大河ドラマ「軍師官兵衛」 第33回 傷だらけの魂 感想

カテゴリ:軍師官兵衛
日時:2014/08/17 22:52

今回は、道薫というか荒木村重の退場回。このドラマにおける官兵衛と村重の因縁にケリを付け、官兵衛の改宗につなげるためには必要な回ではあるのですが、スゴイ中だるみ感。眠気をこらえるのがツライ40分となりました。

で、今回は若干巻き戻って天正13年7月、秀吉の関白就任について繰り返し、9月の豊臣賜姓に触れます。「姓を豊臣と改めた」というナレは、信長にならって平姓→近衛前久の猶子となって藤原姓→今回の豊臣姓という流れの中ではまぁ間違っていないのですが、「改めた」というより「賜った」ところが重要なのでは。

ちなみに、「豊臣」姓は最後に作られた姓、言い換えると最も新しい姓ですね。また、前述したとおりここで「改めた」のは「藤原から豊臣」であり、「羽柴から豊臣」ではありません。

で、ノリノリの秀吉は家臣を集めて天下惣無事令を発表。これが九州平定や小田原征伐の大義名分になります。 惣無事ミーティングの後、ノベライズには「純喫茶・利休」のシーンがあります。利休の茶室に招かれた官兵衛。茶を点てる道薫。道薫が立てた茶を捨てる利休。島津について語り合う利休と官兵衛。「四国平定に続き、ご苦労なことでございますな。恩賞にもあずからぬというのに……」と揶揄する道薫。ドラマではまるまるカットでした。

続いて秀吉と三成家康対策ミーティング。さらにおね登場。他の側室の様子を伝えて秀吉を諫めるあたり、実に正室らしい振る舞い。

おね「わが子に跡を継がせたいと仰せだったはず。そのための側室です。ひとりのおなごばかりに執心していてはなりませぬ」

これまた正室として非のない振る舞い。このクソ脚本にしては珍しく、まともなセリフを吐かせます。

にしてもねぇ、「関白にまでのぼりつめたこのわしには、もはや手に入らぬものなどない。だが、茶々だけはわしに見向きもせぬ。そこがたまらんのじゃ」

あんな微妙なルックス(このドラマの場合)で性格が悪そうな女のどこがいいんだか、さっぱり分かりませぬ。

で、この性悪女が廊下で道薫とエンカウント。彼に興味を持った茶々は、有岡城の話を聞きたいと言い出します。さすが、頭が悪い(秀吉死後の振る舞い全てから確定)だけでなく底意地も悪い女だけのことはあります。

ここで、全くもってなぜなのか分かりませんが、官兵衛が大坂の南蛮寺をアポなし訪問。ノベライズでは、惣無事ミーティング&純喫茶・利休の帰りに立ち寄ったという流れなのですが、ドラマではシーンの順番が入れ替わって唐突感もひとしおです。ま、編集がダメダメなのは今に始まったことではありませんが。

ここでブレブレ右近と再会。この右近のだしリスペクトもいい加減気持ち悪い。

黒田家は新吉を新規雇用。4万石のお殿様相手に、わざわざ下男に挨拶させる善助が異常に不自然。というか4万石の大名の家老が屋敷の下男を把握しているあたりから既に破綻しているわけですが。社員ン千人規模の会社の重役が派遣社員の名前を知っていて、社長に挨拶させるようなものです。

で、新吉が住まう炭小屋には、「妻っぽい女」と「その子どもっぽい又兵衛」。下男とはいえ、子どものお絵かきに貴重な紙を与えているので、実はリッチマン。

そんな黒田屋敷に、道薫が訪問。すると目通りを願う新吉一家。いわくありげな人物が登場すると、その直後には正体が割れる。私のように頭が悪い視聴者に優しい、実に幼稚な脚本です。いやー、ペラッペラに薄っぺらいから分かりやすくて助かるなー。(棒読み)

にしても、この新吉のプランがとんでもなく頭が悪くて笑えます。村重が秀吉の御伽衆になったと知り、黒田屋敷で働いていればいつか村重に会えるのではないか、と。

よりによって黒田家かよ!

