大河ドラマ「花燃ゆ」 第28回 泣かない女 感想

カテゴリ:花燃ゆ
日時:2015/07/12 23:08

朝敵認定&第一次長州征伐と下関戦争という、長州にとって最も“熱い”時代がスタート。が、ドラマは「Fumizonによる服の配送」という、実にくだらない捏造エピで時間を浪費します。例えば『世に棲む日日』を原作にして、高杉視点で展開するだけで自動的に面白くなる時代をここまでつまらなくできるのは、一種の才能といえましょう。文という最悪な素材を主役に据えてしまったがために、面白くすることが不可能になっているのです。

これまでは単につまらないだけのドラマでしたが、前回の逆恨み&意味不明な就活演説で一気に「くだらない」「気持ち悪い」ドラマに進化しました。これに輪を掛けているのが、絶妙なタイミングで登場してくれる小田ムダさま。『江』は、その最悪な脚本と最低な演出でワースト大河の名をほしいままにしてきましたが、キャスティングはムカイリを除けば割と良質。一方、『花燃ゆ』は『江』すら下回る脚本と演出のみならず、キャスティングでもいいところなし。どぶろっくだけでもアウトなのに、次はピンでは売り物にならず、ひと山幾らの量り売りでしか商品価値のない小娘たちをモブに投入し、話題性で視聴率を稼ごうという見下げはてた醜態を演じるありあさま。褒めるところがどこにもないとは、逆に斬新ですらあります。

前置きが長くなりましたが、感想スタートです。長州大ピンチから始まり始まり。朝廷から朝敵認定されただけでなく、英仏米蘭の4カ国連合艦隊が下関を砲撃&砲台占領。下関は死屍累々です。ぜーんぶ、久坂の愚行が招いたことです。まさに、この人たちの遺族にしてみれば「嫌や。私は受け入れん。許さん。絶対許さん! あの人を殺したもんを」ってところでしょう。皆さん、久坂のせいですよ。 長州を不幸のどん底に陥れた元凶の妻はというと、男たちの苦労なんぞ知ったことかという顔でのんきに奥御殿に上がります。「素性を隠して」というナレに混乱しましたが、つまり園山など一部をのぞく御半下クラスにはナ・イ・ショってことだったようです。一瞬、園山にまで身分詐称したのかと思いましたが、前回、台場作りで世話になったと挨拶してましたね。

それにしても、長州が朝敵になった責を問うてお取りつぶしになった久坂家の妻を奥勤めに採用するなど、不自然な話しです。園山は何を考えているのやら。一応警戒はしているようですが、それなら最初から採用せねばいいだけのこと。監視を付けたり重要なミッションを与えたりと、無用なコストを掛けています。

ちなみに、文が興丸(毛利元昭)の傅役になるのは史実ですが、文が奥に上がるのは慶応元年(1865年)。このドラマの時点(元治元年)ではまだ奥に上がっていません。

俺たちの文さまは、御半下以下の見習い待遇に不満タラタラ。長州を朝敵にした元凶の妻が何と厚かましい。そもそも奥になど上がれるような立場ですらないというのに。つくづく、自分の立場を弁えていません。その割に、水をこぼすとか、定番の失敗をやらかします。

するとなぜか、文さまにご下問なさる銀姫。このタイミングで、なぜ文さまをご指名なさいますか? 文さまの返答がいたくお気に召したようで、テンションアップです。何だか、頭が弱そうなお方です。田中麗奈は『平清盛』の由良ちゃんが実に良かったのに、脚本と演出が悪いとこうもダメダメになってしまうのですねぇ。

奥御殿で文さまがどうでもいいことをやっている間に、表では男たちがさまざまな立場で講和にプンスカ。

奇兵隊の脳筋どもが講和に怒るのはまあ、分かる。基本、バカだし。朝敵になり幕府軍も攻めてくるのに四カ国艦隊とバトルってる場合じゃないなんて戦略眼はなかったのでしょう。その前に、無能な久坂がリードした攘夷がそもそも無理ってことにいい加減気付けって感じですが、長州はこの後もしばらくJoyJoy攘夷をエンジョイするので仕方がありません。

次にプリプリしていたのは井上聞多。「お前ら、いままでどこ行ってたんだよ」とツッコみたくなるような唐突さにもかかわらず、普通に登場する伊藤と井上です。多くの人は忘れちゃってると思いますが、この2人は長州ファイブのメンバーとして英国留学していました。が、四カ国艦隊による報復攻撃を知って、伊藤と井上だけが急いで帰国したというわけです。「幕府の禁令を犯しての」留学時の描写も適当(ナレと後ろ姿のみ)なら、帰国時のドタバタ感もなしという、視聴者に何も伝わるものがないドラマです。

さらに、井上が怒っているのは、講和を説いたのに受け入れられず、ボコられたら講和だと言い出した藩の態度が気に入らなかったから。「講和を拒否ったんだから、最後までそれを貫け」というのが井上の主張です。御殿山放火時に唐突に登場したときは人が良さそうな描写しかありませんでしたが、井上はそもそも激しい癇癪持ちで、キレると藩主にすら怒鳴りちらします。文さまのくだらない演説ばかり描写し、他のキャラをおざなりにするから、ここでいきなり出てきてキレている井上には唐突感しかありません。途中経過を省略しなければ、ここでの彼の言動は一貫性があるのですが。

