NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」 第5回 留学生

カテゴリ:坂の上の雲
日時:2009/12/28 00:35

今回は、派手なエピソードがなかったのに面白かった。NHKだって、ちゃんとやればできる子なんだよなぁ。血迷うと突然変なモノを作ってしまうが。

ただし、100点満点というわけでもない。

松山で療養する子規を秋山真之が訪ねるくだり。真之と子規の会話はよい。子規が日清戦争にノリノリで、第4回のレオ曹長~「夏目漱石に見える森鴎外」までのつまらないパートが完全になかったことにされていたのには笑ったが。一方、真之と律のツーショットシーンが退屈でたまらない。「恋愛シーンだから気に入らない」ということではなく、単につまらない。しかも、

・泣く律
・船で去る真之を律が見送る浜辺シーン

って、毎回同じパターン。もう飽きた。同じような映像を何度も見せるくらいなら、ほかにやるエピソードが山ほどあるだろうに。 ダンカンに見えてしまう陸奥宗光によりそうのは、美女として名高い亮子さんか。雰囲気は出てたかな。

今回井上馨が新規参入した日本トップのシーンだが、毎回一本調子なのが気になる。加藤剛は安定しているが、「それだけ」の感もある。第3回では、伊藤博文の苦悩がすごくよく出ていたのだが。ここで大杉漣が迫真の演技でもしていれば名シーンになり得たのだが、いかんせん、彼では軽すぎた。

状況説明も、アレはどうだろう?

日清戦争後の日本にとって最大の痛恨事たる三国干渉をあっさりと流し、閔妃事件(乙未事変)は日本の単独犯かのように説明。大院君はスルー? 乙未事変を不十分な説明で挿入したら、単なる日本の犯罪みたいな誤解を与えるじゃないか。それより三国干渉だろ。まぁ、これについては後で真之がロシア人観戦武官に一矢報いているからいいか。

真之は精神面の打撃からようやく立ち直り、広瀬と再会。「立派に育ててくれた祖母にその体を写した写真を送る」と、褌になる広瀬。史実でもあるし原作にも取り上げられているのでよいのだが……広瀬と真之の褌ツーショットはおかしいだろ!(笑)

真之と広瀬が秋山好古家を訪ねたとき、好古が乗馬学校長になっているので、第2子が生まれたころか。多美と一緒に好古を出迎えたのは、長女の與志と健子だね。

今回泣けたのは、やはり子規がらみのシーンだった。

明治30年6月、海外派遣士官に選ばれた真之が子規を見舞ったとき、「民族が滅びるということは文化が滅びること」として子規が真之に言った「あしが死ぬまでにやり遂げようとすることを、無駄にならんようにしておくれ」というセリフ。子規が生きた証を残すためにも戦争に勝っておくれと言っているようで、切ない。

ロシア、サンクトペテルブルクパートは、アリアズナのかわいさとボリスの噛ませ犬っぷりが大変すばらしい。ボリスの、非常に分かりやすいイタさが何ともいえない。アリアズナは、やはり2、30年後はロシアの立派な巨大おばちゃんになってしまうのかなぁ。時間って残酷だよね。特にロシア女性の場合。


米西戦争パートは、ロシア観戦武官のモストボイがいい味を出していた。ただ、ナレーションで疑問だったのが、閉塞作戦について「米西戦争の教訓が生きた」と言っていたこと。生きたか? 真之が立案した旅順港閉塞作戦は壮烈な大失敗のあげくに広瀬まで戦死しているのだが(広瀬の戦死は真之の責任ではないが)。結局、陸上の要塞砲が健在なら閉塞船は近づけないという米西戦争の失敗を旅順で繰り返しただけだと思うが。

ここで、第1回冒頭で流れた沈没船の正体がクリストバル・コロン(クリストファー・コロンブス)号だったことが明らかになる。ああ、すっきりした。

西田敏行の高橋是清は相変わらずよいが、登場の仕方が唐突の感がないでもない。是清がばくちしていたのには、ばくちと縁が深い是清らしくて笑ったが。彼は、真之に白人のやり方を教える係ってとこかな。是清をうまく使っているね。真之&小村寿太郎のパートにうまくつないだとも言えるけど、ご都合主義的な感じもするなぁ。

ところで、子規庵のシーン。部屋の中で子規の弟子たちが適当に映っていたのだが、スタッフロールでやっと正体が判明。高浜虚子、河東碧梧桐は当然いるとして、キャストとして柳原極堂、寒川鼠骨、内藤鳴雪、伊藤左千夫、佐藤紅緑らの名前が流れていた。内藤鳴雪は、分かりやすいオッサンが部屋の中に混じっていたので「もしかして?」とは思っていたが……。ほかの連中は字幕入れてくれなきゃ分からねーよ(笑)。

第2部は1年後か……。長いな。
我らが日本陸軍が誇る∀ガンダム「長岡外史」のビジュアルがどうなるのかが気になって仕方がない。

キャスト

主人公と家族
秋山好古(1859-1930):阿部寛
秋山真之(1868-1918):本木雅弘
正岡子規(1867-1902):香川照之

秋山貞(1827-1905):竹下景子
秋山多美:松たか子

正岡八重(1845-1927):原田美枝子
正岡律(1870-1941):菅野美穂

子規関係者
夏目漱石(1867-1916):小澤征悦
高浜虚子(1874-1959):森脇史登
河東碧梧桐(1873-1937):大藏教義
柳原極堂(1867-1957):伊嵜充則
寒川鼠骨(1875-1954):菟田高城
内藤鳴雪(1847-1926):加世幸市
伊藤左千夫(1864-1913):岸本光正
佐藤紅緑(1874-1949):薬師寺順

海軍関係者
山本権兵衛(1852-1933):石坂浩二

広瀬武夫(1868-1904):藤本隆宏
八代六郎(1860-1930):片岡鶴太郎
財部彪(1867-1949):飯田基祐

政府関係者
伊藤博文(1841-1909):加藤剛
陸奥宗光(1844-1897):大杉漣
陸奥亮子(1856-1900):米倉紀之子

小村寿太郎(1855-1911):竹中直人
井上馨(1835-1915):大和田伸也
高橋是清(1854-1936):西田敏行

ロシア関係者
ニコライ2世(1868-1918):ヒョードロフ・ティモフィー
アレクサンドラ(1872-1918):ナターリア・ベンチーロワ

アリアズナ:マリーナ・アンドレイエヴナ

外国人
マハン(1840-1914):ジュリアン・グローバー