪費するなよ……。

そもそも、高杉が奥御殿に手を出す理由がありません。このドラマは高杉の最も重要な要素を無視してますが、彼は何よりも「毛利家譜代家臣」をアイデンティティーとし、常に意識していたのです。本当は、これを雅や銀姫が知らないはずがない(史実の雅は高杉のことをあまり理解してなかったかもしれないけど)。

もともと高杉は毛利元徳に仕えおり、君臣の絆もバッチリ。高杉が異人を斬ろうとした際は、それを聞きつけた元徳が駆け付けて「お前がいなくなたら困る」と泣きながら説得したという、実に時代劇的感動エピまであります。「高杉に対する元徳の信頼を知っていた銀姫が奥御殿のパニックを鎮める」という方が自然です。

そもそも論で言えば、高杉に危機を知らせるエピも、美和さまがムダに右往左往しなくても、銀姫から元徳に話を付けてもらうだけで十分だったのですが。

つまり、美和さまなんかイラナイんですよ。

雅の処遇も決着し、全部美和さまの思い通り。が、この女は満足するということを知りません。

銀姫「珍しいのう。お前がそのような浮かぬ顔をするなど」

というか、この女、いつも不満そうに口をへの字にしてるじゃないですか。いつも憂鬱そうで鬱陶しいことこの上ない。画面に映らなければいいのに。

奥御殿が頭の悪そうなやりとりをしている一方、表では中道派が藩政府と高杉の和平工作を開始。が、梅太郎が襲撃されて頓挫し、高杉が萩への侵攻を再開。萩城に砲撃音が鳴り響きます。発射音だけで着弾音も被害もないので威嚇用の空砲であることは明白ですが、奥御殿は大騒ぎです。

鶴ヶ城では、女性たちが身を挺して砲弾の爆発を防いでいたというのに、萩の女どもは見苦しいこと。このドラマは長州を貶めるためにやっているとしか思えないので、奥御殿のバカっぷりも平常運転なんでしょうが。

実際の長州の女性たちは、このドラマの女どもとは異なり立派だったと思いますが。都美さんとか、完全にに史実よりも貶められてるし。

奥御殿の頭の悪そうな女ども(史実の女性のことではないことに注意)が、どこにも被害が出ていないのに右往左往している一方、美和さまは仕事もせずに奥御殿を闊歩。いいご身分です。

「兄のお目通りをお許しいただく」ために、身の程知らずにも毛利敬親に直訴しようとします。とはいえ、既にツーショットでお目通り済みなので、重みもありがたみも半減しちゃってるわけですが。

都美「お前ごときが口を挟むことではない」

全くです。

美和さま「高杉さんが戦っているのは民のためでございます」

高杉の行動原理は民ではないと思いますがね。この時期、高杉はそろそろ「大割拠」を標榜して幕府との対立、倒幕を志し、そのために俗論派を排除するために戦っている。対幕戦に際しては長州を焼け野原にし、いざとなれば藩主親子を担いで朝鮮に亡命する覚悟をしていた。つまり、毛利家譜代として藩主親子に対する忠誠は篤いが、「民のことなんかしったこっちゃない」。

高杉晋作はこの時代の重要人物で、確かに高く評価されるべきですが見当違いの美化をするべきではない。美和さまごときに(というか脚本家どもに)言っても理解できないでしょうが。

2015年 大河ドラマ「花燃ゆ」キャスト(配役)
大河ドラマ「花燃ゆ」 主要人物年齢年表(松下村塾+α)
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