大河ドラマ「花燃ゆ」 第26回 夫の約束 感想

カテゴリ:花燃ゆ
日時:2015/06/28 22:58

いよいよ、幕末大イベントの1つ、「禁門の変」の始まり始まり。さあ、盛り上がって参りましたと言いたいところですが、そうはならないのが『花燃ゆ』。何と、ほとんどの時間を俺たちの文さまの家探し&お引っ越しに費やすのです。誰が見たいんだ? こんな話。

文さまの登場シーンを全てカットすればまあまあ面白かったのですが、そうすると10分番組くらいですかね。禁門の変を2回に分けてやるというからどれだけガッツリやるのかと思ったら、もともとスカスカな内容をさらに2倍に希釈しただけ。水の味しかしない水割りを飲まされている気分です。

それにしてもひどい禁門の変です。真木和泉すら出てきません。会津視点の『八重の桜』の方が長州側につてもしっかり描いているので、まともな「禁門の変」をご希望の場合は『八重の桜』第12回を見ましょう。本当に今年はつまらない。

元治元年(1864年)6月、ポンコツ玄瑞がまたも判断をミスって嘆願に出発。

場面は唐突に野山獄。そこへ、周布がやってきます。有名な泥酔周布の野山獄乱入事件です。春風ちゃんが『投獄文記』にも書いているので、史実と言っていいでしょう。 抜刀して門番を脅して乱入した周布さん、春風ちゃんの名を3回呼んだだけだったとも、「3年読書しろ」と話したともいわれていて乱入事件の詳細ははっきりしません。ドラマでは、「3年読書しろ」説を取りつつ、稔麿の死を春風ちゃんに伝えます。

ちなみに、『投獄文記』によると周布さんの乱入は元治元年5月5日。稔麿が死んだ池田屋事件は元治元年6月5日。史実の乱入事件はもっと前に起こったことになります。ドラマでは時系列をちょいと変更して京の政局と切り離された春風ちゃんをつなぐエピにしたわけですが……周布と春風ちゃん、稔麿の関わりが希薄すぎて、何も伝わってきません。もっと彼らの信頼関係を描いておけば、周布の屈託も深まったでしょうに。

俺たちの文さまは、稔麿の死を伝えるために吉田家へ。

文「新撰組いう人たちが長州や尊攘派の志士を襲撃したそうです」

新撰組が悪いみないな言い方です。私もアイツらのことは嫌いなので一緒に悪口を言いたいところではありますが、ドラマでは中川宮暗殺計画を練っていたテロリストどもを駆除したわけで、新撰組のやり過ぎ感は否めないものの長州と尊攘派の志士が反体制勢力として取り締まられるのは必然。まぁ自業自得なので同情はできません。

イク「何であの子が殺されんといけんかったん」

まぁ、皇族を殺そうとしてたテロリストでしたしね。

ご覧の有様なので、イクとふさの嘆きからも何も伝わってきません。イスラム国の兵士の母親が出てきて「なぜあの子が殺されなければいけないのか」と訴えてるのと同じなんですが。

萩での茶番がやっと終わり、場面は京へ。ポンコツは鷹司を動かしたりと、ようやく久坂らしいことを始めます。そのポンコツを訪問する1人の女性。はてどなたかと思いきや、ヅラじゃない桂の彼女、幾松。辰路のことをポンコツに伝えるメッセンジャー役での登場です。この人がヅラじゃない桂と全く無関係に出てくるとは予想外でした。

ポンコツと辰路のシーンは長い上に退屈です。そもそも、なぜポンコツの子と特定できたのかが謎です。アクネ菌ともよろしくやってたじゃん。ポンコツに惚れ込んでオンリーワンになってたという設定ならともかく、アクネ菌のハニートラップ設定を作ったために、子どもの父親に疑惑が残ってしまいました。

毛利元徳の上京を知らされ、ポンコツの大活躍を確信した俺たちの文さまは、なぜか椋梨家にダッシュして視聴者を置いてけぼりにします。そして、美鶴さんに新居の仲介を依頼する文さま。ああ、それで椋梨家に……って、やっぱり文さまの行動は異常なんですけど。

美鶴「恥を知りなさい。こんな状況でよくもそんなずうずうしい頼みを」

美鶴さんの叱責により、京の情勢が明らかになります。京のポンコツに届いた小田ムダメール。その内容は、英仏米蘭の四国艦隊が長州へ侵攻中であることを知らせるものだった!