平凡というか水準以下の知能しかない私の浅慮では、1年も官兵衛を監禁プレイした村重がまさか確執もなく交流を持つなどと想像すらできません。私のような愚か者だったら、黒田家だけは選ばなかったでしょう。

が、この新吉の読み通り、互いの遺恨を捨て、相談するまでに関係は改善され、道薫が黒田屋敷を訪問。新吉はあっという間に村重との再会を果たすのでありました。さすが、下男の傍ら検察事務官をおつとめになるだけのことはあります。

というか、何だこのご都合主義の展開は。こんな脚本書いて、よく恥ずかしくないな。よほどの厚顔とお見受けします。

この時期、官兵衛はよほど暇なのか、南蛮寺を何度も訪問。で、行くたびに右近(コイツも暇そうだな)と延々と延々と延々とだしを回想し、視聴者を安らかな眠りに誘います。NHKはドラマを見せたいのか? 寝かしつけたいのか?

と、ダラダラと締まりのないエピを繰り返しつつ、茶々プロデュースの道薫羞恥トークプレイ開始。右近の裏切りに話がおよんで雰囲気がギスギスし始め、お開きにしようとする利休&秀吉。

が、羞恥プレイを強要する女王様茶々。言葉攻めでプレイ続行です。

茶々「妻や家臣を見捨てて、なにゆえ、ひとり生きながらえているのか、それを聞きとうございます」

つくづく性格の悪い女です。せめてもっと可愛ければ救われるのですがねぇ。

このクソ女に反撃する道薫。

道薫「それがしもあなた様にうかがいとうございます。父母を殺されながら、なにゆえ仇のもとで生きながらえておられるのです?」

よく言った道薫! このセリフだけは評価します。

で、秀吉激怒、微妙に「さすがは官兵衛」的な感じで治め、誰得なトークショウ終了。

暇人官兵衛&右近。またまた南蛮寺で逢い引き。暇そうですね。

官兵衛「道薫殿には生きてもらいたかった」

はあ、そうですか。

暇人官兵衛が屋敷に戻ると、又兵衛がお絵かき中。絵師・岩佐又兵衛から逆算したお絵かき少年っぷりが笑えます。で、又兵衛のお絵かき帳を見て手を止める官兵衛。ちらっと人物画が見えてるので、(超安っぽい陳腐な)オチは想像がついちゃいますが。

あらためて道薫に又兵衛を引き合わせる官兵衛。又兵衛が道薫に差し出した絵は、この時代っぽくない、実に現代的写実的な道薫の人物画。で、やっと道薫の心が溶けて又兵衛を抱きしめ、だしへの悔恨の涙をながす……。想像通りでむしろギャグシーン化してます。

道薫、所払いにより堺に出発。翌年死亡のため、ここで退場。序盤はとても面白く描かれていたんですが、ウンコ君以降はつくづくどうでもよかったなぁ。

と、この流れでなぜか改宗を決意した官兵衛の洗礼シーン。官兵衛のキリシタン化にビックリの光たち。隆景&恵瓊にプレハブ式ゴールデンティールームを見せびらかす秀吉と、しょうもないシーンが続きます。まぁ官兵衛の洗礼は彼のドラマとして必要かもしれませんが、別に面白いわけじゃないですし。

ドラマではカットされてましたが、ノベライズには官兵衛、小六、隆景、恵瓊が九州平定ミーティングをするシーンがあります。「軍師官兵衛」なのに、こういうシーンをカットしますか……。まぁ今年の演出・編集センスが最悪なのは以前から明確なので、今さら驚きませんが。

天正14年(1586年)正月、暇人官兵衛は大坂城に呼び出され、九州攻めの決定が伝えられます。恩賞をちらつかせる、絶望的に髭が似合わない三成。が、領地はイラナイという官兵衛。

官兵衛「殿下のもと、天下がしずまることのみを望んでおります」

まだこんな薄っぺらいセリフを吐きますか。これで「意識が高い」とか勘違いしちゃってます? 官兵衛の行動原理は関ヶ原のときの動きにも直結するので、ちゃんと整合性が取れるのか心配です。

三成と家康の抗争が長期化すると読んで天下取りを目指したという「俗説」を取らない(単に東軍に味方した行動に過ぎない)というのであれば、「天下がしずまることのみを望んでいる」のままでもいいんですが、「ドラマ」としてはスケールが小さくてつまらなくなっちゃいますね。

秀吉「無欲な男ほど怖いものはないのう」

ねぇ。歴史上、頭のいい家臣の中には適当に恩賞を望んで「単に強欲なヤツ」だと思わせて保身を図り天寿を全うした例がありますが、これを念頭に置くとこのドラマの官兵衛はかなり頭が悪い。「自分の保身を意に介さない」というと一見美徳のようにも見えますが、家族や家臣も巻き込まれるので保身も責任のうち。保身を軽視して黒田家が取りつぶされたら、家臣を見捨てて逃げた村重を非難できませんよ>官兵衛。

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