この非常時に、必要な途中経過を省略しまくって意味不明になってる表の描写を打ち切って、場面は再び奥御殿へ。俺たちの文さまは、春風ちゃんに交渉用の装束を届ける係に任命されます。Fumizon再び。

なぜ文にやらせるのか、全く分かりません。さらに、鞠を監視役として付けるあたり、ますます意味不明です。上士の当主である小忠太が手をついて頭を下げて頼むほど重要なミッションを、なぜ文さまに託すのか。普通に信用できる人に任せればいいのに。とにかく、「文さまを話しに絡ませたい」という制作側の意図しか伝わってこない、実にくだらないエピです。馬鹿馬鹿しいにものどがある。

「お次の鞠を共に付ける」という表現も笑えます。御半下以下の見習いの共にお次を付ける???? 逆だろ。お次の鞠に荷物持ちとして文さまを付けるのが普通。なぜこの期に及んで文さまをちょっとでもageようとするの?

こうして、文さまと鞠の女2人旅がスタート。鞠って、『軍師官兵衛』で初対面の官兵衛にいきなりグチって、その後もノベライズにすらない意味不明な登場シーンを作ってもらってチョイチョイ出てきたのに死の場面すらなくて、存在意義が全く分からなかった光秀の娘だった人ですね。今回もムダに出てくるんでしょうか。

京では、久々に「くんを探せ」コーナー。幾松ではなく辰路とツーショットという、これまた意味不明なシーン。辰路との会話とかどうでもよくて、忍者屋敷みたいな仕掛けがいっぱいのボロ小屋に笑いました。それだけ。

文さまは鞠を相手にどうでもいい自分語り(内容は忘れた)をしながら、下関にご到着です。そして、奇兵隊に包囲されます。彼らから、講和交渉が開始されたことを知らされます。ということは、文さまの下関ご到着は8月9日以降ということに。

え? 装束が届く前に開始しちゃったの? すると、春風ちゃんが派手な装束で登場して相手の度肝を抜いたというエピが台なしでは……。

春風ちゃんの講和交渉にプンスカの奇兵隊は、文さまの持ち物にも疑いの目を向けます。文さまピーンチ。この展開は、もうアレです。よく訓練された『花燃ゆ』視聴者ならもうお気付きでしょう。来るぞ来るぞ来るぞ……。

小田ムダ登場。

完全にネタキャラ化してます。

装束を春風ちゃんに届けるという小田ムダに、「高杉に会わせろ」の一点張りの文さま。いや、別に手渡しじゃなくていいんだから。お前、さっさと奥に帰れよ。奥に上がったらもう会うこともないといいつつ、あっさり再会しちゃってるし。文さまが春風ちゃんに会いたがる意味が分からない。

で、春風ちゃんと文さまのツーショット。特に意味のあるシーンにはなっていなくて、とにかく文さまを絡めたいという意志だけが伝わってきました。「春風ちゃんに衣装を配送する」という、たったそれだけの、エピにする必要すらないつまらない話がやっと終わりました。あまりのくだらなさに思わず失笑してしまいました。

そして講和締結日の8月14日、直垂で交渉に登場した春風ちゃん。が、このエピは特に広がることもなく終了。Fumizonのファッション配送などというくだらない架空話で時間を浪費するくらいなら、春風ちゃんが交渉に際して『古事記』を暗唱して相手を煙に巻いたという、史実ではない可能性のある俗説をやった方が面白かったのに。このドラマは、必ず「このエピの方が面白い」の逆をやるところがスゴイ。

山口に戻った文さまは、「服を届ける」というどうでもいいミッション成功で園山からおほめいただきます。この功績により、正式採用。本来なら名を頂戴するところなのに、「美和」と名乗りたいと言い出して叱られます。長州を朝敵にした久坂の妻という立場がまだお分かりにならないようで、文さまの厚かましさには驚かされます。

こうして銀姫のお次に大出世を遂げた美和さま。何年もお仕えしているだろう御半下を差し置いて、なぜか配達ミッションに任命され、成功したら見習いからお次に特進。不自然きわまりない展開であ然とします。こんなでたらめな人事制度では他の御半下はやる気をなくすことでしょう。

しかも、久坂の妻だったことまでバレてしまいました。これで、銀姫を中心にいじめ→文さまのすばらしさに感化されていくという、くっだらない話になるわけですか。奥御殿のくだらない妄想エピが終わったら、群馬編ですか。面白くなる要素が皆無で逆にワクワクしてきました。

このドラマ、どこまで落ちていくのでしょう。「これ以下などあり得ない」と思われていた『江』を軽々と下回る最低最悪の大河を作った土屋勝裕の名が永久に刻まれることは間違いなさそうです。

「嫌や。私は受け入れん。許さん。絶対許さん! このクソドラマを作ったもんを」

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