これに焦ったポンコツは、入京の許可を得ずに元徳の上洛を促します。京で調子こいて政変を招き、下関で調子こいて外国船を無差別砲撃し、再び京で調子こいて朝敵にされそうな勢い。ポンコツが頑張れば頑張るほど長州はピンチになっていくわけで、美鶴さんのお説は全てごもっとも。私の言いたいことを全て美鶴さんが代弁してくれました。

文「あの人の心はいつだってまっすぐに国を思うとります!」

国を思えば(志があれば)何でも許されると思ってないか? 少しは自省してほしいな。

生意気にも口答えした文さまに、思わず手を上げかける美鶴さん。そんなつまらないものを叩いたらお手が汚れますよ。

それにしても、ひどいシーンでした。そもそも、四国艦隊の件や元徳の上洛の件がなくて美鶴さんが怒ってないとしても、久坂と椋梨は政敵。そもそも何かをお願いできるような関係じゃありません。現代の政党のように、国会では対立してても裏では会食して個人的には仲良し、といったヌルいものではない。当時の長州では、一方が政権を握れば、対立していた政敵は殺されたり投獄されたり。それを交互に繰り返していて、今は周布のグループが与党的存在。この後椋梨が政務役に返り咲くと、周布閥は弾圧されることになります。そういう相手に「お願い」って。文さまのボケっぷりにはあきれ果てます。

また、四国艦隊の侵攻を知らせる小田ムダメールも扱いが気持ち悪い。小田ムダが知らせてきたのは史実ですが、第一報ではありません。それ以前に慶喜が長州に警戒しろと知らせています。他のルートからも情報は入っていたはずです。ただ、これまでの異常ともいえる小田ムダアゲの結果、今回の小田ムダメールも「また小田ムダを話に絡めようとしている」と思われるだけでしょう。

松陰のやる気スイッチを押して刑死させ遺品を持ち帰ったり(遺体はどうしたんだよ、おい)、周布の尻馬に乗って若手に偉そうに説教したり、ここぞというところで若手の暴発を止めたりと、鬼神のごときご活躍っぷりで実像がますます分からなくなってしまった小田ムダさん。薩長同盟時にも、小田ムダが坂本龍馬を紹介するメールを書いている(史実)のですが、小田ムダが出てくるだけでウソ臭くなってしまいました。余計なモノを盛った揚げ句、彼の真の活躍は見えなくなり、嫌悪感すら抱かせる状態に。実に愚かしい話です。

埋もれていた偉人を新たに発掘したいという野心はあっぱれですが、埋もれているからといって偉人であるとは限りません。埋もれているのには相応の理由があって、埋もれている人の99.9%は、

埋もれる程度の凡人

なんですよ。文さまも小田ムダも、うっかり間違えて掘り出しちゃったのは仕方がないとして、早く埋め戻すべきだと思うのですが。

話がそれました。あ……ありのまま今起こったことを話すぜ。俺たちの文さまが美鶴さんに叱責されて帰宅したら、杉家のみんなは椋梨家の出来事を知っていた。な……何を言っているのか分からねーと思うが、俺も分からなかった……。

寿さん、美鶴さんとLINEでもやってるの?

すると、文さまは途中で新居を決めてきたというのです。どれだけ時間がかかったのかは分かりませんが、とにかく文さまは直帰しなかったのでタイムラグは発生していたようです。超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあなかったわけです。

それにしても、一体誰が誰に話して、あるいは聞いて、杉家に伝わったのかという疑問は残りますが。つまり不自然な脚本ってことです。

さらに、文さまが今さら嫁入り前のご挨拶のような文言を口走り始めます。百合之助は、さすがに「文の父で愉快であった」とは言いませんでした。

それにしても、久坂家の引っ越し話などというどうでもいいことで引っ張ること。何が何でも私が見たいドラマにはしないということですね。坂上忍の家探し&物件訪問の方がまだ面白い。

7月14日、元徳が京へ出発。

これに薩摩が(西郷が)態度を硬化。薩摩が兵を京に入れます。さらに、慶喜から長州へ最後通告。

7月17日、石清水八幡宮で長州最後の軍議。御所への進軍を主張する来島と、穏健派のポンコツが対立するも、来島の暴発を止められません。

7月18日夜半、長州行軍開始。御所に最初に到着した来島、蛤御門で会津と開戦。

やっと盛り上がってまいりました。ここで、再び文さまが登場して水を差します。

出てくるな。

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